ヒメキカシグサ Rotala elatinomorpha  Makino ミソハギ科 キカシグサ属
湿生植物  環境省絶滅危惧TA類(CR)
Fig.1 (三重県・池沼 2014.10/26)

Fig.2 (三重県・池沼 2014.10/26)

水田や湿地に生育する1年草で、近縁種のキカシグサよりも小型。
茎は地表をはい、枝は直立して高さ2〜7cm、横断面は円形。
葉は対生し、葉柄はなく、倒卵状楕円形で円頭、長さ2〜10mm、幅1.5〜4mm、縁に透明部はない。
花は葉腋に単生し、無柄。萼筒は短い円筒形で4稜があり、長3角形の短い裂片がある。
花弁は倒卵状長楕円形で、萼裂片より短く、淡紅色、果実期に宿存しない。雄蕊2個。花柱は短い。
刮ハは球形〜楕円形で、径約1mm。

【メモ】 『日本の野生植物 2』(平凡社 1982)に掲載されている本種の画像は、ヒメキカシグサではなくヒメミソハギの誤りである。
     関西では三重県のみから知られる。
キカシグサR. indica var.uliginosa)は葉縁に透明部があり、花柱は長さ約0.6mm、雄蕊は4個ある。
ミズキカシグサR. pentandra)は茎が直立し、葉は披針形〜線形。
ヒメミソハギAmmannia multiflora)は茎が4稜形で、花は葉腋に集散花序となって多数つく。
近似種 : キカシグサミズキカシグサアメリカキカシグサミズマツバミズスギナヒメミソハギ

■分布:本州(中南部)、四国
■生育環境:水田、休耕田、池沼など。
■花期:9〜10月
■西宮市内での分布:兵庫県下では未記録種。

Fig.3 全草標本。(三重県・池沼 2014.10/26)
  上は陸生しているもの。下は沈水状態で生育していたもの。陸生していたものはシカの食害により矮小化している。
  沈水状態のものは節間が伸びるほかは、異形性はほとんど見られない。

Fig.4 茎は地表をはい、枝を直立する。葉は対生する。(三重県・池沼 2014.10/26)

Fig.5 葉。(三重県・池沼 2014.10/26)
  左は表面、右は裏面。葉柄はなく、倒卵状楕円形で円頭、長さ2〜10mm、幅1.5〜4mm、縁に透明部はない。

Fig.6 花は葉腋に単生する。(三重県・池沼 2014.10/26)
  降雨のためか、開花は見られなかった。時期的に遅いため、閉鎖花が多い可能性も考えられる。

Fig.7 切り開いた蕾(左側)。(三重県・池沼 2014.10/26)
  左側のものは切り開いて、手前側の葯を取り除いたもの。雄蕊2個。花柱はごく短く、長さ0.2mmだった。

Fig.8 刮ハ。(三重県・池沼 2014.10/26)
  刮ハは熟すと褐色となり、小苞は残るが、萼筒は残らず、楕円形、長さ約1.5mm、径約1mm、花柱は宿存する。

Fig.9 沈水状態で結実したもの。(三重県・池沼 2014.10/26)
  水中では閉鎖花を付けて結実するようだ。

Fig.10 種子。(三重県・池沼 2014.10/26)
  種子は少し曲がった長楕円形で長さ0.6〜0.8mm、黄褐色。

Fig.11 種子の拡大。(三重県・池沼 2014.10/26)
  種子の表面には縦に低いしわがある。

生育環境と生態
Fig.12 池畔に生育するヒメキカシグサ。(三重県・池沼 2014.10/26)
池畔の水際から水中にかけて群生しているが、陸上のものはシカの食害により立ち上がった枝は短い。
同所的にマツバイ、ヒメホタルイ、シカクイ、ヒメクグ、イグサ、イネ科sp.、ヤナギタデ、キクモ、サワトウガラシなどが生育していた。

Fig.13 沈水状態で生育するヒメキカシグサ。(三重県・池沼 2014.10/26)
岸近くの水深40cm程度の場所まで密度の高い群生が見られ、セキショウモ、ヒメホタルイ、ミズユキノシタなどと混生している。
この他、水面にわずかにツツイトモらしき切れ藻が見られ、池畔にはハンゲショウ、チョウジソウ、アケボノソウ、ヒオウギ、ハスノハカズラ、
ナチシダ、ハマゴウなど、シカの忌避・不嗜好植物が残っている。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
北川政夫, 1982. ミソハギ科キカシグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.260〜261. pls.237〜238. 平凡社
北村四郎・村田源, 2004 ミソハギ科キカシグサ属. 『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花類』 p.47〜48. pl.13. 保育社
藤井伸二・山本和彦・狩山俊悟・瀬戸剛・市川正人・海老原淳. 2012. 近畿地方新産のヒメキカシグサとその生育環境. Bunrui 12(1):53〜57. 日本植物分類学会

最終更新日:28th.Oct.2014

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