ボタンネコノメソウ Chrysosplenium kiotoense  Ohwi
  山地・渓流の植物 ユキノシタ科 ネコノメソウ属
Fig.1 (兵庫県丹波市・渓流畔 2009.4/23)

Fig.2 (兵庫県丹波市・植林地の林床 2014.4/3)

岐阜県以西の山地の谷間の湿地や渓流畔に生育する多年草。
根生葉は開花時にも残る。花後、走出枝を伸ばし、先端に2〜3対の葉を相接してつける。
花茎は高さ10cm程度、ほぼ無毛、多くは1対の葉を対生する。
葉は緑色または赤紫色を帯び、有柄、脈は顕著で、円形〜卵形〜楕円形、基部は切形〜広いくさび形、鈍鋸歯がある。
下部の苞葉は葉と同形、上部の苞葉は広楕円形〜卵形で黄色。萼裂片は直立し、暗赤褐色〜淡褐色、楕円形、鈍頭。
雄蕊は8個で、長さ1.5〜2mmで、萼裂片よりも短く、花柱も長さ0.8〜1mmで萼裂片より短くなる。
葯は暗紅紫色。2個の心皮は大きさは異なる。

メモ:兵庫県内陸部のものは苞葉があまり黄色を帯びない。
以下のものはボタンネコノメソウに似て、萼片が直立するタイプのもの。
キンシベボタンネコノメソウC. kiotoense f.xanthandrum)…萼は淡緑色〜淡黄色。葯は黄色で萼の外に飛び出さない。分布:本州(岐阜県以西の日本海側)。
ヒダボタンC. nagasei)…萼は黄緑色。葯は赤色。雄蕊は萼とほぼ同長。雄蕊の先端は次第に細くなる。分布:岐阜、福井、滋賀。
ヒメヒダボタンC. nagasei var.luteoflorum)…萼は黄緑色。葯は黄色。雄蕊は萼とほぼ同長。雄蕊の先端は次第に細くなる。分布:岐阜、滋賀。
アカヒダボタンC. nagasei var.porphyranthes)…萼は紫色を帯びる。葯は暗赤色。雄蕊は萼とほぼ同長。雄蕊の先端は次第に細くなる。
サンインネコノメC. fauriei f.ferruginiflorum)…萼は淡橙色または淡茶褐色。葯は濃橙色から暗赤褐色で、萼から飛び出す。分布:山陰(島根〜京都)。
ホクリクネコノメC. fauriei)…萼は黄緑色。葯は暗赤色で萼の外に飛び出す。分布:新潟〜島根の日本海側。
イワボタンC. macrostemon)…萼は斜開または直立し淡緑色〜黄緑色。葯は黄色か帯赤褐色で萼から飛び出す。分布:関東以西の太平洋側、四国、九州。
近縁種 : キンシベボタンネコノメソウヒダボタン、 ヒメヒダボタン、 アカヒダボタン、 サンインネコノメ、 ホクリクネコノメ

■分布:本州(岐阜県以西の日本海側)
■生育環境:渓流沿いや谷間の湿地。
■花期:4〜5月

Fig.3 根生葉。(兵庫県丹波市・渓流畔 2014.4/3)
  根生葉は花時にも残り、円形〜広楕円形で、茎葉よりもかなり大きく、ほぼ無柄かごく短い柄がある。

Fig.4 茎・茎葉・走出枝など。(兵庫県丹波市・渓流畔 2014.4/3)
  茎(花茎)は高さ10cm程度、ほぼ無毛、多くは1対の葉を対生する。
  茎葉は緑色または赤紫色を帯び、有柄、脈は顕著で、円形〜卵形〜楕円形、基部は切形〜広いくさび形、鈍鋸歯がある。
  走出枝は花茎とともに伸び始めるが、花後にも伸び、先端に2〜3対の円形〜長楕円形の葉を相接してつける。

Fig.5 集散花序。(兵庫県丹波市・渓流畔 2014.4/3)
  花茎は集散花序を頂生する。下部の苞葉は茎葉と同形、上部の苞葉は広楕円形〜卵形。
  下部の苞葉の下半と上部の苞葉はふつう黄色となるが、丹波地方のものは黄色とならない。

Fig.6 花。(兵庫県丹波市・渓流畔 2014.4/3)
  萼裂片は直立し、暗赤褐色〜淡褐色、楕円形、鈍頭。
  雄蕊は8個で、長さ1.5〜2mmで、萼裂片よりも短く、葯は暗紅紫色。
  花柱も長さ0.8〜1mmで萼裂片より短く、ともに萼から飛び出さない。

Fig.7 果実期。(兵庫県丹波市・渓流畔 2014.4/26)
  2個の心皮のうち、外側のものは大きい。花柱はくちばし状となって宿存する。
  成熟すると杯状に開いて、種子は雨滴によって散布される。

Fig.8 種子。(兵庫県丹波市・渓流畔 2014.4/26)
  種子は広楕円形で、長さ0.8〜0.9mm、隆条の上に突起が並ぶ。

Fig.9 種子の拡大。(兵庫県丹波市・渓流畔 2014.4/26)
  隆条の上に並ぶ突起は、あまり長くはない。隆条間は平滑ではなく、微小な突起が散在している。

Fig.10 夏期の草体。(岡山県真庭市・林道脇 2013.8/3)
  走出枝は伸びた先で接地して発根し、走出枝先端の数枚の葉が根生葉となる。
  ここでは多くの走出枝先端から発根が見られ、走出枝の枝は細くなって枯れつつあるものが多かった。
  画像では上方にまだしっかりとした養分を送っていると思われる枝があり、下方には痩せつつある枝が見られる。

生育環境と生態
Fig.11 植林地林床に生育するボタンネコノメソウ。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2014.4/3)
渓流に面したスギ植林地の林床の、チョウチンゴケなどの蘚苔類に覆われた多湿な場所に点在していた。
シカの食害が激しい地域で、忌避植物であるオオバノハチジョウシダも食害され、高茎草本はヤマトリカブトが見られる程度である。
周辺にはニッコウネコノメ、ネコノメソウ、ミヤマチドメ、ノミノフスマ(山地型)、小型のオオバタネツケバナ、サワハコベなどが生育している。



最終更新日:18th.May.2013

<<<戻る TOPページ