カワラスゲ Carex incisa  Boott. カヤツリグサ科 スゲ属 アゼスゲ節
湿生植物
Fig.1 (兵庫県三田市・溜池脇の農道 2007.5/11)
Fig.2 (西宮市・池畔の林道 2007.5/27)

半日陰の湿地や湿った林縁、とくに農道や林道などの踏みつけに遭いやすく、なおかつ湿ったような場所に多い。
林道などでは草体は20〜30cmと小型だが葉幅がやや広く、広範囲にわたって叢生するため比較的目立つ。多年草。
カワラスゲという名称だが、河川敷や渓流沿いで見かけるケースは少ない。
短い根茎があり、茎は高さ20〜50cm、やや細くて果時には倒れる。
葉は柔らかく幅3〜6mm、基部の鞘に葉身はなく、柔らかく、淡い肉桂色で、背面に稜はなく、糸網は無い。
小穂は4〜6個、やや同じ高さになり、点頭または下垂い、線状円柱形で長さ2〜7cm、淡緑色、ややまばらに花をつけ、頂小穂は雄性、
または頂部に短く雌花部がある雌雄性となることがある。
雌鱗片は倒卵形で、凹頭、淡色で中肋は緑色で、短い芒がある。果胞は卵形で、膜質、長さ3mmで短い嘴がある。
近似種 : アズマナルコテキリスゲアゼナルコオタルスゲ

■分布:北海道、本州、南千島
■生育環境:半日陰の湿った林縁、農道、林道など。
■果実期:5〜6月
■西宮市内での分布:中から北部の低山周辺で見られる。

Fig.3 カワラスゲの花序。頂小穂はふつう雄性。側小穂は4〜6個付け雌小穂。(西宮市・池畔の林道 2007.5/27)

Fig.4 雌小穂は幅が2〜3mmと、他種にくらべてスマートで区別は容易。 (兵庫県三田市・溜池脇の農道 2007.5/11)
  鱗片は周辺部が白色で、中肋が緑色。凹頭で短い芒を持ち、果胞より短い。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.5 池畔につくられた未舗装の管理道の脇の、湧水により生じた小湿地に生育するカワラスゲ。(西宮市 2007.5/27)
コナラ−アカマツ2次林に覆われているため半日陰の環境となり、そこにタチスゲ、ヌカスゲ、ノイバラ、コブナグサ、
ムカゴニンジン、ショウジョウバカマなどと混生している。

他地域での生育環境と生態
Fig.6 農道上に生育するカワラスゲ。(兵庫県香美町 2011.5/26)
クルマの通らない畦状の湿った農道に点在していた。
ここでは踏みつけに強いオオバコ、ムラサキサギゴケ、チドメグサのほか、スギナ、コウゾリナ、カキドオシ、ネコノメソウ、
サンインネコノメソウ、スイバ、イヌガラシ、オオバタネツケバナ、ゲンノショウコ、ミツバフウロ、ウマノアシガタ、キツネノボタン、
シロツメクサ、ニョイスミレ、ヒメジョオン、オオバギボウシなどとともに生育していた。

Fig.7 駐車場の隅で生育するカワラスゲ。(兵庫県篠山市 2013.5/22)
谷津際奥の林道の入り口にある大きな駐車場の隅にカワラスゲが生育していた。
駐車場周辺は草地状となっており、カワラスゲはマスクサ、ヤワラスゲ、ヒゴクサ、アオスゲ、ニシノホンモンジスゲなどのスゲ類、
ススキ、ヤマスズメノヒエ、ヘビイチゴ、ナワシロイチゴ、ノイバラ、アケビ、タチツボスミレ、スミレ、ヤハズエンドウ、
ムラサキサギゴケ、トウバナ、カキドオシ、ヨメナ、ヨモギ、ノアザミなどとともに生育している。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. カワラスゲ. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.164〜165. pl.146. 平凡社
小山鐡夫, 2004 スゲ属アゼスゲ節. 北村四郎・村田源・小山鐡夫『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.298〜303. pl.75. 保育社
牧野富太郎, 1961 カワラスゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 784. 北隆館
勝山輝男. 2001. スゲ属アゼスゲ節. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 453〜456. 神奈川県立生命の星・地球博物館
勝山輝男, 2005 アゼスゲ節. 『日本のスゲ』 92〜123 文一総合出版
谷城勝弘, 2007 スゲ属アゼスゲ節. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 46〜56 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. カワラスゲ. 『六甲山地の植物誌』 244. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. カワラスゲ. 『近畿地方植物誌』 156. 大阪自然史センター

最終更新日:9th.Mar.2014

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