アメリカアワゴケ Callitriche terrestris  Raf. アワゴケ科 アワゴケ属
湿生植物・帰化植物
Fig.1 (西宮市段上町・畑地の畝の間 2006.11/2)

時折水没しそうな河川敷の水際の泥濘地や農耕地の水路脇、公園や住宅の庭の湿った場所に生える小さな1年草。
最近になって頻繁に見かけるようになった帰化植物で、国内では1985年に横浜市で最初に採集された。
北米原産で、英名はterrestrial water-starwort。原産地の自生地では4〜9月に、道端や裸地、湿地に見られるようだ。
在来種のアワゴケやミズハコベ、スズメノハコベとよく似ており、草体が非常に小さいため気付かずに見過ごされることが多い。

茎は横走して節から発根し、放射状に広がり、高さ5cm。
葉は対生し、長さ3〜4mm、幅約1mm、倒卵状長楕円形〜長卵状楕円形で全縁。葉脈は3脈で、葉柄はごく短い。
花は雌雄異花で、ふつう片側の葉腋に雌花を1個、もう一方の葉腋には雄花と雌花を同時につけ、両花ともごく小さく、花弁と萼ともに欠き、緑色。
雄花は1個の雄蕊からなり、雌花は1個の雌蕊からなり、花柄があり、柱頭は2裂する。子房は2心皮。
果実は長楕円形の分果が横に2個連なった、軍配状の4分果、短い柄があり、アワゴケのような翼はない。
近似種 : アワゴケスズメノハコベミズハコベミゾハコベ

■分布:本州
■生育環境:河川敷の泥濘地、農耕地、公園や庭園の湿った場所。
■花期:5〜7月
■西宮市内での分布:武庫川河川敷の泥濘地や平野部の畑地の畝のあいだの溝、公園や庭園の湿った場所に見かけるようになった。

Fig.2 株の拡大。(西宮市・武庫川河川敷の泥濘地 2007.6/4)
  葉は対生に付き、葉身はヘラ形〜到卵形で、3脈あるとされるが不明瞭。表面には腺点らしきものが見える。
  雌雄異花で、画像では上のシュートの株元側の葉腋に見えるのが雄花で、すぐ上の葉腋に見られるのが雌花。

Fig.3 匍匐枝を出して広がるアメリカアワゴケ。(西宮市・武庫川河川敷の泥濘地 2007.6/4)
  泥濘地に匍匐枝を出して広がる様子は、アワゴケよりもミズハコベの陸生形の姿を思わせるが、
  草体はミズハコベに較べてはるかに小さい。
  茎は生育する微地形にあわせて、曲がりながら地表を這っている。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.4 河川敷に生えるアメリカアワゴケ。(西宮市・武庫川河川敷の泥濘地 2007.6/4)
中央のコケのように見えるのがアメリカアワゴケの群生。他の草と比較すると、その小ささがわかる。
降雨があれば増水して水没するような場所で、周囲には外来種のアメリカアゼナのほか、ギシギシ、カヤツリグサ科の草本やアゼガヤ、
イヌビエ、チクゴスズメノヒエなどの大型化するイネ科草本も見られるが、これらの種が生長してくる夏場になると枯れて消えてしまう。

Fig.5 畑地の畝の間に群生するアメリカアワゴケ。(西宮市・畑地 2010.4/24)
草体は非常に小さく、遠目ではまさにコケが生えているようにしか見えない。
画像右中ほどにムシクサの若い個体が写っているが、それと比較すればアメリカアワゴケの草体の小ささが解る。
西宮市内平野部の畑地には、このようにアメリカアワゴケの群生が広がっている場所が増えつつある。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
勝山輝男. 2001. アワゴケ科アワゴケ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.169〜170. pls.80. 平凡社
勝山輝男. 2001. アワゴケ科アワゴケ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1190〜1191. 神奈川県立生命の星・地球博物館
勝山輝男・河濟英子, 1999 アワゴケ科の新帰化植物,アメリカアワゴケ(新称). 植物研究雑誌 74(3):181〜182.

最終更新日:24th.Apr.2010

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