ニガナ | Ixeris dentata (Thunb.) Nakai | キク科 ニガナ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・林道脇 2008.6/12) |
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Fig.2 (兵庫県篠山市・溜池畔 2013.5/24) 水田の畦や耕作地周辺から、道端や草地などに普通な多年草。 茎は高さ30〜40cmで、根生葉は有柄、長さ10〜18cm、倒披針形で、先のとがった鋸歯がまばらにあり、ときに羽状に切れ込む。 茎につく葉は少数で柄がなく、毛状の鋸歯があり、基部は心形で茎をだく。 頭花は径15mm前後、ふつう5〜7個の舌状花からなる。総苞は長さ7〜9mm、総苞内片は5〜6個。 痩果は長さ4〜4.5mm、嘴は1mmで、冠毛は長さ4mmで褐色を帯びた白色。 ニガナに似るものに以下の種がある。 ハイニガナ(var. stolonifera)は走出枝を出し湿地に生育し、ニガナよりやや小型。小花は5個。 ハナニガナ(オオバナニガナ、オオニガナ)(var. albifloraf. ampliflora)は小花が8〜11個と多い。 ノニガナ(I. polycephala)は茎葉が無柄で基部がやじり形になって茎を抱く。頭花の径は8mm。 ホソバニガナ(I. makinoana)は根生葉が線状披針形でほぼ全縁。頭花の径は5〜7mm程度。小花ふつう6個。花時の総苞の長さ4〜5mm。稀。 近似種 : ハイニガナ、 ハナニガナ、 ホソバニガナ、 ノニガナ、 オオジシバリ、 イワニガナ ■分布:日本全土 ・ 朝鮮半島、中国、南千島 ■生育環境:水田の畦、休耕田、耕作地周辺、道端など。 ■花期:5〜7月 ■西宮市内での分布:山地帯を除いた市内全域に普通。 |
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↑Fig.3 頭花。(西宮市・砂防ダム内の湿地 2008.6/12) 花弁の先端が5浅裂した黄色の舌状花を5〜7個つける。2個合わさった花柱は、先端で反り返る。 |
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↑Fig.4 根生葉。(西宮市・遊歩道脇 2007.5/24) 根生葉はへら状〜倒披針形で、柄があり、葉縁にはとがった鋸歯がまばらにある。 |
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↑Fig.5 茎につく葉。(西宮市・砂防ダム内の湿地 2008.6/12) 基部が心形となって柄はなく、茎を抱く。葉先は鋭頭で、葉縁には刺毛状の鋸歯がある。 |
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↑Fig.6 ニガナの越冬態。(西宮市・林道脇 2009.1/4) 地上部の大きな葉は枯れて、小型の根生葉を数個出して常緑越冬する。 開花後の盛夏にもこのような根生葉を形成して休眠していることがあり、秋期に再び花茎を上げることも多い。 |
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↑Fig.7 晩秋に開花したニガナ。(兵庫県小野市・溜池土堤 2010.11/25) ニガナは秋〜晩秋にかけて開花するものも多い。 この時期には線形の根生葉が目立ち、また茎葉も非常に細く、その基部は茎を抱いていないように見えるが、根際を確認すると盛夏に形成された 葉柄のある倒長卵形〜倒披針形の根生葉が残っているため、他種と区別することができる。 |
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↑Fig.8 結実したニガナ。(兵庫県小野市・溜池土堤 2010.12/12) 花後、比較的短期間で冠毛のある痩果が熟す。 |
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↑Fig.9 痩果と冠毛。(兵庫県小野市・溜池土堤 2010.12/12) 冠毛は褐色を帯び、羽毛状とならず、表面には刺状毛が並んでいた。痩果は淡黄褐色。 |
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↑Fig.10 痩果。(兵庫県小野市・溜池土堤 2010.12/12) 痩果は狭長楕円形〜披針形、やや翼状となる10本の隆条があり、条には上向きの刺状突起が並ぶ。 |
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↑Fig.11 舌状花が6〜7個見られるもの。(西宮市・棚田の畦 2008.6/24) ニガナとハナニガナの雑種、アイノコハナニガナの可能性があるが詳細は不明である。 茎は明らかにニガナよりも太かった。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.12 林道脇に生育するニガナ。(西宮市・林道脇 2008.6/12) やや湿った林道脇の木漏れ日のあたる場所に生育していたもの。 シソバタツナミ、ヤブヘビイチゴ、ヨモギ、コメガヤ、ナガバモミジイチゴの幼木などとともに生育していた。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.13 農道脇の草地斜面にみられたニガナ群落。(兵庫県丹波市・草地斜面 2010.5/8) 山際の農道脇の湧水のしたたる急傾斜の草地斜面に群生していたもの。 湧水による表水の多い場所であり、斜面の地表はジャゴケ、ホソバミズゼニゴケ、ツルチョウチンゴケが地表を覆い、 そこにノイバラ、ニガイチゴ、ニョイスミレ、ノミノフスマ、オトギリソウ、サワオトギリ、ヘクソカズラ、トボシガラ、イタドリなどとともに見られた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北村四郎, 1981. キク科ニガナ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.229〜230. pls.214〜217. 平凡社 北村四郎・村田源, 2004 キク科ニガナ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 離弁花編』 p.5〜7. pl.2. 牧野富太郎, 1961 ニガナ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 684. 北隆館 長田武正・長田喜美子, 1984 ニガナ. 『野草図鑑 4 たんぽぽの巻』 p.40. pl.38. 保育社 支倉千賀子. 2001. キク科ニガナ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1433〜1437. 神奈川県立生命の星・地球博物館 村田源. 2004. ニガナ. 『近畿地方植物誌』 24. 大阪自然史センター 矢野悟道・竹中則夫. 1978. 甲山湿原(仁川地区)の植生調査並びに保全に関する報告書. 西宮市自然保護課 小山博滋・黒崎史平・高野温子 2007. ニガナ. 兵庫県産維管束植物8 キク科. 人と自然17:171. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:4th.Sep.2013 |