カワモズク | Batrachospermum gelatinosum (Linnaeus) De Candolle emend Vis et al. | カワモズク科 カワモズク属 |
淡水藻類 環境省絶滅危惧U類・兵庫県RDB Aランク種 |
Fig.1 (神戸市・湧水泉 2015.2/20) |
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Fig.2 (神戸市・湧水泉 2015.2/20) 平地の湧泉、湧水の流入する河川や水路の石などの基物に着生する。 雌雄同株。藻体は茶褐色、ときに青味を帯び、粘質でヌルヌルする。よく分枝し、太さ0.3〜0.9mm、長さ2〜12cm。 外見上はチャイロカワモズクに似るが、本種では藻体の先端がより細くなる。 主軸には皮層があり、円筒形の細胞のみからなる。 1〜11個の果胞子体が輪生枝叢内に散在し、器をつける枝は分化せず,長い。 造性器は球形で直径5〜6μ、輪生枝の先端に1〜2個ずつ形成される。 受精毛は杓子形または披針形。果胞子体は球形、有柄、直径40〜150μ。 晩秋から早春の時期に見られる。 近似種 : ニホンカワモズク、 チャイロカワモズク、 アオカワモズク、 タニガワカワモズク、 ツマグロカワモズク ■分布:本州、九州 ・ ヨーロッパ、アジア、オーストラリア、北アメリカ ■生育環境:平地の湧泉、湧水の流入する河川や水路など。 ■西宮市内での分布:西宮市内ではこのタイプのものは未見である。 |
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↑Fig.3 藻体。(神戸市・湧水泉 2015.2/20) 藻体は茶褐色、ときに青味を帯び、よく分枝し、太さ0.3〜0.9mm、長さ2〜12cm。 |
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↑Fig.4 藻体枝先付近の一部を拡大。(神戸市・湧水泉 2015.2/20) 藻体の先端はしだいに細くなり、ニホンカワモズクやツマグロカワモズクに似る。 |
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↑Fig.5 藻体の拡大。(神戸市・湧水泉 2015.2/20) 藻体は中軸細胞とその各節から輪生する輪生枝とに分化する。 輪生枝が放射状に広がったものは、輪生枝叢という球状〜ビール樽状の構造をなす。 カワモズク科のものは中軸に輪生枝叢が連鎖し、それが粘質につつまれて分枝した形状となる。 画像では輪生枝叢の中に色の濃い球形の果胞子体が形成されている太い枝が見られる。 |
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↑Fig.6 輪生枝叢の拡大。(神戸市・湧水泉 2015.2/20) 果胞子体は1〜5個見られた。 |
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↑Fig.7 成熟した果胞子体。1目盛=10μ。(神戸市・湧水泉 2015.2/20) 果胞子体は球形、直径65〜150μ。 |
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↑Fig.8 受精毛。1目盛=1.6μ。(神戸市・湧水泉 2015.2/20) 左は受精前、右は受精後。受精毛は杓子形または披針形。 |
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↑Fig.9 造性器。1目盛=1.6μ。(神戸市・湧水泉 2015.2/20) 造性器は球形で直径5〜6μ、輪生枝の先端に1〜2個ずつ形成される。 |
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↑Fig.10 端毛がある。(神戸市・湧水泉 2015.2/20) |
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↑Fig.11 乾燥標本にしてもニホンカワモズクのような紫色とはならない。(神戸市・湧水泉 2015.2/20) |
生育環境と生態 |
Fig.12 湧水泉中に生育するカワモズク。(神戸市・湧水泉 2015.2/20) 丘陵の山際に湧出した湧水泉内に少数のカワモズクが基物に着生、あるいは抽水植物に絡まりながら生育していた。 湧水泉中にはホソバミズゼニゴケ、ヤノネゴケ、ヨツメモの仲間(画像中の袋状の緑藻)、コウガイゼキショウ、ホソバヘラオモダカ、 ヨシ、キセルアザミなどが生育しているが、温帯スイレンとホテイアオイが植栽されているのは残念なことだ。 周辺一帯はあまり手を入れていない自然を活かした里山公園となっているが、泉=スイレンといった安易な発想は止めて欲しいものだ。 湧水泉から流れ出た水は脇にある用水路に流入するが、そこではチャイロカワモズクが繁茂しており、貴重な水辺環境である。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 廣瀬弘幸・山岸高旺, 1997. カワモヅク科. 『日本淡水藻類図鑑』 159〜175. 内田老鶴圃 兵庫県, 2010 1 植物(3)藻類@淡水藻類. 『兵庫の貴重な自然 兵庫県版レッドデータブック2010(植物・植物群落)』 170〜175. (財)ひょうご環境創造協会 |