キカシグサ Rotala indica  (Willd.) Koehne var. uliginosa  (Miq.) Koehne. ミソハギ科 キカシグサ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・休耕田 2007.9/13)

Fig.2 (西宮市・水田 2012.9/6)

水田や休耕田、農耕地周辺の湿地、稀に平野〜丘陵部の溜池などに生える1年草。
比較的二次的自然度の高い水田や休耕田に多産し、本種が生育するような場所では多くの水田雑草が見られ、
水田雑草の観察に適した水田だといえる。

草丈は10〜20cm程度であるが、茎は伸びると横に這い、節から発根して新たな芽を生じる。茎表面は赤紫色を帯び、無毛。
葉は対生して柄はほとんど無く、やや厚味があり長さ5〜10mmで倒卵形で鈍頭、光沢がある。
沈水状態では葉身は先端部がさらに丸みを帯びて小型化し、葉の付く茎の節間は狭まる。
花期になると葉腋に1個づつ柄の無い花をつける。花弁は倒卵形鋭頭で非常に小さく、鋭尖頭の4つの萼片の間に付き4枚。

ミズキカシグサR. littorea)は多くの枝を分け、葉柄がなく、葉は披針形で鋭頭、葉身の長さ6〜25mm、幅2〜5mm。
枝につく葉は急に小さくなる。萼筒は杯状で長さ約6mm。花弁は倒披針形で萼裂片と同長。稀。
ヒメキカシグサR. elatinomorpha)は本州中南部と四国に分布する稀産種。茎は地表を這い、枝は直立して高さ4〜7cm。
葉は倒卵状楕円形で円頭、葉柄はなく、長さ3〜10mm、幅1.5〜4mm。萼筒は短い円筒形で、4稜がある。花弁は倒卵状長楕円形で、萼裂片より短い。
アメリカキカシグサR. ramosior)は北〜熱帯アメリカ原産の帰化植物。高さ20〜40cm。葉は狭楕円形で長さ1〜5cmで、先は丸みを帯びる。

近似種 : ヒメキカシグサミズキカシグサアメリカキカシグサミズマツバミズスギナ
■分布:日本全土
■生育環境:水田、休耕田、溜池畔など。
■花期:8〜10月
■西宮市内での分布:中・北部の自然度の高い水田や休耕田などに見られる。自生地では多産するが、市内での自生は局所的。

Fig.3 開花中のキカシグサ。(岡山県真庭市・水田 2007.9/23)
  白〜淡紅色の小さな花弁がとがった萼片の間につく。
  雄蕊4本。雌蕊1本で、柱頭は紅色。

Fig.4 淡紅色の花弁を持つもの。(兵庫県篠山市・水田 2009.9/2)

Fig.5 倒伏した茎。(西宮市・水田 2007.9/6)
  茎ははじめ直立するが、伸びると基部から倒れ込んで横に這い、節から発根して分枝する
  画像の中央下部に見られる、小さな楕円形の葉を持った草体はミゾハコベ。

Fig.6 浅い水中で発芽した幼苗。(西宮市・休耕田 2007.6/27)

Fig.7 葉面に夕日を反射する、溜池畔で抽水状態のキカシグサ。(愛知県・溜池畔 2005.10/13)

Fig.8 管理休耕田で大株となったキカシグサ。(岡山県真庭市・休耕田 2005.10/13)

Fig.9 晩秋の草体。(兵庫県加古川市・水田 2011.10/29)
  寒さにさらされて葉は小さく暗色を帯びて、あまり展開せず、茎は赤味を強く帯び、節間は詰まる。
  まだ開花し続けているが、寒さをさけるため、茎は地表に伏したようになる。

Fig.10 水中で育成した個体。(自宅水槽 2007.2/16)
  太陽光に較べて光量が少ない為かもしれないが、茎は赤化せず、葉身は小さい。下部の節や葉腋からは盛んに発根する。
  この後、茎はゆっくりと生長して長さ40cmにも及び、先端は水面に到達し、水面上を斜上した。
  小さな葉を付けて叢生する姿が良いため、アクアリウムの世界ではロターラ・インディカの学名で流通し、水草として栽培されることがある。

Fig.11,12 キカシグサの種子。(西宮市・水田 2006.10/23)
  種子は長卵形〜長楕円形で0.8mm前後。中間部がややくびれ、淡黄色〜肌色で所々で赤く染色する。
  表面には縦に細かな条線があり、光沢を帯びる。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.13 管理休耕田にコナギ、イヌホタルイ、イボクサなどとともに群生するキカシグサ。(西宮市・休耕田 2006.7/31)
このような休耕田では多くの水田雑草と出会える。

Fig.14 無農薬水田に群生するキカシグサ。(西宮市・水田 2012.9/6)
多くの部分はコナギに覆われているが、その間をキカシグサが埋めている。
キカシグサ群落の中にはサワトウガラシ、アゼトウガラシ、ミズマツバ、ミゾカクシ、ホソバヒメミソハギが混生する。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北川政夫, 1982. ミソハギ科キカシグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.260〜261. pls.237〜238. 平凡社
村田源, 2004 ミソハギ科キカシグサ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.47〜48. pl.13. 保育社
牧野富太郎, 1961 キカシグサ,ミズキカシグサ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 418. 北隆館
大滝末男, 1980 キカシグサ. 大滝末男・石戸忠 『日本水生植物図鑑』 64〜65. 北隆館
長田武正・長田喜美子, 1984 キカシグサ. 『野草図鑑 8 はこべの巻』 pl.98. p.100. 保育社
南谷忠志. 1998. ミズキカシグサ. 矢原徹一(監修)『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ』 106. 山と渓谷社
村上司郎. 2001. ミソハギ科キカシグサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1031〜1032. 神奈川県立生命の星・地球博物館
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. キカシグサ. 『六甲山地の植物誌』 162. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. キカシグサ,ミズキカシグサ. 『近畿地方植物誌』 64. 大阪自然史センター
藤井伸二・福岡誠行・布施静香・黒崎史平 2003. キカシグサ. 兵庫県産維管束植物5 ミソハギ科. 人と自然14:144. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:30th.Jul.2016

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