アイトキワトラノオ Asplenium pekinense × A. sarelii
  里山・低山・着生シダ・雑種 チャセンシダ科 チャセンシダ属
Fig.1 (西宮市・低山道端の石垣 2015.1/27)

トキワトラノオ(A. pekinense)と コバノヒノキシダ(A. sarelii)の推定種間雑種で、両種の中間的な形質を持ち常緑性。
成熟した草体はコバノヒノキシダの大型個体並みになり、長さ25cmまで。
葉身上部はコバノヒノキシダを思わせ、葉身基部はトキワトラノオを思わせる形状のものが多い。
鱗片の基部にはトキワトラノオの形質を継ぎ褐色の毛がある。胞子は不稔。

トキワトラノオ(A. pekinense)は鱗片の基部に毛を密生し、最下羽片は短く花火状に開き、葉面にやや光沢がある。
コバノヒノキシダ(A. sarelii)は鱗片基部に毛はなく、羽片には短柄があり、葉面に光沢はない。
アオガネシダ(A. wilfordii)は羽軸の向軸側に溝があり、中軸の背軸側や葉柄は黒褐色で光沢があり、葉質は硬い。
イワトラノオ(A. tenuicaule)は羽軸の向軸側に溝があり、葉質は薄い草質。
近縁種 :  トキワトラノオコバノヒノキシダイワトラノオ、 アオガネシダ

■分布:本州(静岡県以西)、四国、九州
■生育環境:住宅地〜低山地の日向〜半日陰の石垣や岩上で、トキワトラノオとコバノヒノキシダの混生地。

Fig.2 全草標本。(西宮市・低山道端の石垣 2015.1/27)
  成熟した草体はコバノヒノキシダの大型個体並みになり、長さ25cmまで。
  葉身上部はコバノヒノキシダを思わせ、葉身基部はトキワトラノオを思わせる形状のものが多い。

Fig.3 葉柄基部の鱗片。(西宮市・低山道端の石垣 2015.1/27)
  トキワトラノオの形質を継いで、背面基部に褐色の毛がある。

Fig.4 裂片裏面。(西宮市・低山道端の石垣 2015.1/27)
  胞子嚢群(ソーラス)は線形〜長楕円形、胞子不稔のため、包膜はあまり開かない。

Fig.5 ソーラスの拡大。(西宮市・低山道端の石垣 2015.1/27)
  胞子嚢内部に胞子は形成されておらず、扁平な円盤状となって弾けない。

Fig.6 3種の比較。(西宮市・低山道端の石垣 2015.1/27)
  左から順にコバノヒノキシダ、アイトキワトラノオ、トキワトラノオ。
  このように並べてみると違いは判るが、現地ではなかなかそうはいかず、ルーペによるソーラスの観察は必須である。

生育環境と生態
Fig.7 石垣に生育するアイトキワトラノオ。(西宮市・低山道端の石垣 2015.1/27)
西宮市内ではアイトキワトラノオは比較的よく見られ、ここでは低山の河川に面した道端の古い石垣に両親種と混生している。
古い石垣で、その上には小湿地があるため着生している植物は多く、ウツギ、ユキヤナギ(逸出)、ショウジョウスゲ、ノゲヌカスゲ、
ヒカゲスゲ、テリハヤブソテツ、イノモトソウ、ヒメイタチシダ、ホウライシダ(逸出)、トウゴクシダ、イヌドクサ、ススキ、
メリケンカルカヤ、カワラヨモギ、サワヒヨドリ、リンドウなどが見られた。


最終更新日:15th.Feb.2015

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