オグラノフサモ | Myriophyllum oguraense Miki | アリノトウグサ科 フサモ属 |
水生植物 > 沈水植物 環境省絶滅危惧U類(VU)・兵庫県RDB Bランク種 |
Fig.1 (兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/16) 中栄養〜やや富栄養な溜池、水路などで沈水状態で生育する多年草。干上がった溜池などでは陸生形もつくる。 葉は4〜5輪生し羽状に細裂し、全長2〜4cm。各裂片の長さ5〜20mm。気中葉では裂片の幅はやや広くなり、粉白を帯びる。 花序は水面上に出て、上部に雄花が、下部には雌花がつく。花序には各節に気中葉がつき、その葉腋に花を単生する。 雄花は花弁4個、膜質、長楕円形で、表面には小突起がある。雄蕊8個。果実は4分果。種子は長さ約2mm。 秋になると茎の頂部や、側枝の先に越冬用の殖芽をつくる。 殖芽は葉が多数集合して茎に接着して細い棒状、長さ2.5〜8cm。殖芽葉は板状の長い菱形で、羽状の切れ込みは浅い。 酷似するものにホザキノフサモ(M. spicatum)とフサモ(M. verticillatum)、ハリマノノフサモ(M. × harimense)がある。 ホザキノフサモ(M. spicatum)の葉は茎側に湾曲する傾向が強く、花茎には気中葉をつけない。また、種子と根茎、またはそのまま越冬し殖芽はつくらない。 フサモ(M. verticillatum)は花序の気中葉が粉白色を帯びず鮮緑色、雄花の花弁と雌花の萼筒部の表面には小突起がない。 殖芽は1.5〜3cmの太い根棒状で、殖芽葉は通常の沈水葉が短縮した形状となり、腐植栄養〜貧栄養な水域に生育する。 ハリマノノフサモ(M. × harimense)はフサモとオグラノフサモの種間雑種で、両種の中間的な形質をもつ。 殖芽は様々な長さを持ち、殖芽葉は羽状で、裂片よりも裂片間の隙間が広い。 タチモ(M. ussuriense)は貧栄養〜中栄養な溜池の浅水域や水辺に見られ、沈水葉は羽状に細裂してきわめて繊細で、羽片は10個以下。 花は抽水〜陸生形の水上茎の葉腋につき、雌雄異株。 オオフサモ(M. aquaticum)は南米原産の帰化植物で、主に抽水状態で生育し、葉は5〜6輪生することで他種と見分けられる。 各地で大繁殖して猛威を振るい駆除も難しいため、現在では特定外来種に指定され栽培・移動などが禁じられている。 近似種 : ホザキノフサモ、 フサモ、 ハリマノフサモ、 タチモ、 オオフサモ ■分布:本州、四国、九州(稀) ■生育環境:湖沼や溜池、水路など。 ■花期:6〜9月 ■西宮市内での分布:分布しない。兵庫県RDB Bランク種。 |
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↑Fig.2 全草標本。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/16) 水上から出た部分は陸生形となっている。沈水形はフサモよりも軟らかい。沈水形の茎には殖芽が形成されている。 |
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↑Fig.3 気中葉(左)と沈水葉(右)。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/16) 気中葉は小さく、裂片の幅が広い。沈水葉はフサモのものよりも小さい。 |
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↑Fig.4 気中形。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/16) 気中葉は粉白色を帯びる。 |
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↑Fig.5 気中葉の拡大。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/16) 葉身には乳頭状突起が密に並ぶ。そのため肉眼では粉白色を帯びたように見える。 |
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↑Fig.6 気中葉裂片の先端。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/16) 裂片の先端は鈍頭で、赤味を帯びている。 |
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↑Fig.7 殖芽を形成した沈水形。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/16) 殖芽は沈水形の茎の途中に腋生する。茎頂に形成しているものは見られなかった。 |
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↑Fig.8 殖芽。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/16) 殖芽は葉が多数集合して茎に接着して細い棒状、長さ2.5〜8cm。 |
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↑Fig.8 殖芽の拡大。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/16) 殖芽葉は板状の長い菱形で、羽状の切れ込みは浅い。 |
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↑Fig.9 殖芽葉。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/16) 殖芽葉は小さく、長さ約5.5mm、肉質で、裂片の間は隙間が空かない。 |
生育環境と生態 |
Fig.10 やや富栄養な溜池で生育するオグラノフサモ。(兵庫県播磨地方・溜池 2014.10/16) 放置されたハス池に少数の個体がまばらに生育している。 溜池にはサイコクヒメコウホネやカサスゲが抽水生し、ヤナギスブタが繁茂し、オオトリゲモが混生していた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 大滝末男, 1980. フサモ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 47. 北隆館 角野康郎, 1994. アリノトウグサ科フサモ属. 『日本水草図鑑』 133〜138. 文一統合出版 角野康郎, 2014. アリノトウグサ科フサモ属. 『日本の水草』 232〜237. 文一統合出版 北川政夫, 1982. アリノトウグサ科フサモ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.270〜271. pls.246〜247. 平凡社 村田源, 2004 アリノトウグサ科フサモ属. 北村四郎・村田源 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.35〜36. pl.10. 保育社 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. オグラノフサモ. 『六甲山地の植物誌』 164. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. オグラノフサモ. 『近畿地方植物誌』 63. 大阪自然史センター 大滝末男, 1984. 日本産アリノトウグサ科の水草について. 水草研究会会報 17:6〜7. 角野康郎, 1985. 兵庫県東播磨地方の水生植物追記(1). 水草研究会会報 18:9〜10. 青木雅夫, 1985. 水生植物フサモ属の異形葉の発現機構とその生態的意義(要旨). 水草研究会会報 21:4〜6. 布施静香・角野康郎・黒崎史平 2003. オグラノフサモ. 兵庫県産維管束植物5 アリノトウグサ科. 人と自然14:149. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:16th.Nov.2014 |