オオタチツボスミレ | Viola violacea Makino | ||
里山・林縁・林床の植物 | スミレ科 スミレ属 |
Fig.1 (兵庫県香美町・疎林の林床 2008.4/16) 主に多雪地域の林縁や明るい林床に生育する多年草。 根茎は長く横たわり、木化して肥厚する。大型のスミレで、茎は数本叢生し、果実期には高さ40cmになる。 葉身は円心形、長さ3〜5cm、下部の葉は鈍頭、上部の葉は急にとがり、低い鋸歯があり、基部は心形。 冬期は根生葉が雪下で越冬していることが多い。茎下部の托葉は羽状に深裂するが、上部では切れ込みは少なくなり、切れ込みも浅い。 花は根生せず、ふつう茎上に腋生し、淡紫色、やや大型である。萼片は披針形。花弁は長さ15〜18mm、側弁にはふつう毛がない。 距は白色または淡色で、長さ6〜8mm、左右から扁平で、幅が広い。 白花品はシロバナオオタチツボスミレ(f. alba)とされる(Fig.14参照)。 また淡紅色のものはモモイロオオタチツボスミレ(f. rosea)とされる。 近縁種 : タチツボスミレ、 ナガバノタチツボスミレ、 ニオイタチツボスミレ、 ツルタチツボスミレ、 ツヤスミレ、 テリハタチツボスミレ ■分布:南千島、北海道、本州(主に日本海側)、九州北部 ・ ウツリョウ島、樺太 ■生育環境:多雪地域の林縁や明るい林床など。 ■花期:4〜5月 |
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↑Fig.2 地上部標本。(兵庫県三田市・林縁 2011.4/10) 地上茎は叢生する。花茎は根生せず、地上茎の葉腋から出る。 (標本は新産地報告のために採集したものです。) |
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↑Fig.3 托葉。(兵庫県三田市・林縁 2011.4/10) 上段は茎上部の托葉、下段は茎下部の托葉。 托葉の切れ込みは下方のものほど数が多く、また切れ込みも深い。 最上部のもの(上段左)にはほとんど切れ込みがなく、わずかに鋸歯があるように見える。 |
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↑Fig.4 茎下部の葉。(兵庫県丹波市・林縁 2011.4/17) 葉身は円心形、下部の葉は鈍頭、葉縁は波打つことが多くて低い鋸歯があり、基部は心形、葉脈はくぼんで目立つ。 |
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↑Fig.5 開花初期の草体。(兵庫県篠山市・畑地 2011.4/15) まだ葉が完全に開いていないものがほとんどで、地上茎もあまり伸びておらず、花の大きさと比較するとアンバランスな印象を受ける。 |
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↑Fig.6 向陽地で開花した個体。(兵庫県三田市・路傍草地 2011.4/10) オオタチツボスミレは半日陰を好むが、向陽地に生育することもある。 向陽地のものは茎の節間は短く、あまり立ち上がらず、花茎の長く伸びない。 |
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↑Fig.7 半日陰地で開花した個体。(兵庫県三田市・植林地 2011.4/10) 半日陰環境では地上茎の節間も伸び、花茎も長く、オオタチツボスミレの特徴がよく出るようになる。 |
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↑Fig.8 花の中心部。(兵庫県三田市・植林地 2011.4/10) タチツボスミレと同様、側弁は無毛で、花柱は細く、先端は下を向く。 下弁の紫条は側条を生じて網目状となる点が、タチツボスミレと異なる。 |
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↑Fig.9 距と萼片。(兵庫県三田市・植林地 2011.4/10) 距は白色または淡色で、長さ6〜8mm、左右から扁平で、幅が広い。萼片は披針形。 |
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↑Fig.10 閉鎖花をつけたオオタチツボスミレ。(兵庫県丹波市・農道脇 2009.4/13) 開花期の終わった初夏〜秋にかけて、立ち上がった茎の葉腋に沢山の閉鎖花をつける。 |
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↑Fig.11 初夏の頃の托葉。(兵庫県丹波市・林縁 2010.6/3) 全く切れ込みがなく、両縁に小さな刺状の突起が1対ずつ見られた。 |
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↑Fig.12 秋に不時開花した個体。(兵庫県養父市・草地 2015.10/30) |
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↑Fig.13 晩秋の草体。(兵庫県三田市・林縁 2011.11/17) 葉脈の凹みは顕著で、葉縁は波打つ。 |
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↑Fig.14 シロバナオオタチツボスミレ。(兵庫県香美町・林縁 2014.5/14) 距まで白く、紫条の出ない白花品はシロバナオオタチツボスミレ(f. alba)とされる。 |
生育環境と生態 |
Fig.15 水路脇に生育するオオタチツボスミレ。(兵庫県篠山市・水路脇 2009.4/13) 一年中流水の絶えない苔むした水路のコンクリートの隙間に根をおろして生育している。 オオタチツボスミレは冬期に湿潤度の高い多雪地域を中心に分布している。 自生地は比較的低緯度だが、山塊の北面であることと、水の絶えない水路のおかげだろう。 |
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Fig.16 林縁に群生するオオタチツボスミレ。(兵庫県篠山市・林縁 2011.4/28) 用水路と社寺林の間の林縁草地にオオタチツボスミレが群生していた。 草地にはヤエムグラ、ヒメヤブラン、ヒガンバナ、アカネ、ヤブヘビイチゴ、ダイコンソウ、トウバナなどが生育していた。 |