シソクサ Limnophila aromatica  (Lam.) Merrill. ゴマノハグサ科 シソクサ属
湿生植物  兵庫県RDB Bランク種  西宮市絶滅種
Fig.1 (兵庫県丹波市・水田 2009.10/18)
Fig.2 (兵庫県丹波市・水田 2009.9/2)
水田や休耕田、湿地などに生える1年草。特に水田で見かけることが多い。
主に圃場整備によって各地で減少傾向にある。
茎は円柱形で、高さ15〜25cm、基部はやや横に這い分枝する。
葉は普通、対生するが、茎の下部や水中では3輪生することが多く、長さ1.5〜3cm、葉柄はなく、長卵形で明瞭な鋸歯がある。
葉には毛がなく、腺点を散布する。水中に生じた葉は披針形であることが多い。
花は最初、上部の葉腋に付き、やがて下部の葉腋からも花茎を出す。花には長さ7〜15mmの花柄があり、萼の基部に小さな小苞がある。
花冠は長さ約1cmの唇形で、下唇は大きく、3深裂し、上唇は2浅裂し、内側には長毛がまばらに生える。
雄蕊は4個で、上唇に沿う2個の雄蕊は短い。

沖縄には花柄のないエナシシソクサ(Limnophila fragrans)が分布し、絶滅危惧U類に指定されている。
シソクサの和名の由来は、全草にシソに似たやや野性味の強い香気があることから名づけられた。
シソクサはベトナムではコリアンダーなどと同様に生で刻んでハーブとして使われる。
そのレシピは「Limnophila aromatica」と「Vietnam」でネット検索すると沢山ヒットする。
それらのサイトのシソクサの画像は、日本の物に較べると全草に毛が多く、今後再分類されるかもしれない。
日本でも清浄な環境で栽培して、ハーブとして使ってみてはどうだろうか?
レシピを開発すれば、食を絡めた、五感にうったえるような環境学習も可能であるかもしれない。
webを参照すると、東南アジアでは、シソクサの精油成分の解析も行われているようで、何らかの薬効成分が認められれば、
シソクサが注目される可能性も大いにあるだろう。
ちなみにシソクサは英語では「Rice Paddy Herb」と呼ばれレモンとクミンの間のような香気があると捉えており、
中国語では「水芙蓉」または「田香草」、ベトナム語では「Rau ngo」というらしい。
近似種 : アゼトウガラシヒロハスズメノトウガラシエダウチスズメノトウガラシ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、台湾、中国、フィリッピン、インド、マレーシア、オーストラリア
■生育環境:水田、休耕田、湿地など。
■花期:8〜11月
■西宮市内での分布:過去に市内での採集記録があるが、宅地開発により絶滅した。

Fig.3 シソクサの花期は長く、この時期は開花から結実、種子の様子など全て観察できる。(自宅植栽 2007.11/7)

Fig.4 花冠の拡大。(自宅植栽 2007.11/7)
  一見すると、花冠は4深裂しているように見えるが、唇形であり、2浅裂する上唇以外は、下唇が3深裂している。
  花弁は中部から合着して筒状にせばまり、奥に雄蕊の葯が見える。

Fig.5 シソクサの花の構造。(自宅植栽 2007.11/7)
  下側につく2個の雄蕊の雄蕊の花糸は長く、上唇内側には」長毛がまばらに生える。
  花を2つに切る際に雌蕊柱頭を切ってしまった。

Fig.6 未熟な刮ハの断面。(自宅植栽 2007.11/7)


Fig.7,8 熟した朔果(上左)と痩果。(自宅植栽 2007.11/7)
  熟した刮ハは上部が4つに割れる。痩果は長方形で長さ約0.3mm、表面には格子模様があり、茶褐色。

Fig.9 刈り取り後の水田の浅水中で発芽した実生苗。(兵庫県三田市・水田 2007.10/7)
  幼植物の葉身は線状披針形となる。

Fig.10 成長期のシソクサ。(自宅植栽 2007.8/26)

Fig.11 葉面には腺点を散布する。(自宅植栽 2007.8/26)

Fig.12 抽水状態で生育するものは茎が直立する。(兵庫県小野市・休耕田 2011.9/19)

生育環境と生態
Fig.13 自然度の高い棚田の水田で生育するシソクサ。(兵庫県三田市・水田 2007.10/7)
シソクサとともにアゼトウガラシ、アゼナ、アメリカアゼナ、トキンソウ、コオニタビラコ、コハタケゴケなどが写っており、賑やかだ。

Fig.14 水田内の減反部分に見られたシソクサ。(兵庫県三田市・水田 2008.9/28)
湿田気味の水田でコナギ、イボクサ、アゼナ、キクモ、クログワイ、イヌホタルイ、タマバヤツリ、エゾノサヤヌカグサなどの一般的な水田雑草に混じって、
タウコギ、ミズマツバ、アブノメなど比較的珍しい種とともに生育している。

Fig.15 発芽後まもなく開花した個体。(滋賀県・水田 2007.11/8)
Fig.7 のような刈り取り後に発芽したものは、2cmものびると花芽をつけて画像のような状態で開花する。

Fig.16 刈り取り後の水田で開花するシソクサ。(兵庫県丹波市・水田 2009.9/2)
ここではキクモ、キカシグサ、アゼトウガラシ、エダウチスズメノトウガラシ、ミズワラビなども見られかなり自然度の高い水田だった。
シソクサの個体数もかなり多い。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
山崎敬, 1981. ゴマノハグサ科シソクサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.101. pl.86. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004 ゴマノハグサ科シソクサ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.150〜151. pl.46. 保育社
牧野富太郎, 1961 シソクサ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 558. 北隆館
城川四郎. 2001. シソクサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1258〜1260. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. シソクサ. 『六甲山地の植物誌』 190. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. シソクサ. 『近畿地方植物誌』 39. 大阪自然史センター
黒崎史平・高野温子 2006. シソクサ. 兵庫県産維管束植物7 ゴマノハグサ科. 人と自然16:104. 兵庫県立・人と自然の博物館
松岡成久・丸岡道行. 2010. 千種町山間部の水田に見られた水田雑草. 兵庫県植物誌研究会会報 82:4

最終更新日:27th.Feb.2014

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