オオミクリ | Sparganium eurycarpum Engelm. subsp. coreanum (Leveille) Cook et Nicholls |
ミクリ科 ミクリ属 |
抽水植物 環境省絶滅危惧U類(VU)・兵庫県RDB Aランク種 |
Fig.1 (兵庫県播磨地方・溜池 2015.10/11) |
||
Fig.2 (兵庫県播磨地方・溜池 2015.10/11) 湖沼、溜池、水路などに生育する多年生の抽水植物。 形態的にはミクリとよく似ており、果実か地下の塊茎を確認しなければ区別できない。 地下部には木質の塊茎をつくる。果実は幅広く長さ5〜9mm、幅5〜8mm、紡錘形にならず上部は低いドーム状になる。 【メモ】 本ページのものはかつての自生地から移植され、維持管理されているもので、兵庫県では野生絶滅したと考えられる。 ミクリ属のものはいずれの種もよく似ており、詳しくはナガエミクリの項を参照されたい。 近似種 : ミクリ、 ナガエミクリ、 ヤマトミクリ、 ヒメミクリ ■分布:本州、四国 ・ 朝鮮半島、中国 ■生育環境:湖沼、溜池、水路など。 ■花期:6〜9月 ■西宮市内での分布:市内では見られない。 |
||
↑Fig.3 地上部標本。(兵庫県播磨地方・溜池 2015.10/11) 植物体基部から袴状に互生葉を出す。 花序は3本以上の枝を出し、各枝の下方に1〜4個の雌性頭花、上側に7〜15個の雄性頭花をつける。 |
||
↑Fig.4 葉幅と横断面。(兵庫県播磨地方・溜池 2015.10/11) 葉は線形、幅20mm以下で、質はやわらかく、背稜が発達して横断面は3角形。 |
||
↑Fig.5 花茎上部。(兵庫県播磨地方・溜池 2015.10/11) 花茎の分枝は3本以上で、枝の上部には雄性頭花がつくが、かなり以前に開花を終えて、雄性頭花も枝も枯れ落ちている。 |
||
↑Fig.6 結実途上の雌性頭花。(兵庫県播磨地方・溜池 2015.10/11) 果実が大きいため、ミクリの雌性頭花よりも全体の果実数が少なく見え、より厳つく見える。2岐した柱頭が残存している。 |
||
↑Fig.7 結実した雌性頭花。(兵庫県播磨地方・溜池 2015.10/11) |
||
↑Fig.8 果実。(兵庫県播磨地方・溜池 2015.10/11) 果実は幅広く長さ5〜9mm、幅5〜8mm、紡錘形にならず上部は低いドーム状になる。 右端は果皮を取り除いたもの。果実は泥中に埋まった後、2年後に発芽するが、果皮を取り除くと発芽率が上がる。 オオミクリの種子は一斉発芽せず、発芽しない種子の生存率は高く、最低でも4年は発芽能力を持つという。 |
||
↑Fig.9 花披片。(兵庫県播磨地方・溜池 2015.10/11) 果実の脇に残存していたもので、先が丸く広がったへら形で、長さ約6mm。 |
||
↑Fig.10 群落中に見られたカヤネズミの巣。(兵庫県播磨地方・溜池 2015.10/11) |
生育環境と生態 |
Fig.11 保護地の溜池で群生するヒメミクリ。(兵庫県播磨地方・溜池 2015.10/11) かつての自生地から、分水界湿地起源の溜池に移植保護された集団で、池の大部分を覆うほどよく生育している。 何ヵ所かに分散移植されたが、この場所に移植されたものが最も旺盛に繁殖しているようだ。 兵庫県でのオオミクリの記録地を随分探したが、該当地域はシカの食害が激しく、溜池畔にはマツカゼソウやダンドボロギクが生育しているのみだった。 現在の様子では元あった自生地に移植しても定着は難しいだろう。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 山下貴司, 1982 ミクリ科. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)『日本の野生植物 草本T 単子葉類』 p.142〜143. pl.123〜124. 平凡社 北村四郎, 2004 ミクリ科. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.418〜421. pl.108. 保育社 角野康郎, 1994. ミクリ科ミクリ属. 『日本水草図鑑』 p.77〜84. 文一統合出版 大滝末男, 1980. ミクリ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 252〜253. 北隆館 角野康郎, 2014. ガマ科ミクリ属. 『日本の水草』 p.149〜158. 文一統合出版 角野康郎. 2008. オオミクリ. 兵庫県産維管束植物10 ミクリ科. 人と自然19:221. 兵庫県立・人と自然の博物館 石居天平, 2006. ミクリ(広義)の分類と生態. 水草研究会会報 85:1〜11. 石居天平・中山祐一郎・山口裕文, 2005. 準絶滅危惧種ミクリとオオミクリの自生集団におけるフェノロジーと種子発芽特性の調査. 雑草研究 50(2):82〜90. 松岡成久, 2015. 系統保存されていたオオミクリ. 兵庫県植物誌研究会会報 105:2〜3. 最終更新日:20th.Aug.2016 |