キキョウ
 (シロバナキキョウを含む)
Platycodon grandiflorum  (Jacq.) A. DC.
  里山・草地の植物 
  環境省絶滅危惧U類(VU)
キキョウ科 キキョウ属
Fig.1 (神戸市・溜池土堤 2011.9/25)

Fig.2 (神戸市・溜池土堤 2011.9/25)

丘陵〜低山の里山の草地、高原の草地に生育する多年草。
太い根茎は深く地中に入り、茎は直立し高さ50〜100cm、ときに上方が分枝する。
葉は上部では互生、中部以下では互生ときに対生または輪生し、狭卵形で狭卵形で長さ4〜7cm、鋭頭、縁に細鋸歯がある。
花は茎頂近くに数個つき、花冠は広鐘状で浅5裂し、径4〜5cm、有柄、青紫色であるが、淡紫色や白色のものもある。
雄性先熟。雄蕊5個は、花冠と合着せず、花糸の基部は幅広い。子房下位で5室。柱頭は5裂し、裂片は線形。
果実は刮ハで、倒卵形、上端から裂開する。種子は楕円形、黒色でやや光沢があり、横断面はレンズ形、片方の稜は翼状に張り出す。
白花品が稀に見られ品種シロバナキキョウ(f. albiflora)とされる(Fig.7参照)。

【メモ】 茅場や棚田の管理放棄により全国的に減少傾向にある種で、環境省絶滅危惧U類(VU)に選定されている。
     生育には、ときに草刈りの手が入るような草原環境が必要で、4,5年も放置されると姿を消してしまうことが多い。
     兵庫県では溜池が多く、草刈り管理された溜池土堤で生育しているのをよく見かけ、絶滅危惧種とはなっていない。
     西宮市では過去に採られた標本があるが、現在は確認できず絶滅している可能性が高い。
近縁種 : ヒナギキョウツリガネニンジンシデシャジン

■分布:北海道、本州、四国、九州、奄美諸島 ・ 朝鮮半島、中国、ウスリー
■生育環境:里山や高原の草地など。
■花期:7〜10月

Fig.3 茎と葉。(兵庫県三田市・溜池土堤 2010.8/15)
  茎は直立し、高さ50〜100cmほどになるが、草刈りの頻繁な自生地では茎が途中で切断され、高さ20cmほどで節から分枝して開花していることもある。
  葉は上部では互生するが、中部以下では互生したり、対生したり、3輪性したりと変異が多い。葉柄はごく短いか、全く無い。
  葉身はふつう狭卵形、上部では葉身は小型で披針形、鋭頭で、縁には細鋸歯があり、表面は無毛、裏面は粉白色を帯びる。

Fig.4 互生した葉。(兵庫県三田市・溜池土堤 2010.8/15)
  葉が互生するものは、最もよく見られる例である。

Fig.5 開花したばかりの花。(兵庫県三田市・溜池土堤 2010.8/15)
  花冠は浅い釣鐘状で、浅5裂し青紫色〜淡紫色、まれに白色、裂片の先はとがる。
  雄性先熟で、つぼみの間に雄蕊は熟し、開花すると雌蕊を囲んだまま葯から花粉を放出する。

Fig.6 花粉を放出した花。(兵庫県三田市・溜池土堤 2010.8/15)
  基部寄りの開花中の花は、花粉を放出しきって葯は脱落し、花糸は四方に開出し、花柱が伸びている。
  一方、ピントの甘い茎頂寄りの花は雌蕊の5岐した柱頭が開いて反り返っており雌性期にある。

Fig.7 雌性期の花。(兵庫県三田市・溜池土堤 2007.8/23)
  5岐する柱頭が開き、雄蕊の花糸は脱落しはじめる。

Fig.8 白花品。(兵庫県神戸市・溜池土堤 2011.9/25)
  キキョウの多い場所に稀に見られシロバナキキョウ(f. albiflora)と呼ばれる。

Fig.9 帯化して多数の花をつけた花茎。(兵庫県加西市・溜池土堤 2011.7/22)

Fig.10 熟した刮ハ。(兵庫県神戸市・溜池土堤 2008.11/11)
  刮ハは上向きにつき、倒卵形で、熟すと上端が5裂する。中には多数の種子が入っている。


Fig.11,12 種子。(兵庫県篠山市・溜池土堤 2011.11/9  小野市・溜池土堤 2010.10/27)
  種子は楕円形で、長さ約2.5m、横断面はやや丸みを帯びたレンズ形、2稜のうち一方は翼状に張り出し、黒色でやや光沢がある。

生育環境と生態
Fig.13 溜池畔の湿地上部の草地に点在するキキョウ。(兵庫県三田市・溜池畔 2008.8/17)
溜池畔から棚田へと続く、草刈りと早春の野焼きによって管理された丈の低いネザサ主体の草地にかなりの個体数が見られ、長期にわたって継続的に開花が見られる。
ネザサが繁りはじめる前にはイシモチソウやノギランの群落が開花し、初夏にはノハナショウブ、カキランが開花する。
画像右手前には果実期のカキラン群落が見えている。ところどころにハンノキが見られるが野焼きによって生育が抑えられ、小低木となって日照を遮らない。
キキョウは適湿の草地を好むようで、同所的にイシモチソウ、ホソバノヨツバムグラ、ノハナショウブ、コシンジュガヤ、ノテンツキ、ヤマラッキョウ、
タムラソウ、オミナエシ、リンドウ、ミヤコアザミ、サワシロギク、サワヒヨドリ、ヤブマメなどが見られることが多い。
この溜池では土堤外側にもキキョウの群落が見られ、そこではイシモチソウ、ミヤコアザミ、ユウスゲ、コバギボウシ、スズサイコ、ムカゴニンジンなどが見られ、
人為的に維持された二次的自然度の高い場所であるといえる。

Fig.14 頻繁に草刈りがなされる棚田の土手に生育するキキョウ。(兵庫県南あわじ市・棚田土手 2010.10/25)
兵庫県下の棚田の土手では雑草防除のため、ふるくからシバやヒメヤブランなどが植栽され、早春に野焼きがされ、年に数度草刈りがされる場所が多い。
草原性草本であるキキョウはそのような場所に好んで生育し、強度の草刈りにもめげず数十センチの小さな草体であっても開花結実する。
ここでは土手がシバと矮小化したネザサに覆われ、キキョウや後方にボケて見えるツリガネニンジンのほか、オミナエシ、リンドウ、コガンピ、ワレモコウや、
土手の下部ではサワヒヨドリ、ヒメアブラススキ、クグテンツキ、シカクイ、マネキシンジュガヤなどが見られ、二次的自然度の高い草原環境が保たれている。

Fig.15 溜池土堤で群生するキキョウ。(兵庫県神戸市・溜池土堤 2011.9/25)
この場所もよく草刈りされて管理の行き届いた場所であり、非常に多くの個体が生育し、シロバナキキョウも1株だけ混生していた。


最終更新日:27th.Feb.2014

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