スズメノハコベ (スズメハコベ) Microcarpaea minima  (Koenig) Merrill ゴマノハグサ科 スズメハコベ属
湿生植物  環境省絶滅危惧U類(VU)・兵庫県RDB Bランク種
Fig.1 (岡山県真庭市・休耕田 2007.9/23)

Fig.2 (兵庫県丹波市・水田の減反部 2013.8/20)

水田や休耕田、農耕地周辺の湿地に稀に生える小型の1年草。
除草剤の使用や圃場整備によって減少した水田雑草で、現在では自生地は局限される。

茎は多数分枝して地表を這い、節から発根する。
葉は長さ2〜5mmで、幅1mm前後、葉柄はなく長楕円形〜楕円状披針形で、先は丸い。
花は葉腋につき柄はなく、萼は筒状で先端が浅5裂して、やや開出し、縁には毛が生える。
花冠は萼と同長、または小さく、淡紅色〜淡紫色で、2唇形、上唇は2浅裂し、下唇は3裂して筒部は短い。
雄蕊は2個で、下唇側につき、雌蕊は1個。刮ハは長さ1.2mm、幅0.8mmで萼に包まれる。種子は淡黄褐色で、長楕円形、長さ0.4mm。
近似種 : アワゴケアメリカアワゴケミズハコベミゾハコベ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国、東南アジア、インド、オーストラリア
■生育環境:水田や休耕田とその周辺の湿地など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:市内では未確認。発見される可能性は極めて低い。県内では中〜北部で稀。

Fig.3 花は小さく花冠は淡紅色〜淡紫色で2唇形、径約2mm、萼は5裂しほぼ同じサイズ。(岡山県真庭市・水田 2006.9/27)

Fig.4 シュートの左上葉腋は蕾、左下は開花中、右は花後に残った萼筒。(岡山県真庭市・休耕田 2007.9/23)
  萼筒は上部でやや開出気味に5裂し、毛が多い。
  開花中の花から、紫褐色を帯びた雌蕊柱頭がのぞいている。

Fig.5 果実形成期のスズメノハコベ。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/25)
  刮ハは縦に長い球形で、ふつう赤熟し、萼に包まれているため、横からは見えない。
  よく似た小型の水田雑草はいずれも刮ハが萼から出るので、区別するよい目安になる。

Fig.6 種子は長楕円形、淡黄褐色で長さ0.4mm。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/25)

Fig.7 種子の拡大。(京都府中丹地方・休耕田 2009.9/28)
  種子は楕円形、平坦な面があり、横断面は半円状、表面には縦に並ぶ微細な格子模様がある。

Fig.8 出芽したスズメノハコベ。(自宅植栽 2008.7/20)
  スズメノハコベは環境省RDBの絶滅危惧U類(VU) に指定されるほどの種だが、発芽率は良く、栽培は容易である。

Fig.9 休耕田の一画を覆うスズメノハコベ。(岡山県真庭市・休耕田 2007.9/23)
  茎は地表を這い、節から発根して広がり、ときに地表を覆い尽くす。
  球形の頭花をつけた花茎をあげているのはホシクサ。

生育環境と生態
Fig.10 管理休耕田で生育するスズメノハコベ。(岡山県真庭市・休耕田 2007.9/23)
このような大きな規模の群落が見られるのは、春〜秋に湛水状態となり、大型の多年生本草が排除される管理休耕田である。
暑かった2007年度は、同じ南方系であるホシクサとともに休耕田や水田で大群生する姿が見られた。
この休耕田ではスズメノハコベ、ホシクサのほか、ミズマツバやアブノメの群生も見られた。
また、周辺の水田ではシソクサやマルバノサワトウガラシなども見られる。

Fig.11 刈り取り後の水田で見られたスズメノハコベ。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/25)
刈り取り後の水田の地表に点々と生育していた。
画像中に見られるカヤツリグサ科の草本はミズハナビ。他にミズマツバなども見える。
この水田ではミズハコベ、ミゾハコベも生育しているため、非常に紛らわしかった。

Fig.12 刈り取り後の水田で群生するスズメノハコベ。(兵庫県多可郡・刈り取り後の水田 2010.10/2)
谷戸奥の湿田に生育しているもので、シカの防護網が取り除かれた後で、シカなどによる野生動物による撹乱の激しい場所であった。
水田にはコナギ、イボクサ、タマガヤツリ、ヒナガヤツリ、ハリイ、イヌホタルイ、タイワンヤマイ、チゴザサ、ヌカキビ、エゾノサヤヌカグサ、ヌメリグサ、
アゼナ、アメリカアゼナ、アゼトウガラシ、アブノメ、ミゾカクシ、ヌマトラノオ、トキンソウ、キカシグサが生育しているが、アブノメ、アゼトウガラシ、
エゾノサヤヌカグサ、イヌホタルイ、タイワンヤマイなどの食害が目立った。

Fig.13 刈り取り後の水田で生育するスズメノハコベ。(兵庫県丹波市・刈り取り後の水田 2010.9/1)
かつては氾濫源であったと考えられる、河川近くの水田で生育している。
ここではキクモ、ヒナガヤツリ、ミゾカクシとともに1枚の水田で密生していた。ここでは計25種の水田雑草が生育しており、その中にはミズワラビ、シソクサ、
ホシクサ、ミズマツバなどの兵庫県RDBに記載された種も含まれる。

Fig.14 湛水休耕田に絨毯状に密生するスズメノハコベ。(京都府中丹地方・休耕田 2015.8/28)
氾濫原由来の水田地帯にある湛水休耕田内に見事な群生が見られた。
同じ水田内にはイヌホタルイ、マツバイ、ハリイ、イグサ、コウガイゼキショウ、カワラスガナ、タマガヤツリ、チゴザサ、イヌビエ、カズノコグサ、
ホシクサ、ホソバノウナギツカミ、ヤナギタデ、コタネツケバナ、タネツケバナ、イヌガラシ、セリ、ヒメミソハギ、ミズマツバ、アブノメ、アゼトウガラシ、
アゼナ、タケトアゼナ、ミゾカクシ、ヒロハホウキギク、オオジシバリ、ノニガナなどが生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
山崎敬, 1981. ゴマノハグサ科スズメハコベ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.103. pl.87. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004 ゴマノハグサ科スズメハコベ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.149. pl.46. 保育社
牧野富太郎, 1961 スズメハコベ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 552. 北隆館
黒崎史平・高野温子 2006. スズメノハコベ. 兵庫県産維管束植物7 ゴマノハグサ科. 人と自然16:108. 兵庫県立・人と自然の博物館
松岡成久, 2010. 兵庫県下におけるスズメハコベ(スズメノハコベ)(ゴマノハグサ科)の新産地. 兵庫県植物誌研究会会報 85:1. 兵庫県植物誌研究会

最終更新日:26th.Feb.2017

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