ミクリ Sparganium electum  L. ミクリ科 ミクリ属
抽水植物  環境省準絶滅危惧(NT)・兵庫県RDB Cランク種
Fig.1 (滋賀県・池畔 2008.9/8)

Fig.2 (兵庫県播磨地方・溜池畔 2015.8/6)

湖沼、河川、水路などに生育する多年生の抽水植物。西日本ではやや稀。
茎は直立し、葉は基部から袴状に立ち、高さ0.6〜2m、この仲間では大型となる。
泥中に走出枝をのばして先端に新芽をつくり、栄養繁殖する。
葉は線形でやわらかく、背稜が発達して断面は三角形、長さ50〜150cm、幅7〜20mm。
花期には茎の上部が花序となる。花序は分枝し、それぞれの枝の下方に1〜4個の雌性頭花を、上方には3〜20個の雄性頭花がつく。
花茎上部から分枝した枝は、ふつう雄性頭花のみとなる。
雌花の柱頭は3〜6mmと他種に較べて長く、頭花から突き出る。果実時には頭花は直径2〜3cmとなる。
果実のサイズや形は変異に富むが、ふつう紡錘形で、嘴部分をのぞいた長さが6〜8mm、幅3〜6mmで断面は3〜6角形、上部がドーム状に円く盛り上がる。

ミクリ科ミクリ属のものは同定の難しいものが多いが、詳しくはナガエミクリの項をご覧下さい。
近似種 : ナガエミクリヤマトミクリヒメミクリオオミクリ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ 北半球、オーストラリア
■生育環境:湖沼、河川、水路。
■花期:6〜9月
■西宮市内での分布:市内では見られない。

Fig.3 開花中の花序。(滋賀県・河畔 2011.8/18)
  花序は分枝する。分枝した枝の下方には雌性頭花を、上方には雄性頭花をつける。


Fig.4 結実期の花序。(滋賀県・池畔 2008.9/8)
  雄性頭花は脱落し、雌性頭花は果実がふくらむ。

Fig.5 開花中の雄性頭花。(滋賀県・河畔 2011.8/18)
  分枝した花序の上部には3〜20個の雄性頭花がつく。

Fig.6 開花中の雌性頭花。(滋賀県・河畔 2011.8/18)
  分枝した花序の下部には1〜4個の雌性頭花がつく。雌花の柱頭は3〜6mmと他種に較べて長く、頭花から突き出る。

Fig.7 果実形成期の雌性頭花。(滋賀県・池畔 2008.9/8)
  頭花の直径は2〜3cmと大きい。

生育環境と生態
Fig.8 小河川に群生するミクリ。(滋賀県・小河川 2008.9/8)
小河川の浅瀬に群生が見られたが、流水中であるためか花序をあげているものは少数だった。
コウホネ、ナガエミクリ、オオマルバノホロシ、ヨシとともに河川内にパッチ状の群落をつくる。

Fig.9 小河川の氾濫原に生育するミクリ。(滋賀県・河畔 2011.8/18)
砂質の土壌が堆積する河畔の氾濫原に、ゴキヅル、オオマルバノホロシ、ドジョウツナギ、クサヨシ、イノコヅチ、ミゾソバ、
ヨシなどとともに生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
山下貴司, 1982 ミクリ科. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)『日本の野生植物 草本T 単子葉類』
       p.142〜143. pls.123〜124. 平凡社
北村四郎, 2004 ミクリ科. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.418〜421. pls.108. 保育社
角野康郎, 1994. ミクリ科ミクリ属. 『日本水草図鑑』 p.77〜84. 文一統合出版
大滝末男, 1980. ヒメミクリ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 254〜255. 北隆館
内山寛. 2001. ミクリ科. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 389〜391. 神奈川県立生命の星・地球博物館
角野康郎. 1998. ミクリ. 矢原徹一(監修)『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ』 470. 山と渓谷社
村田源. 2004. ミクリ. 『近畿地方植物誌』 153. 大阪自然史センター
石居天平, 2006. ミクリ(広義)の分類と生態 -環境修復・保全生態の基礎情報として-. 水草研究会会報 85:1〜11.
角野康郎 2008. ミクリ. 兵庫県産維管束植物10 ミクリ科. 人と自然19:221. 兵庫県立・人と自然の博物館
久米修, 2008. 香川県のミクリ属. 水草研究会会報 90:20〜23.
井上尚子. 2009. 日本の野生植物栽培記録1 -ミクリ属の生態的特徴について-. 広島市植物公園栽培記録 30:14-17. 広島市植物公園

最終更新日:26th.Feb.2017

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