トラノハナヒゲ	Rhynchospora brownii 　Roem. & Schult.	カヤツリグサ科 ミカヅキグサ属
湿生植物 兵庫県RDB Bランク種

Fig.1　（淡路島・湿った草地　2011.8/8）

Fig.2　（兵庫県姫路市・溜池畔の湿地　2015.8/6） 沿海地の日当たり良い湿地の周辺部、湿った草地などに生育する多年草。 ややまばらに叢生し、高さ50〜100cmになり、数節がある。葉は幅2〜3mm、やや硬い。 分花序は2〜3個、多少離れてつき、密に枝分かれした散房状、多数の小穂をつける。 小穂は楕円形、長さ4〜5mm、少数の鱗片がつき、そのうち1〜2個が花をつけ、濃褐色。 鱗片は卵形、長さ2.5〜4.5mm、濃褐色、鋭頭でやや長い芒を持つ。 痩果は倒卵形、長さ約2mm、表面に横紋状の模様がある。柱基は円錐形、長さは痩果の1/2。柱頭は2岐する。 刺針状花被片は6〜7本、痩果と同長またはやや長いかやや短く、細く上向きにざらつくがルーペではほとんど平滑に見える。 近似種　：　イヌノハナヒゲ、 オオイヌノハナヒゲ、 コイヌノハナヒゲ、 イトイヌノハナヒゲ ■分布：本州（愛知県以西）、四国、九州 ・ 南アジア ■生育環境：沿海地の日当たり良い湿地の周辺部、湿った草地など。 ■果実期：8〜10月 ■西宮市内での分布：市内では中部で記録がある。

↑Fig.3　全草標本。（淡路島・湿った草地　2011.8/8） 　 葉は花茎より短く、硬い。分花序は2〜3個がやや離れてつく。

↑Fig.4　分花序。（淡路島・湿った草地　2011.8/8） 　 分花序は密に枝分かれして、多数の小穂をつける。

↑Fig.5　茎頂の花序の拡大。（淡路島・湿った草地　2011.8/8）

↑Fig.6　多数の小穂。（淡路島・湿った草地　2011.8/8） 　 小穂は楕円形、長さ4〜5mm、少数の鱗片がつき、そのうち1〜2個が花をつけ、濃褐色。 　 鱗片は卵形、長さ2.5〜4.5mm、濃褐色、鋭頭でやや長い芒を持つ。

↑Fig.7　痩果。（淡路島・湿った草地　2011.8/8） 　 痩果は倒卵形、長さ約2mm、表面に横紋状の模様がある。柱基は円錐形、長さは痩果の1/2。 　 刺針状花被片は6〜7本、痩果と同長またはやや長いかやや短い。

↑Fig.8　痩果。（淡路島・湿った草地　2011.8/8） 　 刺針状花被片には上向きの小刺があってざらつく。

↑Fig.9　開花中の花序。（淡路島・湿った草地　2011.8/8）

↑Fig.10　結実期の花序。（兵庫県姫路市・農道脇　2013.8/1） 　 痩果が熟すころ、花序は下垂する。長い花序枝もこの頃になるとよく目立つ。 　 画像は雨上がり直後で、花序は濡れている。

西宮市内での生育環境と生態

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他地域での生育環境と生態

Fig.11　草地土手の下部に生育するトラノハナヒゲ（中央）。（淡路島・湿った草地　2011.8/8） 棚田最上部の休耕地脇の斜面下部が粘土質の滞水しやすい土壌となっており、そこに数株が生育していた。 同所的にチガヤ、メリケンカルカヤ、ヤマイ、アリノトウグサ、ヤハズソウ、ヒメオトギリ、カリマタガヤらしきものが生育していた。 トラノハナヒゲは斜面の上方に続くチガヤ群落中にも点在していた。

Fig.12　車道脇の土手に生育するトラノハナヒゲ（中央）。（兵庫県姫路市・土手　2013.8/1） 海岸近くの車道脇の粘土質の土手に群生するノグサに混じってトラノハナヒゲが点在していた。 土手には湧水のしみ出しも見られ、その下方にシバ、ノギラン、ニガナ、アリノトウグサ、イシモチソウなどが生育している。

【引用、および参考文献】（『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。） 大井次三郎, 1982　カヤツリグサ科ミカヅキグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 （編） 　　　　　　　『日本の野生植物 草本�T 単子葉類』　p.170〜171. pls.152〜153.　平凡社 小山鐡夫, 2004　カヤツリグサ科イヌノハナヒゲ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編（3） 単子葉類』　p.251〜254. pls.63〜64.　保育社 星野卓二・正木智美, 2003　トラノハナヒゲ. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜（�U）』　200,201.　山陽新聞社 星野卓二・正木智美, 2011　ミカヅキグサ属. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『日本カヤツリグサ科植物図譜』　540〜555.　平凡社 村田源. 2004. トラノハナヒゲ. 『近畿地方植物誌』 165.　大阪自然史センター 小林禧樹. 1992. トラノハナヒゲ. 『淡路島の植物誌』 55,197.　自然環境研究所 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. トラノハナヒゲ. 『六甲山地の植物誌』 251.　（財）神戸市公園緑化協会 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. トラノハナヒゲ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:174. 　　　　　　　兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日：23rd.Jul.2016

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