ミヤマベニシダ Dryopteris monticola  (Makino) C.Chr.
  山地・林床・林縁のシダ オシダ科 オシダ属
Fig.1 (兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)

温帯林下の日陰のやや湿った林床や林縁に生育する夏緑性シダ。
根茎は太く、短く横走し、鱗片をつける。葉柄は葉身よりも短く、長さ20〜50cm、下部にはやや密に、上部にややまばらに鱗片をつける。
葉柄の鱗片は狭披針形〜長卵形、やや光沢のある茶褐色〜濃褐色、鋭尖頭、全縁、大きいものは長さ2cmに達し、ややかたい膜質。
葉身は2回羽状深裂〜全裂し、長楕円状卵形〜長楕円形、長さ50〜80cm、幅20〜35cm、鋭尖頭、下部は狭くならない。
中軸の鱗片はややまばらにつき、線状披針形〜線形、淡褐色。羽片は線状披針形、幅2〜3cm、基部はほとんど切形、短い柄があり、羽状に深裂〜全裂する。
裂片は長楕円状披針形、鈍頭〜円頭、長さ1〜2cm、幅5〜7mm、鋸歯縁で、鋸歯の先は細く尖る。
葉質はやや厚い紙質で、やわらかく、表面は淡い緑色。脈は表面でややくぼむ。
ソーラスは裂片の中肋寄りに1列に並び、包膜は全縁。染色体数n=41の2倍体。

オクマワラビD. uniformis)は葉柄基部の鱗片は黒褐色、裂片の鋸歯は低く、葉身の長さ40〜60cm、脈は表面でくぼまない。
オシダD. crassirhizoma)は葉柄基部の鱗片が大きく4cmに達し黄褐色〜黒褐色、葉柄は短く10〜25cm、下部の羽片は短くなる。
ミヤマクマワラビD. polylepis)はオシダに似て、裂片は幅1.5〜3mmと細く、葉柄基部の鱗片は黒褐色〜黒色で、夏緑性。
ミヤマベニシダを片親とする推定自然雑種に以下のものがある。
タニヘゴモドキD. × kominatoensis) タニヘゴとの雑種。北海道、本州。
タカネメンマD. × coreano) カラフトメンマとの雑種。長野。
近縁種 : オクマワラビオシダ、 ミヤマクマワラビ、 タニヘゴ

■分布:北海道、本州、四国(徳島)、九州(宮崎) ・ 朝鮮半島、中国東北部、ソビエト東部
■生育環境:温帯林下の日陰のやや湿った林床や林縁など。

Fig.2 地上部標本。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)
  葉柄は葉身よりも短く、葉身は2回羽状深裂〜全裂し、長楕円状卵形〜長楕円形、長さ50〜80cm、鋭尖頭、下部は狭くならない。

Fig.3 葉柄基部の鱗片。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)
 狭披針形〜長卵形、やや光沢のある茶褐色〜濃褐色、鋭尖頭、全縁、大きいものは長さ2cmに達し、ややかたい膜質。

Fig.4 基部鱗片の拡大。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)
  鱗片は先近くで捩れているものが多く、大きなものは2cmを超えていた。

Fig.5 下部羽片。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)
  下方の羽片は短くならない。最下羽片の下側第一小羽片もほとんど小さくならない。
  和名にベニシダが付いているが、ベニシダ類よりもオクマワラビ、タニヘゴ、ナガバノイタチシダなどに近い種である。

Fig.6 中軸中部の鱗片。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)
  中軸の鱗片はややまばらにつき、線状披針形〜線形、淡褐色。

Fig.7 羽片。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)
  羽片は線状披針形、幅2〜3cm、基部はほとんど切形、短い柄があり、羽状に深裂〜全裂する。

Fig.8 裂片。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)
  片は長楕円状披針形、鈍頭〜円頭、長さ1〜2cm、幅5〜7mm、鋸歯縁で、鋸歯の先は細く尖る。

Fig.9 裂片の拡大。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)
  脈は表面でややくぼみ、側脈は2叉する。鋸歯の先は上を向くことが多い。

Fig.10 ソーラスは裂片の中肋寄りに1列に並ぶ。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)

Fig.11 羽軸裏。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)
  羽軸裏には線状披針形で、淡褐色の鱗片がまばらにみられた。

Fig.12 包膜はほぼ全縁。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.7/19)
  中肋や脈上には線形と毛状の鱗片がまばらに見られた。

Fig.13 フィドルヘッド。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.5/14)
  緑色の地色に、茶褐色〜濃褐色の鱗片をつける。

Fig.14 展開した新葉。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.5/14)
  新葉は立ち上がり、葉身は淡緑色で、葉柄がよく目立つ。

生育環境と生態
Fig.15 植林地と温帯林の林縁に群生するミヤマベニシダ。(兵庫県但馬地方・林縁 2015.5/14)
湿地と温帯林の境界付近の湿った林縁にミヤマベニシダが群生していた。
植林地の林床では日照が足りないのか、ミヤマベニシダの生育が見られず、サカゲイノデに取って代わられる。
一方で明るい湿地部分ではヤマドリゼンマイとタニヘゴが生育している。ミヤマベニシダはタニヘゴと雑種タニヘゴモドキを作るが、
ここでは見られなかった。ミヤマベニシダが群生する周辺ではミヤマジュズスゲ、キンキカサスゲ、ヒロハテンナンショウ、エンレイソウ、
ミヤマタニソバ、ネコノメソウ、ニリンソウ、トリカブトsp.、オオバタネツケバナ、ウマノミツバ、ミヤマカタバミ、オオタチツボスミレ、
ニョイスミレ、オククルマムグラ、ハグロソウ、ラショウモンカズラ、モミジガサなど多種多様な草本が生育している。


最終更新日:2nd.Dec.2015

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