ミゾシダ Thelypteris pozoi  (Lag.) C.V.Morton
 subsp. mollissima  (Fisch. ex Kunze) C.V.Morton
  低山・里山・林縁・林床のシダ ヒメシダ科 ヒメシダ属
Fig.1 (兵庫県篠山市・植林地の林縁 2013.6/4)

丘陵〜山地、里山のやや湿った向陽の林縁から林床にふつうな夏緑性シダ。無雪地帯では常緑。
根茎は長く横走し、径3〜6mm、毛と鱗片をつける。
葉柄は葉身より短く、やや密に毛があり、鱗片があり、わら色でやや紫褐色を帯びることがある。
根茎や葉柄基部の鱗片は先端が尾状に伸び、有毛。毛は各部にやや密にあり、刺毛や先が鉤形になるものが混じる。
葉身は長楕円形〜長楕円状披針形、鋭頭〜鋭尖頭、長さ50cm、幅20cmに達し、2回羽状深裂、基部はしだいに狭くなるが、最下羽片が少し長くなることもある。
側羽片は羽状に深裂、披針形〜線状披針形、鋭頭から尾状となり、無柄。上部の羽片は中軸に流れて、不明瞭な頂羽片状部分を構成する。
裂片は長楕円形〜長楕円状三角形、円頭〜鋭頭、全縁かわずかに波状縁。葉脈は羽状に分岐し、遊離する。
葉質は草質からやわらかい紙質、両面とも有毛、暗緑色、かわくと簡単に褐色となる。
ソーラスは線形で脈に沿って伸び、苞膜はなく、胞子嚢は有毛。染色体数n=36の2倍体。

形の似たシケシダとは苞膜がない点で区別できる。
近縁種 : シケシダハリガネワラビヤワラシダ、 ハシゴシダ

■分布:北海道、本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島、中国、台湾、インド、マレーシア
■生育環境:丘陵〜山地、里山のやや湿った向陽の林縁から林床など。

Fig.2 地上部標本。(兵庫県三田市・渓流畔 2013.6/2)
  葉柄は葉身よりも短く、やや密に毛があり、鱗片があり、わら色でやや褐色を帯びることがある。
  葉身は長楕円形〜長楕円状披針形、鋭頭〜鋭尖頭、2回羽状深裂、基部はしだいに狭くなるが、最下羽片が少し長くなることもある。

Fig.3 葉柄基部。(兵庫県三田市・渓流畔 2013.6/2)
  全体に毛が多い。鱗片は淡褐色、長三角状披針形、先端が尾状に伸び、有毛。

Fig.4 側羽片。(兵庫県三田市・渓流畔 2013.6/2)
  側羽片は羽状に深裂、披針形〜線状披針形、鋭頭から尾状となり、無柄。

Fig.5 上部羽片。(兵庫県三田市・渓流畔 2013.6/2)
  上部の羽片はしだいに小さくなり、基部は中軸に流れて、不明瞭な頂羽片状部分を構成する。

Fig.6 中軸、羽軸、脈上に毛が多い。(兵庫県三田市・渓流畔 2013.6/2)

Fig.7 羽片裏面。(兵庫県三田市・渓流畔 2013.6/2)
  裏面は淡色。ソーラスは線形で脈に沿って伸び、苞膜はない。

Fig.8 胞子嚢には毛がある。(兵庫県三田市・渓流畔 2013.6/2)

生育環境と生態
Fig.9 植林地の林床で群生するミゾシダ。(神戸市・植林地の林床 2013.5/13)
ミゾシダは木漏れ日のある湿った林床で最もよく見かけ、ときに群生する。
ここではフユイチゴ、シャガ、ツルニンジン、ヤブソテツ、トウゴクシダなどが生育する植林地の窪地に群生していた。

Fig.10 渓流畔の林床で生育するミゾシダ。(西宮市・林床 2010.6/11)
渓流にそって続く山道の脇に生育しているもので、付近には逸出のミョウガ、リョウメンシダ、イノデ、ササノハスゲなどが見られるやや湿った場所である。
ミゾシダの生えている場所は多少樹冠が切れて半日陰的な環境で、アキノタムラソウ、ヒカゲスゲ、ヘクソカズラ、ツルニンジンなどとともに生育している。


最終更新日:9th.June.2012

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