オオフサモ Myriophyllum aquaticum  (Vellozo) Verdc. アリノトウグサ科 フサモ属
抽水〜沈水植物・帰化植物  特定外来生物指定種
Fig.1 (滋賀県・内湖畔 2007.11/4)

Fig.2 (滋賀県・小河川 2011.9/27)

湖沼、溜池、河川、用水路などの浅水域で主に抽水状態で生育する多年草。沈水状態で見られることもある。
大正時代に帰化。雌雄異株で、日本には雌株だけが帰化している。
径5mm程度の太い茎が水中を匍匐しながら分枝を繰り返し、群生する。茎はときに赤味を帯び、茎下部の節からは不定根を発根する。
葉は5〜6輪生し、気中葉は長さ1.5〜5cm、羽状に細裂し、緑白色を呈する。沈水葉は繊細で、長さ6cmに達することがある。
花は気中葉の葉腋につき、円筒状、柱頭の白毛が目立つ。結実はしない。
切れ藻から不定根を生じて再生する能力に優れ、水中を浮遊する切れ藻によって分布域を広げ、定着した先で群生する。
その繁殖力の強さから、在来種の駆逐が危惧され、2006年に特定外来生物に指定され、栽培、移動、販売などが禁止された。
冬期は越冬芽は形成せず、茎下部の葉を落とした小型な草体となって、沈水状態で越冬していることが多い。

在来の4種のフサモ属が似るが、草体は小さく、タチモ以外はふつう沈水状態で生育する。
フサモ(M. verticillatum)は山間の溜池など貧栄養な水域に生育する。葉は4〜5輪生。花茎には気中葉をつけ、上部には雄花を、下部に雌花をつける。
冬期は長さ1.5〜3cmの根棒状の太く短い殖芽を形成して越冬する。殖芽葉は羽毛状で、裂片は細長く、裂片間は広く空く。
オグラノフサモM. oguraense)は中〜やや富栄養でアルカリ性の湖沼、溜池、水路などに生育する。花茎はフサモと同様であり、フサモとは殖芽で見分ける。
殖芽は6〜8cmの長い根棒状で、殖芽葉は板状で、裂片の幅は広く、裂片間はV字状となる。
ホザキノフサモM. spicatum)は湖沼、河川、溜池などに生育する。葉は4輪生。花茎には気中葉をつけず、上部に雄花、雌花がつく。殖芽をつくらない。
タチモM. ussuriense)は貧栄養〜中栄養な溜池の浅水域や水辺に見られ、沈水葉は羽状に細裂してきわめて繊細で、羽片は10個以下。
花は抽水〜陸生形の水上茎の葉腋につき、雌雄異株。
近似種 : フサモハリマノフサモオグラノフサモ ホザキノフサモタチモ

■分布:本州、四国、九州に帰化 ・ 南米ブラジル原産
■生育環境:湖沼、溜池、河川、用水路など。
■花期:4〜6月
■西宮市内での分布:有馬川と一部の溜池や水路に定着している集団が見られる。
              武庫川河川敷にも見られるが、ナガエツルノゲイトウに押され、安定した生育は見られない。

Fig.3 抽水状態のオオフサモ。(西宮市・河川 2007.10/14)
  水中に太い赤味を帯びた匍匐茎を複雑に這わせ、節から発根、新芽を立ち上げる。

Fig.4 オオフサモの陸生形。(滋賀県・湖岸 2008.9/8)
  オオフサモは陸生〜抽水形で生育していることが多い。
  葉は5〜6輪生。気中葉は羽状に細裂し、緑白色で柔らかい。

Fig.5 沈水形の草体。(兵庫県加西市・溜池 2008.11/2)
  沈水状態のものは赤味を帯びることが多く、葉の裂片は細く繊細となり、長さは長くなる。

Fig.6 特定外来生物指定以前はポピュラーな水草だった。(自宅育成 2005.12/12)
  特定外来種に指定される以前は、ペットショップなどでパロットフェザーという名称で安価に売られていた。
  画像のものは指定されるという情報を聞いて処分した。


Fig.7,8 開花したオオフサモ(上)と花の拡大(下)。(滋賀県・湖岸 2009.6/11)
  フサモの仲間のうちでは最も開花期が早い。国内には雌株のみが帰化しており、雌花だけが見られる。
  雌花は4室の子房からなり、4個の柱頭を持つ。柱頭の側面には白色の短毛を密生する。

Fig.9 常緑越冬するオオフサモ。(兵庫県篠山市・溜池 2014.1/14)
  オオフサモは耐寒性があり、かなり気温が低くなる地域でも常緑で越冬することができる。
  春に暖かくなるといち早く伸びはじめ、他の水生植物を圧する勢いで生育する。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.10 河川の浅水域に抽水状態で生育するオオフサモ。(西宮市・河川 2007.10/14)
市内の有馬川に生育しているもので、比較的小規模の群落が点在する。
河川の水質がそれほど富栄養でないためか、他種を圧するほど群生せず、キシュウスズメノヒエやオランダガラシに押され気味のようである。

Fig.11 用水路に生育するオオフサモ。(西宮市・用水路 2009.11/10)
水田脇に掘られたミヤマシラスゲ、アゼスゲ、クサヨシが生育する止水の用水路内に繁茂している。
本来ならばオオフサモが覆っている場所はセリやミゾカクシなどが見られるはずである。

他地域での生育環境と生態
Fig.12 流れの緩やかな小河川に生育するオオフサモ。(滋賀県・小河川 2008.9/8)
ホテイアオイ、ヤナギタデなどと混生している。

Fig.13 溜池で生育するオオフサモ。(兵庫県加西市・溜池 2008.11/2)
中栄養な溜池のヒメガマ群落の株元にまばらに生育している。
富栄養な水質であれば、大きな群生となるだろうが、オオフサモにとっては栄養塩が不足しているのだろう。
ここではクロモ、タチモといった在来の水草が元気に生育していた。

Fig.14 河川の河原を埋め尽くすオオフサモ。(愛知県名古屋市・河川 2005.5/25)
上流域の生活排水が大量に流入する河川で、水質は富栄養である。
岸辺にはツルヨシやオギなどの大型の草本が見られる他は、ほとんどオオフサモによって埋め尽くされていた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大滝末男, 1980. オオフサモ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 52,53. 北隆館
角野康郎, 1994. アリノトウグサ科フサモ属. 『日本水草図鑑』 133〜136. 文一統合出版
村上司郎. 2001. アリノトウグサ科フサモ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1046〜1047. 神奈川県立生命の星・地球博物館
角野康郎. 2001. オオフサモ. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 p.149〜150. pl.67. 平凡社
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. オオフサモ. 『日本帰化植物写真図鑑』 215. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. オオフサモ. 『六甲山地の植物誌』 164. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. オオフサモ. 『近畿地方植物誌』 63. 大阪自然史センター
布施静香・角野康郎・黒崎史平 2003. オオフサモ. 兵庫県産維管束植物5 アリノトウグサ科. 人と自然14:149. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:2nd.Aug.2014



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