コイヌノハナヒゲ | Rhynchospora fujiiana Makino | カヤツリグサ科 ミカヅキグサ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・溜池畔 2007.10/25) |
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Fig.2 (兵庫県三田市・湿地 2013.8/23) 日当たりの良い貧栄養な湿地や溜池畔、湧水地に生育する多年草。 まばらに叢生し、匍匐枝はない。茎は細く、高さ30〜80cm、上部は少しざらつき、果実期には茎の中ほどから先が垂れることが多い。 葉は糸状、やや硬く、幅1〜1.5mm、茎よりも短く、内側に巻き、茎の基部に集まる。 花序は散房状で3〜5個あって、まばらに付く。 小穂は長さ5〜6mm、披針形、濃褐色、少数の鱗片を付け、鱗片内に1小花を付ける。 鱗片は卵形、長さ4〜5mm、褐色、鋭頭。痩果は狭倒卵形、長さ約2mm。柱基は円錐形。 刺針状花被片は6個で、痩果よりも長く、細く直立し、平滑またはわずかにざらつく。雌蕊柱頭は2岐する。 刺針状花被片に下向きの小刺がでるものは品種サカゲコイヌノハナヒゲ(f. retrososcabrata)とされ、 上向きの小刺のでるものは品種ミカワコイヌノハナヒゲ(f. scabriseta)とされる。 ミカヅキグサ属の近縁種には酷似するものが多い。詳しくはイヌノハナヒゲの項ご覧下さい。 近似種 : イヌノハナヒゲ、 ミカヅキグサ、 イトイヌノハナヒゲ、 トラノハナヒゲ ■分布:北海道、本州、九州 ・ ヨーロッパ、アジア、北アメリカ北東部 ■生育環境:高層湿原(本州中部以北)、貧栄養な湿地(本州の東海以西)など。 ■果実期:8〜9月 ■西宮市内での分布:崩壊地の小湿地や貧栄養な湿地で見られるが、イヌノハナヒゲよりは自生地、個体数ともに少ない。 |
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↑Fig.3 花序。(西宮市・湿地 2007.10/18) 花序(分花序)はふつう3〜5個がまばらに付く。 |
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↑Fig.4 分花序は数個の小穂からなる。(西宮市・湿地 2007.10/18) 小穂は長さ5〜6mm、少数の鱗片が付き、鱗片の内側に1両性小花を付けるが、下部の鱗片内には花がない。 鱗片の間からは2岐する雌蕊柱頭と花糸が出ている。 |
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↑Fig.5 痩果。(西宮市・湿地 2007.10/18) 痩果は倒卵形で逆徳利形、長さ約2mm。柱基は細長い円錐形。 刺針状花被片は6個、痩果と同長または長く、細くてほぼ平滑。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.6 シロイヌノヒゲ群落内に生育するコイヌノハナヒゲ。(西宮市・湿地 2006.9/22) シロイヌノヒゲ群落が顕著な貧栄養な湿地に同属のミカヅキグサ、イヌノハナヒゲとともに生育している。 ここではムラサキミミカキグサ、ホザキノミミカキグサ、ミミカキグサ、ウメバチソウ、コバノトンボソウ、トキソウなどの稀少な湿生植物が見られる。 |
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Fig.7 崩壊地の湧水地に生育するコイヌノハナヒゲ。(西宮市・崩壊地 2007.8/19) 常に崩壊が進むような花崗岩の風化が激しい場所では、樹木などの侵入が難しく、崩壊地の斜面下部の湧水がしみ出す場所に小さな湿地ができる。 このような場所ではトダシバ、アリノトウグサなど荒地にいち早く定着する草本に混じって、イヌノハナヒゲ、コイヌノハナヒゲ、モウセンゴケ、 ノギラン、ソクシンランなどが小群落をつくる。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大井次三郎, 1982. カヤツリグサ科ミカヅキグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.170〜171. pls.152〜153. 平凡社 小山鐡夫, 2004 カヤツリグサ科イヌノハナヒゲ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.251〜254. pl.63. 保育社 牧野富太郎, 1961 コイヌノハナヒゲ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 775. 北隆館 星野卓二・正木智美, 2003. ミカヅキグサ属. 星野卓二・正木智美・西本眞理子『岡山県カヤツリグサ科植物図譜(U)』 194〜207. 山陽新聞社 谷城勝弘, 2007. ミカヅキグサ属. 『カヤツリグサ科入門図鑑』 119〜122. 全国農村教育協会 勝山輝男・堀内洋. 2001. カヤツリグサ科ミカヅキグサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 440〜441. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. コイヌノハナヒゲ. 『六甲山地の植物誌』 252. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. コイヌノハナヒゲ. 『近畿地方植物誌』 166. 大阪自然史センター 黒崎史平・松岡成久・高橋晃・高野温子・山本伸子・芳澤俊之 2009. コイヌノハナヒゲ. 兵庫県産維管束植物11 カヤツリグサ科. 人と自然20:175. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:27th.Sept.2013 |