ミズキカシグサ Rotala pentandra  (Roxb.) Blatt. & Hallb. ミソハギ科 キカシグサ属
湿生植物  環境省絶滅危惧U類
Fig.1 (長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/3)

Fig.2 (滋賀県・水田減反部 2011.9/27)

水田や湿地に生育する1年草で、近縁種のキカシグサよりも大型。
茎は直立して高さ10〜30cm、横断面は円形、各葉腋から枝を分ける。
葉は十字対生し、葉柄はなく、光沢があって、披針形でやや鋭頭〜鈍頭、長さ0.6〜2.5cm、幅2〜5mm、枝につく葉は急に小さくなる。
花は葉腋に単生し、無柄。萼筒は杯状、長さ約6mm、4裂片は小さい。
花弁は倒披針形、萼裂片と同長、淡紅色。花弁は果実期にも宿存していることが観察された。
刮ハは球形で、紅紫色を強く帯び、径約2mm。

【メモ】 『日本の野生植物 2』(平凡社 1982)に掲載されている本種の画像は、ミズキカシグサではなくヒメミソハギの誤りである。
     関西では三重、滋賀、京都などから記録があり、隣県の岡山からも記録があるため、今後の調査により兵庫県内でも発見される可能性は高い。
キカシグサR. indica var.uliginosa)は葉が倒卵形〜楕円形であり、分枝も少なく、容易に区別がつく。
ヒメミソハギAmmannia multiflora)は茎が4稜形で、花は葉腋に集散花序となって多数つく。
近似種 : キカシグサヒメキカシグサアメリカキカシグサミズマツバミズスギナヒメミソハギ

■分布:本州、四国、九州、沖縄 ・ 朝鮮半島
■生育環境:水田、休耕田、湿地など。
■花期:8〜11月
■西宮市内での分布:兵庫県下では未記録種。

Fig.3 側枝を出したキカシグサ。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/3)
  主茎のについた葉の各葉腋から規則正しく側枝を出す。
  側枝につく葉は、主茎につく葉の半分以下の長さで、極端に小さい。

Fig.4 刈り取り後の水田に見られる個体。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/3)
  刈り取り後の水田に見られるものは、10〜15cm程度のものが多い。
  側枝が茎の下方から規則正しく伸びるため、全体がスギやヒノキのような三角錐形のツリー状に見える。

Fig.5 草体を俯瞰する。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/3)
  葉は十字対生して、側枝は規則正しく葉腋から斜上して伸びる。そのため草体を上から見ると、端正な十字形に見える。

Fig.6 ミズキカシグサの花。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/3)
  花は葉腋に1個づつ単生し、小さくて目立たない。
  雄蕊4個。雌蕊は1個。花弁は白色〜淡紅色で萼筒口部の内側につき、萼裂片と同長。

Fig.7 刮ハ。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/3)
  刮ハは紅紫色を帯び、径約2mmで球形。

Fig.8 果実期のミズキカシグサ。(滋賀県・水田減反部 2011.9/27)
  秋の果実期には茎や葉は多少黄色や淡紅色を帯びるが、茎はキカシグサのように強く赤色を帯びることはない。

Fig.9 紅葉したミズキカシグサ。(三重県・刈り取り後の水田 2014.10/26)
  ミズキカシグサが紅葉する時は朱色に近い色となるようだ。

Fig.10 熟した刮ハ。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/3)
  熟した刮ハの表皮を剥くと、胎座の上に種子が並んでいた。

Fig.11 種子。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/3)
  種子は半球状の広卵形で淡黄褐色。平らな部分は胎座にはりついていた面。

Fig.12 種子の拡大。(三重県・刈り取り後の水田 2014.10/26)
  種子の表面には縦に長い瘤状の隆起が並んでいる。

Fig.13 成長期の草体。(滋賀県・水田減反部 2011.8/18)
  茎の分枝はまだ少数しか見られない。
  発芽から結実までは早いようで、この約1か月後にはすでに開花は終わり、多くの刮ハが結実していた。

生育環境と生態
Fig.14 自然度の高い水田に生育するミズキカシグサ。(長崎県・刈り取り後の水田 2009.10/3)
早稲収穫後の水田に生育している。 水田内にはキカシグサ、ミズマツバ、ヒメミソハギ、アゼナ、アゼトウガラシ、ヒロハスズメノトウガラシ、
シソクサ、スズメノハコベ、イボクサ、ハリイ、イヌホタルイ、ミズガヤツリ、クログワイ、タイヌビエ、イヌビエ、タウコギ、トキンソウなどが
生育し非常に自然度の高い場所である。
稀少種であるスズメノハコベはカーペット状に密生する場所があるが、ミズキカシグサは広い水田内に10個体弱が生育するのみであった。

Fig.15 水田中の減反調整部に生育する成長途上のミズキカシグサ。(滋賀県・水田減反部 2011.8/18)
山際の湿田状の水田の減反調整でイネの植えられていない場所にサワトウガラシが密生し、その群落中にまばらに生育している(黄色丸内)。
減反部の中心付近はタイヌビエが群生し、その部分では見られず、草丈が低く日当たりよいサワトウガラシ群落内に生育している。

Fig.16 刈り取り後の水田に見られたミズキカシグサ。(三重県・刈り取り後の水田 2014.10/26)
この水田も非常に自然度が高くミズキカシグサの個体数は100個体を越し、ミズネコノオ、スズメハコベ、マルバノサワトウガラシ、サワトウガラシ、
ヒロハスズメノトウガラシ、キカシグサ、ミズマツバ、シソクサ、ヒメミズワラビ、ツルナシコアゼガヤツリなど様々な水田雑草が見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
牧野富太郎, 1961 ミズキカシグサ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 418. 北隆館
北川政夫, 1982. ミソハギ科キカシグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.260〜261. pls.237〜238. 平凡社
北村四郎・村田源, 2004 ミソハギ科キカシグサ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.47〜48. pl.13. 保育社
南谷忠志. 1998. ミズキカシグサ. 矢原徹一(監修)『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ』 226. 山と渓谷社
村上司郎. 2001. ミソハギ科キカシグサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1031〜1032. 神奈川県立生命の星・地球博物館
村田源. 2004. ミズキカシグサ. 『近畿地方植物誌』 64. 大阪自然史センター

最終更新日:3rd.Nov.2014

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