サンインネコノメ Chrysosplenium fauriae  Franch.
   f. ferruginiflorum  Wakab. et H. Ohba
  山地・渓流の植物 ユキノシタ科 ネコノメソウ属
Fig.1 (兵庫県香美町・渓流畔 2008.4/27)

Fig.2 (兵庫県宍粟市・渓流畔 2013.5/8)

ホクリクネコノメソウの1品種。
山陰(島根〜京都)の山地の谷間の湿地に生育する多年草。
根生葉は開花時にも残り、ほぼ円形で短い葉柄があり、幅15〜30mm、脈は白味を帯びて目立つ。
花茎は直立し高さ5〜20cm、ふつう紅色を帯びほとんど毛はない。
苞葉は卵形〜長楕円形、長さ1〜2cm、幅5〜10mm、最頂部の花の苞葉はほとんど黄色、下部の花の苞葉は下半部が黄色。
花には花弁はなく、萼片は直立し淡橙色または淡茶褐色。
雄蕊は8個で萼より飛び出し、葯は濃橙色(未成熟期)から暗赤褐色(成熟期)となる。花柱は2個。
種子の突起は乳頭状となる。

この仲間には非常に似たものが多く、花の細部を調べることによって区別する。
以下のものはサンインネコノメに似て、萼片が直立するタイプのもの。
ホクリクネコノメソウC. fauriei)…萼は黄緑色。葯は暗赤色で萼の外に飛び出す。分布:新潟〜島根の日本海側。
ボタンネコノメソウC. kiotoense)…萼は帯褐色。葯は赤色で萼の外に飛び出さない。分布:本州(岐阜県以西の日本海側)。
キンシベボタンネコノメソウC. kiotense f.xanthandrum )…萼は黄緑色。葯は黄色で萼の外に飛び出さない。分布:本州(岐阜県以西の日本海側)。
ヒダボタンC. nagasei)…萼は黄緑色。葯は赤色。雄蕊は萼とほぼ同長。雄蕊の先端は次第に細くなる。分布:岐阜、福井、滋賀。
ヒメヒダボタンC. nagasei var.luteoflorum)…萼は黄緑色。葯は黄色。雄蕊は萼とほぼ同長。雄蕊の先端は次第に細くなる。分布:岐阜、滋賀。
アカヒダボタンC. nagasei var.porphyranthes)…萼は紫色を帯びる。葯は暗赤色。雄蕊は萼とほぼ同長。雄蕊の先端は次第に細くなる。
                                分布:本州(中部地方西部〜近畿地方東部)。
近縁種 : キンシベボタンネコノメソウボタンネコノメソウ、 ホクリクネコノメソウ、 ヒダボタン、 ヒメヒダボタン、 アカヒダボタン

■分布:本州(島根〜京都)
■生育環境:日本海側の渓流沿いや谷間の湿地。
■花期:4〜5月

Fig.3 開花しはじめた花。(兵庫県香美町・渓流畔 2014.5/14)
  花柱は萼裂片よりも長いため、開き始めの萼から2個の花柱が飛び出す。

Fig.4 花序。(兵庫県香美町・渓流畔 2008.4/27)
  花茎は頂部で2叉した後、外側に苞葉を付けたのち3岐。中央の茎は花茎で頂端に花をつけ、外側の2本は苞葉を付けた後、
  更に1回、同様に3岐する。
  苞葉は上部のものは卵形で黄色、下方につくものは長卵形〜楕円形で基部から下半が黄色を帯びる。

Fig.5 花の拡大。(兵庫県香美町・渓流畔 2008.4/27)
  萼片は直立し淡橙色または淡茶褐色。
  雄蕊の花糸は萼片よりも長く、葯は萼から飛び出し暗赤褐色。

Fig.6 花茎。(兵庫県香美町・渓流畔 2008.4/27)
  花茎は紅色を帯びほとんど無毛。
  花茎につく葉は対生し、菱状卵形、上半部には鋸歯があり、基部はくさび形となり葉柄へと流れる。無毛。

Fig.7 果実を形成するサンインネコノメ。(兵庫県香美町・渓流畔 2008.4/27)
  果実は扁平な卵形で、2個並んだ心皮はほぼ同形、先端は急にすぼまり花柱が針状に突出する。

Fig.8 種子。(兵庫県香美町・渓流畔 2014.5/14)
  種子は広楕円形、長さ0.8〜0.9mm、光沢のある茶褐色で、隆条の上に乳頭状の突起が並ぶ。

Fig.9 種子の拡大。(兵庫県香美町・渓流畔 2014.5/14)
  突起は基部が幅広く、密に並び、先端は乳頭状で、その長さは長い。

Fig.10 花茎下部からは多数の走出枝をだす。(兵庫県香美町・渓流畔 2008.4/27)

生育環境と生態
Fig.11 高地の棚田の水路脇で群生するサンインネコノメ。(兵庫県香美町・棚田の水路脇 2008.4/27)
用水路周辺にはフキやスギナ、シロツメクサといった農耕地によく見られる種とともに、ワサビ、オタカラコウ、コチャルメルソウ、
オオバタネツケバナ、コンロンソウ、ミヤマキケマン、スミレサイシンなどが生育している。

Fig.12 渓流畔の腐植土上で生育するサンインネコノメ。(兵庫県香美町・渓流畔 2014.5/14)
春遅くまで雪の残る急峻な渓流畔の腐植土上でサンインネコノメが群生していた。
河畔ではまだあまり草本が萌芽しておらず、開花中のカンスゲやミヤマカンスゲ、サワハコベなどが生育している。
急峻な斜面ではサンカヨウの群落がつぼみをつけて萌芽していた。

Fig.13 林道脇の濡れた岩上で生育するサンインネコノメ。(兵庫県宍粟市・濡れた岩上 2013.5/8)
湧水によって濡れている岩上でサンインネコノメが群生していた。
ここではミヤマヤブニンジンとともに生育しているのが見られた。



最終更新日:18th.May.2013

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