チャイロカワモズク Batrachospermum arcuatum Kylin emend Vis et al. カワモズク科 カワモズク属
 淡水藻類 

  環境省準絶滅危惧・兵庫県RDB Bランク種
Fig.1 (兵庫県篠山市・用水路 2014.3/14)

Fig.2 (神戸市市・用水路 2015.2/20)

平地の湧泉、湧水の流入する水路の石や壁などの基物に着生する。
雌雄異株。藻体は茶褐色、粘質でヌルヌルする。よく分枝し、太さ0.7〜1.5mm、長さ2〜12cm。
外見上はカワモズクに似るが、本種では藻体の先端までよく分枝する。
輪生枝叢はくっつきあい、樽形。主軸には皮層があり、円筒形の細胞のみからなる。
1〜3個の果胞子体が輪生枝叢の中〜縁に散在し、球形で、径29〜129μ。
造性器は球形、輪生枝の先端に1〜2個ずつ形成される。
受精毛は杓子形または徳利形。晩秋から早春の時期に見られる。

近似種 :  カワモズクニホンカワモズクアオカワモズクタニガワカワモズク、 ツマグロカワモズク

■分布:日本各地 ・ ヨーロッパ、東アジア、オーストラリア、北アメリカ、メキシコ
■生育環境:平地の湧泉、湧水の流入する河川や水路など。
■西宮市内での分布:西宮市内では未見である。

Fig.3 雌株の藻体。(兵庫県篠山市・用水路 2014.3/14)
  藻体は茶褐色、よく分枝し、太さ0.7〜1.5mm、長さ2〜12cm。

Fig.4 藻体枝先付近の拡大。(兵庫県篠山市・用水路 2014.3/14)
  カワモズクに似るが、本種では藻体の先端がカワモズクのようにスマートに細くならない。

Fig.5 藻体の拡大。(兵庫県篠山市・用水路 2014.3/14)
  輪生枝叢はくっつきあい、樽形。1〜3個の果胞子体が輪生枝叢の中〜縁に散在する。

Fig.6 輪生枝叢の拡大。(兵庫県篠山市・用水路 2014.3/14)

Fig.7 成熟した果胞子体。1目盛=10μ。(神戸市・用水路 2015.2/20)
  果胞子体は球形で、径29〜129μ。カワモズクやニホンカワモズクより少し小さい。

Fig.8 若い輪生枝叢。(兵庫県篠山市・用水路 2014.3/14)
  若い輪生枝叢は扁平で、矢印部分に受精毛が見られる。

Fig.9 受精毛。(兵庫県篠山市・用水路 2014.3/14)
  受精毛は杓子形または徳利形。

Fig.10 雄株の輪生枝。(兵庫県篠山市・用水路 2014.3/11)
  輪生枝の先には造性器がつく。

Fig.11 造性器。(兵庫県篠山市・用水路 2014.3/11)
  造性器は球形、輪生枝の先端に1〜2個ずつ形成される。

Fig.12 乾燥標本。(神戸市・用水路 2015.2/20)
  標本にすると藻体は暗緑褐色となり、海苔臭が強くなる。

生育環境と生態

Fig.13,14 村落内の用水路に生育するチャイロカワモズク(上)と遠景(下)。(兵庫県篠山市・用水路 2014.3/11)
水位の浅い場所だが、石垣下端の隙間数ヶ所から湧水が流れ出ている。
用水路の水位は先にいくほど増しており、水深の深い場所ではFig.1のような大きな個体が見られる。
チャイロカワモズクは水路壁面や、底面の小石、混生する蘚類に付着して生育している。

Fig.15 アオカワモズクと混生するチャイロカワモズク。(兵庫県三田市・用水路 2014.3/20)
溜池土堤直下の湧水の混入のある用水路の底面に混生している。
数年前は底面に土砂が溜まってフトヒルムシロが群生しており、その当時は壁面に見られたが、土砂が除かれて底面を覆うようになった。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
廣瀬弘幸・山岸高旺, 1997. カワモヅク科. 『日本淡水藻類図鑑』 159〜175. 内田老鶴圃
兵庫県, 2010 1 植物(3)藻類@淡水藻類. 『兵庫の貴重な自然 兵庫県版レッドデータブック2010(植物・植物群落)』 170〜175. (財)ひょうご環境創造協会



最終更新日:10th.Mar.2015

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