ミズヒマワリ Gymnocoronis spilanthoides  DC. キク科 ミズヒマワリ属
湿生〜抽水植物・帰化植物  特定外来生物指定種
Fig.1 (兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28)

湖沼、溜池、河川などに陸生〜抽水状態で生育する多年草。
茎は中空で、浮力があり、濃緑色ではじめ直立するが、後に盛んに分枝して地表をはい、あるいは水際に広がり、高さ1〜1.5mとなり、
抽水状態ではこんもりとしたブッシュとなる。
葉は茎に対生し、柄があり、暗緑色で、長卵形〜披針形、長さ5〜20cm、幅2.5〜5cm、鋭尖頭、両面ともに無毛で、基部はくさび形〜円形。
葉縁には低い鋸歯があり、少し波打つ。
花は分枝した茎頂の集散花序につき、花柄や花序の柄には密に細毛がある。
総苞片は線形で長さ約3mm、背面に細毛があり、総苞は長さ5mm。
頭花は球形で径1.5〜2cm、多数の小花が密集し、花冠は白色で腺状毛があり、花柱は深く2岐し、柱頭の先は広くなる。
痩果は稜があり、長さ約2mm、突起状の毛がある。

【メモ】 本種は特定外来生物に指定されており、栽培、採集、他所への移動などが禁止されている。
    繁殖力は旺盛で、ちぎれた茎や葉片からもカルス再生し、浮遊して分布域を広げる。
    特に栄養豊富で流れの緩やかな水路や止水域に群生することが多く、浮遊した状態でも生育を続ける。
    また、本種はアレロパシー活性が優れ、群生するとセイタカアワダチソウのように他種が侵入することが困難となる。
    広い集水域を持つ水系では、茎や葉の断片から再生するため、流域全体の監視が必要となり、駆除には大変な労力を要する。

花が在来種のヌマダイコンAdenostemma lavenia)に似るが、ヌマダイコンの葉表面と裏面脈上には短毛が生え、鋸歯は粗く明瞭、
花後の花は下を向かないことから区別できる。
近似種 : ヌマダイコン

■分布:関東地方以西に帰化 ・ メキシコからアルゼンチンにかけての中南米熱帯〜亜熱帯原産
■生育環境:湖沼、溜池、河川など。
■果実期:9〜10月
■西宮市内での分布:武庫川の低水敷に定着しており、今後とも監視が必要である。

Fig.2 地表に広がる茎。(西宮市・武庫川河川敷 2009.12/8)
  茎は平滑で鈍い稜がある。成長期には盛んに分枝して地表にも枝を広げる。葉は茎に対生する。

Fig.3 ミズヒマワリの葉。(西宮市・武庫川河川敷 2009.12/8)
  葉は有柄で、超卵形〜披針形、両面ともに無毛で、葉縁には低い鋸歯が並んで、多少波打ち、先は凸状となり鋭尖頭。
  葉身基部はくさび形〜円形。節は画像のように赤紫色を帯びることがある。

Fig.4 開花中のミズヒマワリ。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28)
  花は茎頂の集散花序につく。花後には花柄は曲がって、下向きとなる。

Fig.5 花序の拡大。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28)
  花は花序の下方から次々と開花するが、満開の上向きとなっている花はふうつ1個だけである。
  花柄や花序枝には細毛が生えている。総苞片は線形で、背面には細毛が生えている。
  花後、花柄は曲がって、花は下向きとなる。

Fig.6 頭花の拡大。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28)
  小花は筒状花が多数つき、花筒は総苞とほぼ同長または少し長く、淡緑色で内面は褐色を帯びている。
  白く飛び出しているのは2深裂した花柱で、先はへら形扁平となっている。
  筒状花をさらに詳しく観察したかったが、持ち帰るわけにも行かず、次回屋外観察する方法を思案中である。

Fig.7 ミズヒマワリの訪花昆虫。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28)
  上はアサギマダラで、下はメスグロヒョウモン。
  ミズヒマワリは多くの訪花昆虫を誘引することで知られている。この日も画像に見られる種のほか、セセリチョウの仲間やハナバチ類が多数訪花していた。
  訪花昆虫の観察には最適であるが、旺盛な繁殖力で繁茂することにより在来種を圧迫し、さらにアレロパシー活性により他種を排除するミズヒマワリは、
  やはり駆除されるべきものであろう。
  また、ミズヒマワリが生育する周辺の花に訪花昆虫が訪れる機会が減り、受粉の機会を減少させている可能性も高いと考えられる。

Fig.8 水中に進出したミズヒマワリ。(西宮市・武庫川河川敷 2010.5/5)
  沈水状態で生育するものは、茎が直立して水面を目指して伸び、葉は小型となり、波打つ。

Fig.9 水中で越冬するミズヒマワリ。(西宮市・武庫川河川敷 2015.3/25)
  ミズヒマワリは陸上では地下で越冬芽をつくるが、水中では生きたまま越冬し、春になると旺盛に繁茂する。
  この場所は以前はナガエツルノゲイトウに覆われていたが、今ではすっかりミズヒマワリに駆逐されてしまった。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.10 武庫川の河川低水敷に定着したミズヒマワリ。(西宮市・武庫川河川敷 2009.12/8)
ミズヒマワリは河川では流れの緩いワンド状の場所を好むが、武庫川ではそのような場所がナガエツルノゲイトウによって被植され、
ミズヒマワリは画像のように、水際の被植の少ない砂地に点々と生育している。
しかしながら、ナガエツルノゲイトウ群落内に侵入しないとも限らないので、今後も監視の必要があるだろう。

Fig.11 水際の礫地に生育するミズヒマワリ。(西宮市・武庫川河川敷 2010.5/5)
武庫川の本流水際にセイヨウカラシナ、ナガエツルノゲイトウ、キシュウスズメノヒエとともに生育している。
黄色い花を開いているのがセイヨウカラシナ。水際のミズヒマワリよりも陸地側で小さな葉をつけているのがナガエツルノゲイトウで、その周辺に
キシュウスズメノヒエやメリケンガヤツリの子株が見られた。

Fig.12 ワンド内に定着したミズヒマワリ。(西宮市・武庫川河川敷 2015.10/5)
この場所は以前はナガエツルノゲイトウに覆われていたが、現在ではミズヒマワリのほうが優勢となっている。
画像左に水面上に茎を這わせているのがナガエツルノゲイトウで、わずかに残っている。

他地域での生育環境と生態
Fig.13 溜池畔にオオバナミズキンバイとともに群生するミズヒマワリ。(兵庫県加西市・溜池畔 2010.9/28)
この自生地は公園施設内にあり、花期の秋に溜池畔も草刈り管理されている。
そのためかミズヒマワリの爆発的な増殖は見られず、草刈りに遭わない水際のオオバナミズキンバイの勢力が強い。
ここでは水辺にメリケンムグラも群生しており、3種の繁殖力の強い外来種の競合が観察できた。
参照 : オオバナミズキンバイ  メリケンムグラ

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
高橋秀男. 2001. キク科ヒヨドリバナ連ミズヒマワリ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.226. pls.118. 平凡社
藤原直子 2006. ミズヒマワリをめぐるチョウとヒト. 近田弘文・清水建美・濱崎恭美(編)『帰化植物を楽しむ』 p.59〜79. トンボ出版.
須山知香・藤原直子 2003. 日本新帰化植物ミズヒマワリ(キク科)の脅威的増殖. 水草研究会誌 78:1〜5. 水草研究会.
須山知香 2007. 特定外来生物ミズヒマワリ(キク科)は近自然条件下で葉片からカルス再生する. 水草研究会誌 87:16〜18. 水草研究会.
石塚明子・福島祐助・大隈光善 2008. 野菜や観葉植物、米ぬかなどのアレロパシー活性と植物体の粉末を利用した水田雑草の防除効果.
          福岡県農業総合試験場研究報告 27:93〜97. 福岡県農業総合試験場.  PDFファイルLINK
藤井伸二・志賀隆・金子有子・栗林実・野間直彦. 2009. 琵琶湖におけるミズヒマワリ(キク科)の侵入とその現状および駆除に関するノート.
           水草研究会誌 92:32. 水草研究会.
内藤 馨 2010. 淀川におけるミズヒマワリGymnocoronis spilanthoides DC.の生育環境. 雑草研究 55:187〜193.  web LINK
芥川倶楽部. ミズヒマワリ駆除. NPO法人芥川倶楽部WEBサイト
その他、原産地のサイト、有害生物の海外サイトなどを参照。

最終更新日:26th.Feb.2017

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