カンスゲ Carex morrowii  Boott
  山地・林縁・林床の植物 カヤツリグサ科 スゲ属 ヌカスゲ節
Fig.1 (兵庫県香美町・林縁 2011.5/26)
低山〜山地の湿った林床や林縁、岩場などに生育する多年草。
根茎は短く、密に叢生する。基部の鞘は光沢のない黒褐色で、新葉基部の鞘は伸びず目立たない。
葉は常緑できわめて硬く、下面の1脈が目立ち、幅6〜15mm。
有花茎は高さ20〜40cm。雄小穂は赤褐色を帯び、長さ2〜4cm。雌小穂は2〜5個、長さ1.5〜3.5cm、幅約6mm。
雌鱗片は果胞と同長、鋭尖頭またはやや凹頭芒端。
果胞は黄色を帯び、長さ3〜3.5mm、くちばしは長く、熟すと外曲し、その縁は平滑ときに多少の刺毛があり、口部は鋭2歯。
痩果は長さ約2mm、頂部は直立したくちばしとなる。柱頭は3岐する。

【メモ】 カンスゲは兵庫県下では但馬と北播の山地に分布する。
     大阪府の金剛・葛城山脈には見られるが、六甲山地には分布していない。
     他の「カンスゲ」の名がつく種とは、匐枝がなく、葉が1脈で硬いことから区別できる。

近縁種 : オクノカンスゲミヤマカンスゲヒメカンスゲ

■分布:本州(福井県以西)、四国、九州、トカラ列島黒島
■生育環境:低山〜山地の湿った林床や林縁、岩場など。
■果実期:4〜5月

Fig.2 全草標本。(兵庫県香美町・林縁 2011.5/26)
  根茎は短く、密に叢生し、匐枝はない。
  カンスゲの名の通り常緑越冬するが、画像のものは草刈りされて、前年葉は根際近くから切られている。

Fig.3 基部。(兵庫県香美町・林縁 2011.5/26)
  基部の鞘は光沢のない黒褐色。


Fig.4,5 葉。(兵庫県香美町・林縁 2011.5/26)
  葉には1脈(主脈)が明瞭で、特に裏面では目立つ。横断面は多くは浅いU字〜V字形。
  葉縁には上向きの刺状突起が並び、上向きにざらつく。

Fig.6 有花茎。(兵庫県香美町・林縁 2011.5/26)
  頂小穂は雄性、側小穂には明瞭な柄があり、雌性。苞は線形でごく短く、基部は鞘となる。

Fig.7 雄小穂。(兵庫県香美町・林縁 2011.5/26)
  雄小穂は赤褐色を帯び、長さ2〜4cm。葯はあまり宿存しない。

Fig.8 雌小穂。(兵庫県香美町・林縁 2011.5/26)
  側小穂は雌性で、雄雌性となるのは稀である。
  熟した小穂は開出して密について先は外曲し、側小穂は幅約6mmとなる。雌鱗片は果胞より短い。

Fig.9 雌鱗片と果胞。(兵庫県香美町・林縁 2011.5/26)
  雌鱗片は果胞より短く、鋭尖頭またはやや凹頭芒端。

Fig.10 果胞。(兵庫県香美町・林縁 2011.5/26)
  果胞は黄色を帯び、無毛、長さ3〜3.5mm、くちばしは長く、熟すと外曲し、その縁は平滑ときに多少の刺毛があり、口部は鋭2歯。

Fig.11 痩果。(兵庫県香美町・林縁 2011.5/26)
  雌花の結実率はあまり高くはなく、1個の雌小穂のうち数個どまりだった。
  痩果は褐色で長さ約2mm、頂部は直立したくちばしとなり、柱基の円盤状の付属物は小さく、下方の面は凹む。

生育環境と生態
Fig.12 高原のスキー場の林縁部に生育するカンスゲ。(兵庫県香美町・林縁 2011.5/26)
スキー場の林縁部に、刈り込みに遭って背丈は短いが、多くの個体が生育していた。
周辺ではミヤマカンスゲ、ニシノホンモンジスゲ、アオスゲなどのスゲ類のほか、スギナ、ススキ、コブナグサ、ユキザサ、ミゾソバ、イタドリ、
セリ、シシウド、ヤマブキショウマ、オオタチツボスミレ、ミヤマカタバミ、クルマムグラ、フキ、ヨモギなどが生育していた。



最終更新日:28th.May.2011

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