ミヤマカンスゲ Carex multifolia  Ohwi
  山地・林床・渓流畔の植物 カヤツリグサ科 スゲ属 ヌカスゲ節
Fig.1 (兵庫県篠山市・低山の渓流畔 2010.4/18)

Fig.2 (兵庫県篠山市・林縁用水路脇 2013.3/14)

丘陵〜山地の林床や渓流畔に生育する多年草。
根茎はやや伸びるが叢生し、顕著な匐枝はない。基部の鞘はやや長く伸び、光沢のある紫褐色。
葉はやわらかく平滑、幅5〜10mm、常緑だが、果実期には新しいシュートが目立ち、前年葉は枯れ始める。
有花茎は高さ20〜50cm。雄小穂は線形、長さ2〜4cm。
雌小穂は2〜4個、まばらに果胞をつけ、長さ1.5〜3cm、幅2mm。雄鱗片や雌鱗片は褐色を帯びるが、色の濃淡には変異がある。
果胞は長さ2.5〜4.5mm、短毛があり、先は嘴となるが、嘴の長短には変異があり、口部は凹形または2小歯状。柱頭は3岐する。
近縁種 : カンスゲ、 ホソバカンスゲ、 コミヤマカンスゲ、 アオミヤマカンスゲ、 ツルミヤマカンスゲ。 カンスゲハバビロスゲ

■分布:北海道、本州、四国、九州、伊豆諸島
■生育環境:丘陵〜山地の林床や渓流畔など。
■果実期:4〜6月

Fig.3 開花中の花序。(兵庫県篠山市・植林地の林床 2008.3/25)
  この頃のものは判断しにくいが生育環境、葉幅、褐色の鱗片、基部の鞘の色に加え、常緑や分布域を加味すればなんとか判断がつく。
  ミヤマカンスゲはスゲ属のなかでも比較的開花の早い種である。開花時は花茎は短いが、果胞が熟すにつれて長く伸びる。

Fig.4 全草標本。(兵庫県丹波市・湿った林床 2010.5/16)
  叢生し、顕著な匐枝はない。

Fig.5 基部。(兵庫県丹波市・湿った林床 2010.5/16)
  基部の鞘は光沢のある紫褐色。

Fig.6 花序の上部。(兵庫県篠山市・低山の渓流畔 2010.4/18)
  頂小穂は雄性。側小穂は雌性で、まばらに果胞をつける。雄鱗片や雌鱗片はふつう褐色を帯びる。

Fig.7 雌小穂。(兵庫県丹波市・湿った林床 2010.5/16)
  まばらに果胞をつけ、長さ1.5〜3cm、幅2mm。雌鱗片は褐色を帯びるが、色の濃淡には変異がある。

Fig.8 果胞。(兵庫県丹波市・湿った林床 2010.5/16)
  果胞は長さ2.5〜4.5mm、広披針形、短毛があり、有脈、先は嘴となるが、嘴の長短には変異があり、口部は凹形または2小歯状。

Fig.9 痩果。(兵庫県丹波市・湿った林床 2010.5/16)
  痩果は長卵形または長楕円形で、長さ3.5mm前後、基部は柄状となる。環状の付属体があり、その基部はくびれ、先はやや短い嘴状となる。

生育環境と生態
Fig.10 林縁の渓流畔に生育するミヤマカンスゲ。(兵庫県篠山市・低山の渓流畔 2010.4/18)
低山の渓流が溜池に流れ込む部分の砂礫質の場所に生育していた。年数を経た個体で叢生し大株となっている。
ミヤマカンスゲの周囲にはアオイスミレ、ナガバノタチツボスミレ、シライトソウ、ノギラン、ミヤマシラスゲ、ニシノホンモンジスゲなどが見られた。

Fig.11 渓流の岩上に生育するミヤマカンスゲ。(兵庫県篠山市・山地の渓流 2009.3/26)
渓流の凝灰岩の巨岩上に開花中のミヤマカンスゲが見られた。
比較的高湿度で、岩上にはユキノシタ、イノデ類、ヤブソテツ類なども着生している。

Fig.12 社寺林の林床に生育するミヤマカンスゲ。(兵庫県三田市・社寺林 2011.4/13)
社寺林内の湿った場所にミヤマカンスゲが生育しており、一部では群落を形成していた。
林床にはヤマアイが優占し、ミヤマカンスゲは木洩れ日があたる半日陰部分に、ヤマアイ、ムラサキケマン、ヤブニンジン、ヨツバムグラ、
ドクダミ、オオバタネツケバナなどとともに生育している。



最終更新日:27th.May.2013

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