フサモ | Myriophyllum verticillatum L. | アリノトウグサ科 フサモ属 |
水生植物 > 沈水植物 兵庫県RDB Bランク種 |
Fig.1 (兵庫県三田市・溜池 2007.8/23) |
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Fig.2 (兵庫県三田市・溜池 2011.10/13) 貧栄養な溜池、水路などで沈水状態で生育する多年草。干上がった溜池などでは陸生形もつくる。 葉は4〜5輪生し羽状に細裂し、全長2〜6cm。各裂片の長さ5〜25mm。気中葉では長さ5〜15mmで、裂片の幅はやや広くなる。 ホザキノフサモよりも葉は大きく、開出してつく。 花序は長さ4〜17cmで水面上に出て、上部に雄花が、下部には雌花がつく。 花序には各節に気中葉がつき、その葉腋に花を単生する。 雄花は花茎上部の4〜9節につき、花弁4個、膜質、長楕円形で、鈍頭、長さ約3mm。雄蕊8個、葯は黄色線形。 雌花は花茎下部2〜9節につき、径約2mm、筒状の萼頭に羽状白色の4個の柱頭をやや外向きにつける。 果実は4分果。種子は長さ1.5〜2mm。 秋になると茎の頂部や、側枝の先に越冬用の殖芽をつくる。 殖芽は葉が多数集合して茎に接着して根棒状、長さ1.5〜3cm。殖芽葉は通常の沈水葉と同形。 酷似するものにホザキノフサモ(M. spicatum)とオグラノフサモ(M. oguraense)がある。 ホザキノフサモの葉は茎側に湾曲する傾向が強く、花茎には気中葉をつけない。また、種子と根茎、またはそのまま越冬し殖芽はつくらない。 オグラノフサモは花序の気中葉が粉白色を帯び、雄花の花弁と雌花の萼筒部の表面には小突起がある。 殖芽は6〜8cmの長い根棒状で、殖芽葉は板状で、裂片の幅は広く、裂片間はV字状となる。中〜やや富栄養で、アルカリ寄りの水質を好むという。 ハリマノフサモ(M. harimaense)はフサモとオグラノフサモの推定種間雑種で、両種の中間的な形質をもつ。 殖芽は様々な長さを持ち、殖芽葉は羽毛状で、裂片よりも裂片間の隙間が広い。 タチモ(M. ussuriense)は貧栄養〜中栄養な溜池の浅水域や水辺に見られ、沈水葉は羽状に細裂してきわめて繊細で、羽片は10個以下。 花は抽水〜陸生形の水上茎の葉腋につき、雌雄異株。 オオフサモ(M. aquaticum)は南米原産の帰化植物で、主に抽水状態で生育し、葉は5〜6輪生することで他種と見分けられる。 各地で大繁殖して猛威を振るい駆除も難しいため、現在では特定外来種に指定され栽培・移動などが禁じられている。 近似種 : ホザキノフサモ、 ハリマノフサモ、 オグラノフサモ、 タチモ、 オオフサモ ■分布:北海道、本州、四国、九州(稀) ・ 北半球の温帯 ■生育環境:湖沼や溜池、水路など。 ■花期:6〜9月 ■西宮市内での分布:分布しない。兵庫県RDB B種。 |
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↑Fig.3 フサモの雌花。(兵庫県三田市・溜池 2007.8/16) 花期になると、それまで水面下で横に伸びていた茎が直立して、気中葉の葉腋に小さな花をつける。 下から順に開花し、雌性先熟で最初は雌花が開く。2〜9節、雌花をつけた後、次に上部では雄花をつけるようになる。 花序につく気中葉の裂片は短い。 |
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↑Fig.4 殖芽を形成したフサモ。(兵庫県三田市・溜池 2007.2/4) 水中に見えている、茎の先端の色が濃い短い根棒状のものが殖芽。茎を引き上げると簡単にちぎれてしまい、殖芽は離れて水面に浮く。 岸辺にも多数の殖芽が風に吹き寄せられ、打ち上げられていた。 |
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↑Fig.5 フサモの殖芽。(兵庫県三田市・溜池 2008.3/13) 画像の殖芽が3月ということもあって、少しほどけかけている。 殖芽は多数の葉が茎に接着して、短い根棒状に集まっている。殖芽葉は沈水葉を小さく縮めたかんじで、中央脈に向かって裂片が湾曲する。 葉身を拡大すると斜上する短毛が散生していた。 |
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↑Fig.6 殖芽からの伸張。(自宅育成 2007.2/16) Fig.3 のものを数個持ち帰り、伸張する様子を観察した。 水温20℃前後の水槽で、3cmの殖芽が12日間で10cm前後に伸張し、発根した根もほぼ同じ長さに伸びた。 殖芽は水面に浮かせたままだったので、根は少し緑化している。 |
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↑Fig.7 溜池畔の湧水湿地で伸張しはじめたフサモ。(兵庫県三田市・溜池畔 2007.6/23) 打ち上げられた殖芽のうち、水分の供給の絶えない湿地や湧水地に残ったものは枯れずに陸生形となる。 |
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↑Fig.8 陸生形のフサモ。(兵庫県三田市・溜池畔 2007.8/23) 溜池畔の水際で抽水状態で生育していた。気中葉では葉身は短くなり、裂片は短く、幅広くなる。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 溜池で生育するフサモ。(兵庫県三田市・溜池 2007.8/16) フサモは貧栄養または腐植栄養な水質を好むため、棚田の奥にある溜池や山間の溜池で見られることが多い。 ここでは、ヒツジグサ、フトヒルムシロ、イトモとの混生が見られた。 |
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Fig.10 溜池でオグラコウホネと混生するフサモ。(兵庫県三田市・溜池 2011.10/13) 山間の管理放棄された溜池に生育しているもので、水は降雨の直後で濁っている。 ここでは、イトモ、イヌタヌキモ、ミズニラ、ミズユキノシタ、ムツオレグサ、イヌノヒゲ、ニッポンイヌノヒゲなどが生育するが、 最近の度重なる豪雨のため、土砂の流入が激しく、しだいに埋もれつつある。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大滝末男, 1980 フサモ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 46,47. 北隆館 角野康郎, 1994 アリノトウグサ科フサモ属. 『日本水草図鑑』 133〜138. 文一統合出版 北川政夫, 1982. アリノトウグサ科フサモ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.270〜271. pls.246〜247. 平凡社 村田源, 2004 アリノトウグサ科フサモ属. 北村四郎・村田源 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.35〜36. pl.10. 保育社 内山寛. 2001. フサモ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 178〜183. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. フサモ. 『六甲山地の植物誌』 164. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. フサモ. 『近畿地方植物誌』 63. 大阪自然史センター 大滝末男, 1984. 日本産アリノトウグサ科の水草について. 水草研究会会報 17:6〜7. 角野康郎, 1985. 兵庫県東播磨地方の水生植物追記(1). 水草研究会会報 18:9〜10. 青木雅夫, 1985. 水生植物フサモ属の異形葉の発現機構とその生態的意義(要旨). 水草研究会会報 21:4〜6. 布施静香・角野康郎・黒崎史平 2003. フサモ. 兵庫県産維管束植物5 アリノトウグサ科. 人と自然14:149. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:21st.May.2014 |