フナバラソウ Cynanchum atratum  Bunge
  里山・草地の植物 
 環境省絶滅危惧U類(VU)・兵庫県RDB Bランク種
ガガイモ科 カモメヅル属
Fig.1 (神戸市・草地斜面 2011.5/30)
丘陵〜山地、里山の草原や禿山の草地に生育する多年草。
全体に密に軟毛があり、茎は直立して高さ40〜80cm。
葉は楕円形〜卵形、長さ6〜14cm、幅3〜8cm、先は急にとがるかまたはやや円く、8〜12mmの葉柄があり、裏面にはいちじるしく脈が浮き出している。
花序はごく短い総花柄があってやや密に花をつけ、小花柄は5〜10mm、萼とともに密に毛がある。
花冠は濃褐紫色で内面無毛、外面は微短毛があり、径12〜14mm。副花冠は楕円形で蕊柱とほぼ同長。
袋果は広披針形で長さ7〜8cm、密に毛がある。

花が緑色のものはアオフナバラソウ(f. viridescens)とされる。
葉が細く、小花柄の長いものはスズサイコとの推定雑種ヤナギフナバラであるとされる。
近縁種 :  タチカモメヅル、 クサタチバナ、クサナギオゴケ、コバノカモメヅル、 コカモメヅルスズサイコ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、中国
■生育環境:丘陵〜山地、里山の草原や禿山の草地など。
■花期:5〜6月

Fig.2 茎。(神戸市・草地斜面 2011.5/30)
  茎は直立し、ほとんど分枝せず、葉は対生する。全体に毛が多く、画像の個体では茎に曲がった毛が多く見られた。

Fig.3 葉。(神戸市・草地斜面 2011.5/30)
  葉は楕円形〜卵形、長さ6〜14cm、幅3〜8cmと、この仲間ではやや大きく、軟毛が多く、先は急にとがるかまたはやや円い。
  葉脈は日にかざすと透けて見え、裏面に隆起する。

Fig.4 開花したフナバラソウ。(神戸市・草地斜面 2011.5/30)
  花は茎の上部の葉腋に束になってやや密につく。

Fig.5 小花柄や萼には毛が密に生える。(神戸市・草地斜面 2011.5/30)
  花冠の裏面には微短毛が生えているが、この程度の拡大レベルでははっきりと判らない。

Fig.6 花冠。(神戸市・草地斜面 2011.5/30)
  花冠は濃褐紫色で内面無毛、径12〜14mm。副花冠は楕円形で蕊柱とほぼ同長。

生育環境と生態
Fig.7 急峻な草地斜面に生育するフナバラソウ。(神戸市・草地斜面 2011.5/30)
古くから草刈り管理の行き届いた草地に点在している。
ここではススキと背丈の低いネザサを主体としてヒキオコシ、クララ、カワラナデシコ、ハタザオ、スズサイコ、カワラマツバなど草原環境を好む種が生育している。
このような草原環境は人為的な営為以前は、山火事や風化崩壊によって更新される乾燥したハゲ山と考えられており、人為的営為によって生育を広げたものとされる。
茅場の管理放棄、棚田の耕作放棄などで人為的に出現した草原環境も現在では減少し、フナバラソウをはじめとした草原性植物は減少傾向にある。


最終更新日:13th.Jul.2011

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