コバノカモメヅル アズマカモメヅルを含む |
Cynanchum sublanceolatum (Miq.) Matsum. | ガガイモ科 カモメヅル属 |
湿生植物 |
Fig.1 (滋賀県・アシ原 2012.9/7) |
||
Fig.2 (滋賀県・水田の畦 2011.9/27) 湿った草地や原野環境的な湿地などに生える多年草。 茎は巻きついて長く伸び、条があってわずかに曲がった毛がある。 葉は7〜15mmの葉柄があり、長楕円状広披針形で先は鋭頭〜鋭尖頭、両面無毛、またはわずかに短毛があり、 長さ3〜11cm、幅1〜2.5cm、基部は円形またはときにわずかに心形になる。 花は葉腋から出る長さ1〜2cmの総花柄の先に、ほぼ散状に2〜数個つき、小花柄は細くて5〜12mm、花つきはまばら。 花はやや小型で径7〜9mm、暗紫色。花冠裂片は細長く、長さ4〜6mmで鈍頭、無毛でわずかに微粒状の突起がある。 副花冠は蕊柱の約1/2。袋果は単生し、披針形、長さ5〜7cm、幅6〜7mm。 種子は広卵形で長さ6mm、ごく狭い翼がある。 以下のような変種がある。 アズマカモメヅル(var. albiflorum)は花が白いもの。Fig.8参照。 シロバナカモメヅル(var. macranthum)は葉先が長く鋭くとがり、花は白色で径12〜20mm。近畿北部以東、北海道に分布。 ジョウシュウカモメヅル(var. auriculatum)は花が暗紫色を帯び、大きいもの。関東〜近畿地方に分布。 湿地に生育するタチカモメヅル(C. nipponicum var. glabrum)は花序に総花柄がなく、花は葉腋に群がってつく。 タチカモメヅルには多くの変・品種があり、詳しくはタチカモメヅルのページを参照されたい。 コカモメヅル(Tylophora floribunda)は草原性で、花序はよく分枝し、大きくまばらに散開し、花径は4〜5mmと小さく、袋果はふつう双生する。 近似種 : タチカモメヅル、 コカモメヅル、 フナバラソウ ■分布:本州(関東、中部、近畿地方) ■生育環境:原野環境的な湿地、湿った草地など。 ■花期:7〜9月 ■西宮市内での分布:市内では未記録。兵庫県下では但馬地方にのみ生育する。 |
||
↑Fig.3 茎は他物に巻きついて伸びる。(滋賀県・水田の畦 2011.9/27) 草刈りの行き届いた畦に生育しており、刈り込みに遭ったあと、一斉に萌芽し、互いに絡み合って伸びていた。 |
||
↑Fig.4 対生する葉。(滋賀県・水田の畦 2011.9/27) 葉は葉柄があり、長楕円状広披針形で先は鋭頭〜鋭尖頭、長さ3〜11cm、幅1〜2.5cm、両面無毛、またはわずかに短毛がある。 基部は円形またはときにわずかに心形になる。 |
||
↑Fig.5 葉面に微短毛のあるもの。(滋賀県・水田の畦 2011.9/27) |
||
↑Fig.6 花序。(滋賀県・水田の畦 2011.9/27) 花は葉腋から出る総花柄の先に、ほぼ散状に2〜数個つき、小花柄は細く、花つきはまばら。 花冠はコカモメヅルに似るが、コカモメヅルの花序は散状とはならず、分枝して散開する。 またタチカモメヅルの花序は総花柄はなく、葉腋に群がってつく。 |
||
↑Fig.7 花冠。(滋賀県・水田の畦 2011.9/27) 花冠はやや小型で径7〜9mm、5深裂し、暗紫色。花冠裂片は細長く、長さ4〜6mmで鈍頭、無毛でわずかに微粒状の突起がある。 副花冠は蕊柱の約1/2で、蕊柱を囲んで直立する。 |
||
↑Fig.8 変種のアズマカモメヅル(var. albiflorum)。(滋賀県・湿地 2014.9/8) 花の大きさがコバノカモメヅルと変わらない白花品。開花開始はコバノカモメヅルよりも1週間遅かった。 コバノカモメヅルに混じって4個体ほどが生育していた。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 水田の畦に群生するコバノカモメヅル。(滋賀県・水田の畦 2011.9/27) 刈り込みの行き届いた畦から一斉に伸びて開花していた。 地下水位の高い水田地帯で周辺には湧水起源の水路が多く、刈取り後の水田中にはミズワラビが一面に萌芽し、隣の休耕田では ミズタガラシ、キクモ、クログワイ、チョウジタデなどが群生する。 畦にはコバノカモメヅルとともにヒメクグ、ヨメナの仲間、アカバナ、ヒメヒラテンツキなどが生育してた。 |
||
Fig.10 刈取り後の水田に進入するコバノカモメヅル。(滋賀県・水田の畦 2011.9/27) |
||
Fig.11 アシ原の縁で生育するコバノカモメヅル。(滋賀県・アシ原 2012.9/7) 湖畔のアシ原と休耕田が入り混じる原野的な湿地に多数の個体が生育しており、アシやハンノキの低木に絡み付いていた。 同所的にゴキヅル、ミズタガラシ、ハイヌメリグサ、コケオトギリなどが生育していた。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 村田源, 1981. ガガイモ科カモメヅル属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.39〜43. pls.32〜36. 平凡社 北村四郎・村田源, 2004 ガガイモ科カモメヅル属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.205〜209. pls.63〜64. 保育社 牧野富太郎, 1961 コバノカモメズル. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 502. 北隆館 福留正明. 2001. ガガイモ科カモメヅル属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1138〜1142. 神奈川県立生命の星・地球博物館 村田源. 2004. コバノカモメヅル. 『近畿地方植物誌』 49. 大阪自然史センター 最終更新日:9th.Nov.2014 |