フジシダ Monachosorum maximowiczii  (Bak.) Hayata
  山地・林床・岩上のシダ コバノイシカグマ科 オオフジシダ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・谷筋の岩壁 2011.3/31)

Fig.2 (兵庫県篠山市・谷筋の岩上 2015.1/21)

山地の岩上や林床にしばしば群生して生育する常緑性シダ。
根茎は短く斜上し、微細な毛をもつ。葉柄は光沢のある褐色で、もろく、ほとんど無毛、長さ5〜10cm。
葉身は単羽状複生、薄い革質、深緑色、長さ15〜30cm、幅2〜3cm、線状披針形、先端はふつうつる状にながく伸びて芽生する。
羽片は50対前後あり、広披針形から狭長楕円形、幅4〜6mm、鋭頭または鈍頭、基部は前側が切形で耳片があり、後側はくさび形、
無柄、辺縁は深い鈍鋸歯がある。側脈は単条でほぼ平行に並び、裏面脈上には淡黄色の微細な毛がまばらにつく。
胞子嚢群(ソーラス)は小さく、円形、歯片に1個ずつつき、歯片が反転して胞子嚢群を覆うことがあるが、苞膜はない。
近縁種 : オオフジシダヒメムカゴシダアイフジシダ

■分布:本州(福島県・関東地方以西)、四国、九州(南部を除く) ・ 中国、台湾
■生育環境:山地の岩上や林床など。

Fig.3 全草標本。(兵庫県篠山市・谷筋の岩壁 2011.3/31)
  葉身は単羽状複生、薄い革質、深緑色、線状披針形、先端はふつうつる状にながく伸び、羽片は50対前後ある。

Fig.4 基部。(兵庫県篠山市・谷筋の岩壁 2011.3/31)
  根茎は短く斜上し、葉を叢生する。葉柄は光沢のある褐色で、もろくて折れやすく、ほとんど無毛、古い葉柄が残る。

Fig.5 羽片。(兵庫県篠山市・谷筋の岩壁 2011.3/31)
  羽片の基部は前側が切形で耳片があり、後側はくさび形で、無柄。辺縁は深い鈍鋸歯がある。

Fig.6 羽片の脈。(兵庫県篠山市・谷筋の岩壁 2011.3/31)
  羽片の側脈は平行に並び、脈の末端は葉縁に達しない。

Fig.7 羽片の裏面。(兵庫県篠山市・谷筋の岩壁 2011.3/31)
  胞子嚢群(ソーラス)は小さく、歯片の脈の末端に1個ずつつき、苞膜はない。

Fig.8 羽片裏面の拡大。(兵庫県篠山市・谷筋の岩壁 2011.3/31)
  胞子嚢群(ソーラス)は円形。脈上には淡黄色の微細な毛状鱗片がまばらについている。

Fig.9 無性芽。(兵庫県篠山市・谷筋の岩壁 2011.4/15)
  伸びた葉先によく無性芽を形成する。無性芽は基物に接すると発根して定着する。

生育環境と生態
Fig.10 谷筋にある岩上に群生するフジシダ。(兵庫県篠山市・谷筋の岩壁 2011.3/31)
チャートの巨大な岩塊が谷筋に露出しており、フジシダが他種とともに着生シダ群落を形成していた。
岩塊上部では画像にも見えるシシランとともに密生しており、中部ではオオフジシダ、ヌリトラノオとともに生育し、下部では湧水が表水となって流れ、
そこではフジシダは減少し、カタヒバ、ホソバコケシノブ、ヒメハイホラゴケ、イノデ、ヤブソテツsp.、オオキジノオ、ミヤマカンスゲ、ナキリスゲ、
ジャゴケsp.、ミズゼニゴケsp.、オオカサゴケなどが生育していた。

Fig.11 湧水のにじむ岩壁に生育するフジシダ。(兵庫県篠山市・岩壁 2011.4/15)
チャートの岩塊が多数露出した山腹に、湧水のにじむ箇所があり、そこに蘚苔類や着生シダが多く生育していた。
ここでは岩塊上部ではシシランが群生し、中部ではオオフジシダが見られ、下部ではフジシダとともにジュウモンジシダ、シケチシダの幼株、
コハイホラゴケと思われる小型シダ、チャルメルソウ、タチネコノメソウが生育していた。


最終更新日:15th.Feb.2015

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