ノウルシ Euphorbia adenochlora  Rupr. トウダイグサ科 トウダイグサ属
湿生植物   環境省準絶滅危惧・兵庫県RDB Bランク種
Fig.1 (大阪府高槻市・河川敷 2013.4/16)

Fig.2 (大阪府高槻市・河川敷 2013.4/16)

河川敷、休耕田、用水路脇、湿った草原などに生える多年草。
地下茎は肥厚し、長く水平に伸び、2叉分枝を繰り返し、その先端から毎年新芽を生じる。
高さ30〜50cm。直立する茎に葉を互生し、茎頂に5枚の葉を散状につけ、その葉腋から5本の散形枝を出し、春に各枝の先に杯状花序をつける。
杯状花序は3叉分枝、ついで2叉分枝を繰り返す。杯状花序の腺体は楕円形。
葉は狭長楕円形〜披針形、長さ5〜6cm、幅6〜7mm、縁に鋸歯はなく、裏面に短い軟毛がある。
花序の下部の苞葉は倒卵形で、鮮やかな黄色を呈し、遠くから見ると花弁のように見える。
球形の子房の外面にはいぼ状の小突起が密生し、刮ハとなって熟しても小突起が残る。

タカトウダイE. pekinensis)は草原や溜池土堤などに生育し、花序下部の苞葉は菱状卵形で、花期は6〜7月。
トウダイグサE. helioscopia)は路傍や畑地に生育し、葉に細鋸歯があり、子房や刮ハは突起がなく、平滑。花期は春〜夏。
ナツトウダイE. sieboldiana)は林床や林縁に生育し、腺体は三日月形、子房や刮ハは突起がなく、平滑。花期は春〜初夏。
近似種 : タカトウダイトウダイグサナツトウダイ

■分布:北海道、本州、四国、九州
■生育環境:河川敷、休耕田、用水路脇、水田の畦、湿った草地など。
■花期:4〜5月
■西宮市内での分布:西宮市内では見られない。兵庫県下でも自生地は少ない。

Fig.3 茎と葉。(大阪府高槻市・河川敷 2013.4/16)
  茎は直立し、横断面は丸く、表面は平滑。葉はらせん状に茎に互生する。

Fig.4 杯状花序。(大阪府高槻市・河川敷 2013.4/16)
  春先に茎頂や、分枝した枝先に杯状花序をつける。花序下部の苞葉は黄色く染まり、花弁のように見える。

Fig.5 上から見た杯状花序。(大阪府高槻市・河川敷 2013.4/16)
  杯状花序は数回にわたって分枝する。最初は茎頂に散状に輪生する葉の葉腋から5個の杯状花序がでる。
  画像のものは続いて3叉分枝して、それぞれの先に2枚の苞葉を持った杯状花序をつくっている。花序中心にある1個の花は不稔。

Fig.6 3叉した枝先の杯状花序。(大阪府高槻市・河川敷 2013.4/16)

Fig.7 杯状花序につく花。(大阪府高槻市・河川敷 2013.4/16)
  花は5個の楕円形の腺体を持った総苞に包まれている。雄蕊は2個で、それぞれの花糸は上部で2岐する。
  雌花は柄を持ち、いぼ状の小突起をもつ子房があり、その先に3岐する花柱があり、柱頭は2岐する。

Fig.8 果実形成期の花序。(大阪府高槻市・河川敷 2013.5/1)
  刮ハは立ち上がり、苞葉の黄色は退色する。子房表面のいぼ状小突起は、刮ハになっても残る。

Fig.9 熟した刮ハ。(大阪府高槻市・河川敷 2013.5/15)
  刮ハは熟すと褐色となり、基部の関節から脱落して地表に落ちる。刮ハは3室あり、1室に1個の球形の種子を内蔵する。
  刮ハの表皮は厚く硬く、水に浮く。結実率はあまり良くないようで、正常な結実が見られたのはこの中で2個のみ。
  しかも1個は1室の種子のみが結実していただけだった。

Fig.10 種子。(大阪府高槻市・河川敷 2013.5/15)
  種子は球形、淡黄白色、径約3mm。

Fig.11 結実後の草体。(滋賀県高島市・後背湿地 2009.6/11)
  結実後、落果したものは紅葉するものがある。この後、ノウルシの地上部は枯れる。

生育環境と生態
Fig.12 河川敷のアシ原に群生するノウルシ。(大阪府高槻市・河川敷 2013.4/16)
野焼きの行われている場所に多くの個体が生育し、群生している。
ノウルシが咲く周囲では、イシミカワ、サデクサ、シロネが新芽を上げ、カサスゲ、ヤガミスゲなどが点在していた。

Fig.13 セイヨウカラシナとともに群生するノウルシ。(大阪府高槻市・河川敷 2013.4/16)
ノウルシとセイヨウカラシナの開花期は一致し、遠くから見ると一角が黄色くそまっているように見える。。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
吉澤潔夫, 1982. トウダイグサ科トウダイグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本U 単子葉類』 p.224〜229. pls.210〜214. 平凡社
牧野富太郎, 1961 ノウルシ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 347. 北隆館
勝山輝男. 2001. トウダイグサ科トウダイグサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 930〜933. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ノウルシ. 『六甲山地の植物誌』 147. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ノウルシ. 『近畿地方植物誌』 78. 大阪自然史センター
赤井賢成・黒崎史平・高橋晃 2002. ノウルシ. 兵庫県産維管束植物4 トウダイグサ科. 人と自然13:176. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:20th.May.2013

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