ニホンカワモズク | Batrachospermum japonicum Mori | カワモズク科 カワモズク属 |
淡水藻類 環境省絶滅危惧U類 |
Fig.1 (兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2014.3/11) |
||
Fig.2 (兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2014.3/11) 湧泉、湧水の流入する河川や水路の石や壁面などの基物に着生し、半日陰を好む。 藻休の長さはふつう2〜8cm、赤みを帯びた褐色。輪生枝叢は球形、楕円形、倒円錐形、分離または密集。雌雄同株。 主軸細胞の上位から、5〜7本の輪生枝を生じる。輪生枝は基部細胞から3本、稀に4本の枝を生じる。 1次輪生枝は長さ100〜720μ、4〜6回2又分枝、先端部で弓なりになり短い端毛を持つ。 精子嚢は輪生枝の先端、先端近くに形成。造果器をつける枝は、真っすぐで、6〜7個の細胞よりなる。 やや長い造果器は細長い金床形、長さ35〜63μ、直径3〜5μ。受精毛は長い杓子形、有柄。 果胞子体は1輪生枝叢内に多数、直径90〜150μ、輪生枝叢内の内外に形成される。 果胞子嚢は倒卵形、太さ7.5〜10 μm、長さ10〜18.5 μm。 乾燥標本にすると藻体は鮮やかな紫色となる。 【メモ】 カワモズクとしていたが、標本にすると紫色となり、その後輪生枝基部細胞から3本の輪生枝分枝を確認し、ニホンカワモズクと確定した。 近似種 : カワモズク、 チャイロカワモズク、 アオカワモズク、 タニガワカワモズク、 ツマグロカワモズク ■分布:本州、九州 ・ ヨーロッパ、アジア、オーストラリア、北アメリカ ■生育環境:平地の湧泉、湧水の流入する河川や水路など。 ■西宮市内での分布:西宮市内ではこのタイプのものは未見である。 |
||
↑Fig.3 藻体。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2014.3/11) 藻休の長さはふつう2〜8cm、赤みを帯びた褐色。 |
||
↑Fig.4 藻体枝先付近の一部を拡大。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2014.3/11) 外見上はチャイロカワモズクに似るが、本種では藻体の先端がより細くなる。 |
||
↑Fig.5 藻体の拡大。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2011.3/29) 藻体は中軸細胞とその各節から輪生する輪生枝とに分化する。 輪生枝が放射状に広がったものは、輪生枝叢という球状〜倒円錐形の構造をなす。 カワモズク科のものは中軸に輪生枝叢が連鎖し、それが粘質につつまれて分枝した形状となる。 画像では輪生枝叢の中程に色の濃い球形の果胞子体が形成されている太い枝が見られる。 |
||
↑Fig.6 低倍率による顕微鏡下のニホンカワモズク。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2015.2/27) 輪生枝叢内の果胞子体が明瞭で、多くは中軸寄りに付いていた。藻体は最も太いもので0.9mm程度だった(1目盛=26μ)。 |
||
↑Fig.7 輪生枝叢の拡大。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2014.3/11) 果胞子体は1〜4個見られた。 |
||
↑Fig.8 輪生枝の基部。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2015.2/27) 輪生枝は基部細胞から3本、稀に4本の枝を生じ、以降4〜6回2又分枝する。 輪生枝を基部細胞から3本出すのはニホンカワモズクの大きな特徴で、同定上の主要なキーとなる。 |
||
↑Fig.9 成熟途上の果胞子体とその柄。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2014.3/11) |
||
↑Fig.10 成熟した果胞子体。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2014.3/11) 果胞子体は球形、直径90〜150μ(1目盛=10μ)。 |
||
↑Fig.11 受精毛。1目盛=1.6μ。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2015.2/27) 受精毛は長い杓子形、有柄、長さ20〜24μ、幅12〜14μ。画像のものは先端で丸い精子と結合している。 |
||
↑Fig.12 造果器の柄。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2015.2/27) 造果器をつける枝は、真っすぐで、6〜7個の細胞よりなる。画像のものは7細胞ある。 |
||
↑Fig.13 造性器。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2015.2/27) 1目盛=1.6μ。造性器は球形で直径5〜7.5μ、輪生枝の先端に1〜2個ずつ形成される。 |
||
↑Fig.14 端毛がある。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2014.3/11) 丸い小さな粒はおそらく精子だろう。 |
||
↑Fig.15 受精から果胞子体形成まで。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2015.2/27) 左上から。1.未熟な受精毛。柄があり、その下に造果器がある。 2.成熟した受精毛。 3.精子結合直後の受精毛。 4.ふくらみはじめた造果器。 5.果胞子体形成初期。 6.果胞子体形成途上。受精毛は埋もれつつある。 |
||
↑Fig.16 標本にすると鮮やかな紫色となる。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2014.4/12) |
生育環境と生態 |
Fig.17 溜池土堤直下の排水樋枡内の水中壁面に生育するニホンカワモズク。(兵庫県篠山市・溜池直下の排水樋枡内 2010.5/29) このような場所は県内各所にあるが、地域によって明らかに生育している種が異なる。 三田市では溜池直下の水路内に生育しているものが見られるが、藻体の色や太さなどが異なる。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 熊野茂, 2010. ニホンカワモズク. 改訂レッドリスト付属説明資料 藻類. 7. 環境省自然環境局野生生物課 吉崎誠・出井雅彦, 2006. ニホンカワモズク. レッドデータブックとちぎ. 栃木県 吉崎誠, 2002. 邦産紅藻カワモズク目の形態分類学的研究(1)ニホンカワモズクの体構造と生殖器官. Bulletin of the National Science Museum. Series B, Botany. 国立科学博物館 参考サイト 原口和夫, 埼玉県産カワモズク属 |