ミゾハコベ (イヌミゾハコベ) | Elatine triandra Schk. var. pedicellata Krylov | ミゾハコベ科 ミゾハコベ属 |
湿生〜抽水〜沈水植物 |
Fig.1 (神戸市北区・水田 2005.8/6) |
||
Fig.2 (兵庫県小野市・水田 2011.9/19) 水田や休耕田に生える小型の1年草。抽水〜沈水状態のものも見られる。 コナギやオモダカの生育する、やや自然度の高い水田で出現する傾向が強い。 茎は横に這って放射状に広がり、長さ3〜10cm。 葉は広披針形(浮葉)〜長楕円状披針形(沈水葉)で、長さ5〜12mm、幅2〜3mm、葉脈は中央脈のみが明瞭で、鈍頭。 葉柄は短く不明瞭で、基部に長さ約1.5mmの、膜質披針形の托葉がある。 花は葉腋に単生し、径約1mmで淡紅色、短い柄がある。 花弁は3個、雄蕊3個、雌蕊1個で、花柱は3個離生する。 刮ハはやや扁平な球形で、径約2mmで3室あり、 種子は長さ0.5mm、やや湾曲した円柱形で、横長の6角形の網目模様が縦に並ぶ。 草体が沈水状態の場合は水中で閉鎖花をつけ、よく結実する。 果実に柄のないものをイヌミゾハコベ(E. triandra)とすることがある。その場合、市内のものはほとんどがイヌミゾハコベとなる。 なお、イヌミゾハコベとミゾハコベには生態的な違いは無い。 近似種 : ミズハコベ、 アメリカアワゴケ、 スズメノハコベ ■分布:本州、四国、九州 ・ 朝鮮半島、満州、シベリア、中国、台湾、ジャワ、インド、ヨーロッパ東部、南米 ■生育環境:水田や休耕田など。 ■花期:6〜8月 ■西宮市内での分布:中・北部の水田で見られるが、北部に多く、中部では少ない。 |
||
↑Fig.3 生長初期のミゾハコベ。(西宮市・水田 2007.7/31) この時期の水中から発芽した草体には、茎や芽が赤く色付くものが見られる。 |
||
↑Fig.4 ミゾハコベの開花。(西宮市・休耕田 2007.8/19) 花は非常に小さくて地味で径1mm。花弁は淡紅色で3枚つき、雄蕊3本。花には短い柄がある。 雌蕊には3岐する柱頭があるが、非常に小さいためこの画像からは判別できない。 |
||
↑Fig.5 秋の刈り取り後の水田では沢山の果実をつけたミゾハコベが見られる。(西宮市・水田 2007.10/30) |
||
↑Fig.6 用水路内で沈水状態で生育するもの。(兵庫県小野市・用水路 2011.9/19) 沈水状態で生育するものは葉が長く伸び、質は軟らかくなる。葉先は鈍頭で、ミズハコベのように2浅裂しない。 隣り合って生えているのはイトトリゲモ。 |
||
↑Fig.7 ミゾハコベを写した画像に偶然写りこんでいたゾウムシの仲間。(西宮市・休耕田 2007.8/19) ピンボケではっきりとした様子は解らないが、小型のゾウムシ類は湿生植物との関わりがあるものが多く、この個体もミゾハコベと 何かの関係があるのかも知れない。ミゾハコベの果実と比較すると、体長は2mmもないかと思う。 ムシクサコバンゾウムシ、あるいはホソチビゾウムシあたりか? |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.8 水田に群生するミゾハコベ。(西宮市・水田 2008.8/2) 水田にミゾハコベのほか、キカシグサ、ウリカワ、シャジクモなどが現われると、稀少な水田雑草も見られるようになる。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.9 水田の減反地で沈水形で群生するミゾハコベ。(兵庫県小野市・水田 2008.8/2) 非常に自然度の高い溜池直下にある水田の減反地で、沈水状態のミゾハコベ群落が優占し、多くの稀少な水田雑草が生育していた。 画像ではスブタ、ヤナギスブタ、キクモ、コナギ、アメリカアゼナが見られるが、他にアブノメ、シソクサも生育していた。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 角野康郎, 1994 ミゾハコベ. 『日本水草図鑑』 p.137. pl.139. 文一統合出版 大滝末男, 1980 ミゾハコベ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 68〜69. 北隆館 佐竹義輔, 1982. ミゾハコベ科ミゾハコベ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.254. pl.233. 平凡社 村田源, 2004 ミゾハコベ科ミゾハコベ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(U) 離弁花編』 p.62. pl.16. 保育社 牧野富太郎, 1961 ミゾハコベ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 399. 北隆館 長田武正・長田喜美子, 1984 ミゾハコベ. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 pl.99. p.101. 保育社 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ミゾハコベ. 『六甲山地の植物誌』 161. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. イヌミゾハコベ. 『近畿地方植物誌』 69. 大阪自然史センター --------------------------------------------------------------------- 森本桂, 1984 チビゾウムシ科.林匡夫・森本桂・木元新作(編) 『原色日本甲虫図鑑(W)』 pl.52. p.268. 保育社 森本桂, 1984 コバンゾウムシ属.林匡夫・森本桂・木元新作(編) 『原色日本甲虫図鑑(W)』 pl.57. p.291〜292. 保育社 最終更新日:27th.Feb.2014 |