ヒメムカゴシダ | Monachosorum arakii Tagawa | ||
山地・林床・岩上のシダ 環境省絶滅危惧TB類(EN)・兵庫県RDB Aランク種 |
コバノイシカグマ科 オオフジシダ属 |
Fig.1 (兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.10/20) 山地の岩上や林床に群生して生育する常緑性シダで、産地は極限される。 根茎は短く斜上し、微細な毛をもつ。葉柄は上部はわら色だが、下半分は褐色、細毛がある。 葉身は卵状披針形〜三角状卵形、鋭尖頭、長さ50〜70cm、幅30〜40cm、薄い草質、3回羽状複生。 葉柄、中軸、羽軸は向軸側(表面)に溝があり、互いに流れ込み、中軸の中〜上部に大きな無性芽がつく。 羽片は広披針形、鋭尖頭から尾状に伸び、基部は切形で短い柄がある。 小羽片は披針形、鋭尖頭、基部は切形で無柄、最下小羽片は後ろ側(下先)につく。二次小羽片は長楕円形、鈍頭。 ソーラスは裂片の辺縁近くにつき、径約0.5mm。染色体数は n=ca.175, 2n=ca.336 で不規則な分裂が観察されている。 オオフジシダ(M. flagellare)は羽片の最下小羽片は前側(上先)につき、無性芽は小さく葉先近くにつく。 近縁種 : オオフジシダ、 フジシダ、 アイフジシダ ■分布:本州(福井県以西)、四国、九州 ■生育環境:山地の岩上や林床など。 |
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↑Fig.2 地上部標本。(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.10/20) 葉身は卵状披針形〜三角状卵形、鋭尖頭、長さ50〜70cm、幅30〜40cm、薄い草質、3回羽状複生。 |
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↑Fig.3 葉柄基部。(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.10/20) 葉柄は下半分は褐色、褐色の細毛があり、とくに基部に多い。 |
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↑Fig.4 羽片。(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.10/20) 羽片は広披針形、鋭尖頭から尾状に伸び、基部は切形で短い柄がある。最下小羽片は後ろ側(下先き)につく。 |
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↑Fig.5 中軸と羽軸にはつながった溝がある。(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.10/20) |
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↑Fig.6 小羽片。(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.10/20) 小羽片は披針形、鋭尖頭、基部は切形で無柄。二次小羽片は長楕円形、鈍頭。 |
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↑Fig.7 ソーラスは裂片の辺縁近くにつく。(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.10/20) |
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↑Fig.8 ソーラスは径約0.5mm、包膜はない。(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.10/20) 自生地では無性芽をつけた春に出た葉にはソーラスが見られず、夏に出た無性芽のない葉にのみソーラスが見られた。 そのため、10月になってもまだ胞子嚢は成熟していない。 |
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↑Fig.9 無性芽。(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.9/14) 中軸の中〜上部の羽軸との交点上側に大きな無性芽がつく。無性芽が出来ている葉にはソーラスが見られなかった。 |
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↑Fig.10 中軸上で成長する無性芽。(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.10/20) この時期の最下小羽片はまだ上先きについており、成熟して小羽片が増えると下先きにつくようだ。 |
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↑Fig.11 ヒメムカゴシダ絡みの雑種?(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.9/14) ヒメムカゴシダとフジシダの混生箇所に見られる、小型の個体。 羽片の最下小羽片は他の小羽片より少し大きく上先きにつき、葉先に小さな無性芽ができており、アイフジシダとの区別は困難である。 |
生育環境と生態 |
Fig.12 林床斜面に群生するヒメムカゴシダ。(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.9/14) チャートの転石が崖錐状に堆積した空中湿度の高い谷筋斜面にある、まばらな植林地の林床に群生していた。 シカの食害のある地域で、ヒメムカゴシダも食害されつつあるがまだ生育状態はかなり良好で、シケチシダやウスヒメワラビは小型のものしか見られない。 この場所のものはネットを張って保護する話が進められており、この日はそのための自生状況の調査だった。 |
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Fig.13 フジシダと混生するヒメムカゴシダ。(兵庫県丹波地方・谷筋の林床 2015.9/14) 自生地域内では一部でフジシダが混生する場所があり、この周辺にFig.11のような雑種を疑うような個体が見られる。 他に斜面のすぐ上の岩場にはヌリトラノオ、カミガモシダ、シシランなどが生育している。 |