アゼナ Lindernia procumbens  (Krock.) Philcox ゴマノハグサ科 アゼトウガラシ属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県明石市・休耕田 2007.7/12)

水田や畦、農耕地周辺の湿地に生える1年草。水田雑草として著名。ときに湿った庭先にも生育する。
稲作伝播とともに定着した史前帰化植物との説が有力。
茎は下部で分枝し、普通直立する。葉は卵型で葉柄がなく、3〜5本の平行脈が目立ち、全縁で鋸歯はなく、表面に光沢がある。
花は葉腋につき、長い柄があり、萼は5深裂し、花冠は唇形で長さ約6mm。雄蕊4個。刮ハは球状楕円形で長さ3.5mm。
1年草のゴマノハグサ科の水田雑草にはよく見られるが、開放花の開花に先立って、閉鎖花を付けることが多い。

水田で最も普通に見られる種のひとつだが、近年外来種のアメリカアゼナL. dubia var. major)やタケトアゼナL. dubia var. dubia
の方が多い水田も見られる。とくに平野部や市街地の水田ではその傾向が強い。
また、さらに小型のヒメアメリカアゼナL. anagallidea)が帰化しているが、見かけたことはない。
同属のアゼトウガラシ、スズメノトウガラシ類とは、刮ハの形や葉の鋸歯の有無によって容易に区別がつく。
近似種 : アメリカアゼナ、 ヒメアメリカアゼナ、 タケトアゼナアゼトウガラシエダウチスズメノトウガラシ、 ヒロハスズメノトウガラシ

■分布:日本全土 ・ アジア、ヨーロッパ
■生育環境:水田とその周辺の湿地など。
■花期:7〜10月
■西宮市内での分布:低地の水田から山間の棚田まで広く分布し、きわめて普通。

Fig.2 開花したアゼナ。(西宮市上ヶ原・水田 2006.9/12)
  2唇形で上唇は小さく、3裂した下唇が目立つ。

Fig.3 アゼナの未熟な刮ハ。(西宮市塩瀬町名塩・水田 2007.8/2)
  刮ハは球状楕円形。

Fig.4 アゼナの種子。(自宅庭 2007.11/16)
  大きさ0.3mm前後、楕円形で、淡黄色。

Fig.5 アゼナの幼苗。(西宮市山口町・水田 2006.6/19)
  幼苗でも、葉腋から花茎を出す個体も多いが、はじめは閉鎖花であることが多い。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
山崎敬, 1981. ゴマノハグサ科アゼトウガラシ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 pp.104〜105. pls.88〜89. 平凡社
北村四郎・村田源・堀勝, 2004 ゴマノハグサ科アゼナ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 pp.145〜146. pls.45. 保育社
牧野富太郎, 1961 アゼナ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 557. 北隆館
山崎敬. 2001. ゴマノハグサ科アゼトウガラシ属. 清水建美(編)『日本の帰化植物』 pp.187. pls.91. 平凡社
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七. 2001. ヒメアメリカアゼナ,アメリカアゼナ,タケトアゼナ. 『日本帰化植物写真図鑑』 294〜295. 全国農村教育協会
城川四郎. 2001. アゼトウガラシ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1262〜1266. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. アゼナ. 『六甲山地の植物誌』 191. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. アゼナ. 『近畿地方植物誌』 39. 大阪自然史センター

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