タウコギ Bidens tripartita  L. キク科 センダングサ属
湿生植物  兵庫県RDB Cランク種
Fig.1 (兵庫県三田市・水田 2008.9/28)

湿地、水田、休耕田、用水路脇などに生える1年草。
茎は直立または斜上し、高さ20〜150cm、ほとんど無毛でよく分枝する。
葉は対生してつき、長さ5〜13cm、ふつう3〜5裂する。葉柄の縁はやや翼状となる。
頭花は葉状の総苞片に包まれ、径7〜8mm、黄色、多数の筒状花からなり、舌状花なない。総苞片は草質で、ふつう4〜5個、果時には長さ1.5〜4.5cmと長い。
果実期の頭花は径25〜35mm。痩果は長さ7〜11mmで扁平、2本の刺があり、縁と肋上に逆刺があるタイプと、平滑なタイプのものとがある。
以前はあちこちの水田に見られ、稲の害草であったが、近年は減少傾向が著しく、絶滅危惧種に指定する地域も多い。

同属のものに似た種が多い。
アメリカセンダングサB. frondosa)は全草ほとんど無毛。頭花の最外縁にはごく小さな舌状花がある。痩果は扁平なくさび形で長さ6〜7mm。
要注意外来生物に指定された北アメリカ原産の帰化植物。荒地や野原から水田の畦、用水路脇、休耕田などにふつうに見られる。
コセンダングサB. pilosa)は葉の両面にまばらに細毛がある。総苞片は7〜8個で長さ5mm。舌状花はない。痩果は線形で長さ7〜13mmと長い。
近年、生育地が急激に広がり、要注意外来生物に指定された。荒地や野原から水田の畦、用水路脇、休耕田などによく見られる。
センダングサB. biternata)は葉に毛が多い。総苞片は8〜10個で長さ3〜6.5mm、線形で鋭頭。結実しない舌状花が0〜5個つく。
関東以西の本州、四国、九州の湿地などに分布。
コバノセンダングサB. bipinnata)は前種に似て葉の両面に毛がやや多い。総苞片は5〜7個で長さ2.5mm。舌状花は1〜3個つく。本州の山野に分布。
近似種 : アメリカセンダングサセンダングサコセンダングサ

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 台湾、朝鮮半島、アジア、ヨーロッパ、北アフリカ、オーストラリア
■生育環境:湿地、水田の畦、休耕田、用水路脇など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:北部の棚田周辺の畦の2ヶ所で生育を確認している。

Fig.2 頭花。(兵庫県三田市・水田 2008.9/28)
  頭花の総苞外片は葉状となり、ときに明瞭な鋸歯が見られる。

Fig.3 頭花。(兵庫県三田市・水田 2008.9/28)
  舌状花はなく、多数の筒状花からなる。
  総苞外片の基部付近の縁には小刺状の毛がみられた。

Fig.4 タウコギの葉。(西宮市・水田 2006.7/31)
  葉身はふつう3〜5裂し、裂片にはアメリカセンダンクサに見られるような柄はない。
  鋸歯は粗く、先は鈍頭。

Fig.5 花茎。(兵庫県三田市・水田 2008.9/28)
  花茎断面は不定で、アメリカセンダングサのような4角形とはならない。
  花茎上部につく葉は切れ込まず、粗い鈍鋸歯がある。

Fig.6 果実。(滋賀県・水田 2007.11/8)
  果実は痩果が充実すると径2.5cm程度になる。

Fig.7 痩果。(西宮市・刈り取り後の水田 2009.11/10)
  痩果は長さ7〜11mmで扁平または3稜形、上端には冠毛の変化した2本の刺がある。
  上端の2本の刺の縁と肋には逆刺があり、痩果の稜上にも逆刺が並ぶ。
  タウコギの痩果には逆刺のあるタイプと、次に紹介する平滑なタイプとがある。

Fig.8 逆刺のない痩果。(兵庫県篠山市・刈り取り後の水田 2009.11/6)
  近年、逆刺の有無は遺伝的なものであることが解明された。
  逆刺のない平滑なものは衣服に付着する能力を完全に失って、分布を広げず同一箇所に留まる傾向が強いという。

Fig.9 紅葉したタウコギ。(兵庫県三田市・刈り取り後の水田 2011.10/13)
  果実期になると葉が紅色〜紅紫色に色づく個体も多い。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.10 水田の畦で強い刈り込みに遭ったタウコギ。(西宮市・水田 2006.7/31)
市内では水田の畦で稀に見られるが、いずれも強い刈り込みに遭っており、開花が見られないことも多い。
1年性の草本で、個体数も少ないため開花しないと次世代に種を繋ぐことができず、市内では絶滅寸前であると考えられる。

他地域での生育環境と生態
Fig.11 水田中の減反地に生育するタウコギ。(兵庫県三田市・水田 2008.9/28)
タウコギが生育する水田は自然度が高く、多くの水田雑草が観察できる。
この水田の減反部分ではオモダカ、コナギ、イボクサ、イヌホタルイ、クログワイ、ハリイ、エゾノサヤヌカグサ、イヌビユ、コウガイゼキショウ、
イグサ、アゼナ、キカシグサ、キクモ、アメリカセンダングサ、ヤナギタデ、ボントクタデ、クサネムなどの一般的な水田雑草に加え、
ミズマツバ、シソクサ、アブノメなどの稀少種が生育していた。

Fig.12 休耕田に群生するタウコギ。(兵庫県香美町・休耕田 2009.10/10)
タウコギは兵庫県では中〜北部にかけての水田の縁や休耕田でよく見かける。
休耕田ではイヌビエ、メヒシバなどとともに群生することが多い。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北村四郎, 1981. キク科センダングサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.175〜177. pls.147〜148. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004 センダングサ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.64〜66. pls.21. 保育社
大場達之. 2001. センダングサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1410〜1413. 神奈川県立生命の星・地球博物館
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. センダングサ属. 『日本帰化植物写真図鑑』 326〜332. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. タウコギ. 『六甲山地の植物誌』 202. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. トウコギ. 『近畿地方植物誌』 19. 大阪自然史センター
小山博滋・黒崎史平・高橋晃 2007. タウコギ. 兵庫県産維管束植物8 キク科センダングサ属. 人と自然17:154. 兵庫県立・人と自然の博物館
三浦励一・細谷誠・伊藤操子. 2007. 種子散布のための棘を失ったタウコギの変異型. 雑草研究52:130-136. 日本雑草学会
松岡成久・丸岡道行. 2010. 千種町山間部の水田に見られた水田雑草. 兵庫県植物誌研究会会報 82:4

最終更新日:24th.Nov.2011

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