ヒダボタン | Chrysosplenium nagasei Wakab. et H.Ohba | ||
山地・渓流の植物 兵庫県RDB 要調査種 |
ユキノシタ科 ネコノメソウ属 |
Fig.1 (兵庫県宍粟市・渓流畔 2013.5/8) 福井県〜岡山県の日本海側の山地の谷間の湿地や渓流畔に生育する多年草。 根生葉は開花時にも残る。花後、走出枝を伸ばし、先端に2〜3対の葉を相接してつける。 花茎は高さ10cm程度、ほぼ無毛、無葉かまたは1対の葉を対生する。 葉は緑色または赤紫色を帯び、有柄、脈は顕著で、円形〜卵形〜楕円形、基部は切形〜広いくさび形、鈍鋸歯がある。 下部の苞葉は葉と同形、上部の苞葉は広楕円形〜卵形で黄色。萼裂片は直立し、淡黄色〜淡褐色、楕円形、鈍頭。 雄蕊は8個で萼裂片とほぼ同長。葯は赤色〜褐色。花柱は2個で萼より短い。2個の心皮は大きさが異なる。 以下のものはヒダボタンに似て、萼片が直立するタイプのもの。兵庫県のものはサンインネコノメに酷似する。 ボタンネコノメソウ(C. kiotoense)…萼は帯褐色。葯は赤色で萼の外に飛び出さない。分布:本州(岐阜県以西の日本海側)。 キンシベボタンネコノメソウ(C. kiotoense f. xanthandrum)…萼は黄緑色。葯は黄色。雄蕊は萼の2/3長で萼から出ない。分布:岐阜県以西の日本海側。 ヒメヒダボタン(C. nagasei var.luteoflorum)…萼は黄緑色。葯は黄色。雄蕊は萼とほぼ同長。雄蕊の先端は次第に細くなる。分布:岐阜、滋賀。 アカヒダボタン(C. nagasei var.porphyranthes)…萼は紫色を帯びる。葯は暗赤色。雄蕊は萼とほぼ同長。雄蕊の先端は次第に細くなる。 サンインネコノメ(C. fauriei f.ferruginiflorum)…萼は淡橙色または淡茶褐色。葯は濃橙色から暗赤褐色で、萼から飛び出す。分布:山陰(島根〜京都)。 ホクリクネコノメ(C. fauriei)…萼は黄緑色。葯は暗赤色で萼の外に飛び出す。分布:新潟〜島根の日本海側。 近縁種 : サンインネコノメ、 ボタンネコノメソウ、 キンシベボタンネコノメソウ、 ヒメヒダボタン、 アカヒダボタン、 ホクリクネコノメ ■分布:本州(岐阜県以西の日本海側) ■生育環境:渓流沿いや谷間の湿地。 ■花期:4〜5月 |
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↑Fig.2 根生葉・茎・茎葉・走出枝。(兵庫県養父市・渓流畔 2013.5/8) 根生葉は開花時にも残り、円形〜長楕円形で、無柄または短い柄がある。茎は赤味を帯び、ほぼ無毛。 茎葉は緑色または赤紫色を帯び、有柄、脈は顕著で、卵形〜楕円形、基部は切形〜広いくさび形、鈍鋸歯がある。 走出枝は花茎とともに基部から出て、花後に伸長する。 |
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↑Fig.3 花茎。(兵庫県宍粟市・渓流畔 2013.5/8) 花茎は高さ10cm程度、ほぼ無毛、無葉かまたは1対の葉を対生し、集散花序を頂生する。 |
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↑Fig.4 花序。(兵庫県宍粟市・渓流畔 2013.5/8) 下部の苞葉は葉と同形で下半部が黄色を帯び、、上部の苞葉は広楕円形〜卵形で黄色。 開きかけた花が見えるが、花柱は短く、萼裂片の間から飛び出たりはしない。 |
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↑Fig.5 花。(兵庫県宍粟市・渓流畔 2013.5/8) 萼裂片は直立し、淡黄色〜淡褐色、楕円形、鈍頭。雄蕊は8個で萼裂片とほぼ同長。葯は赤色〜褐色。 花柱は2個で萼より短く、飛び出さない。 |
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↑Fig.6 走出枝のみを伸ばす個体。(兵庫県宍粟市・渓流畔 2013.5/8) 群生するヒダボタンの中に、花茎を上げずに、走出枝のみを四方に伸ばす個体が多数見られた。 生育過程の間に、花茎を上げずに栄養繁殖だけを行う年があるのだろうか? |
生育環境と生態 |
Fig.7 渓流畔で群生するヒダボタン。(兵庫県宍粟市・渓流畔 2013.5/8) 渓流畔の転石間の腐植土の溜まった場所にヒダボタンが群生していた。 非常に生育条件がよいためか、画像中央には主茎のほか、側茎を3本も上げた個体が見られる。 |
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Fig.8 チシマネコノメソウと混生するヒダボタン。(兵庫県養父市・渓流畔 2013.5/8) 渓流畔の転石間でチシマネコノメソウとともに混生しているのが見られた。 周辺にはコチャルメルソウ、ヤマブキショウマ、オククルマムグラ、オオカニコウモリ、ハバビロスゲ、ミタマカンスゲ、ナルコスゲ、 サカゲイノデ、ジュウモンジシダなどが生育している。 |
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最終更新日:20th.May.2014 |