コハナヤスリ Ophioglossum thermale  Komarov
  var. nipponicum  (Miyabe et Kudo) Nishida
ハナヤスリ科 ハナヤスリ属
湿生植物
Fig.1 (兵庫県姫路市・溜池土堤 2013.10/21)

Fig.2 (兵庫県神戸市・棚田の土手 2014.5/11)

溜池畔、溜池土堤、芝地、墓地などの草地に生える小型のシダ植物。4〜11月に出現する。
根茎は細く、1〜数枚の葉を叢生する。葉は高さ10〜25cm、栄養葉は長さ(1〜)2.5〜5(〜12)cm、幅0.8〜2cm、長楕円形〜卵形、鈍頭または鋭頭。
栄養葉の最も幅広い部分は中央よりも下にあり、基部は鋭形またはくさび形、無柄またはごく短い柄がある。
葉の質はコヒロハハナヤスリよりやや厚く、ハマハナヤスリよりやわらかく薄い。脈は細かい網目状で二次脈はほとんど発達しない。
胞子の外皮には細かい網目模様があるが、一見平滑に見える。

ハマハナヤスリO. thermale)は栄養葉は小さく、ふつう円頭、最も幅広い部分は中央より上にある。
コヒロハハナヤスリO. petiolatum)は栄養葉ふつう大きくて薄く、明瞭な短い柄がある。脈は粗い網目状。
トネハナヤスリO. namegatae)は栄養葉の柄が1〜2.8cmと長く、春に出現して夏には地上部は消滅する。
ヒロハハナヤスリO. vulgatum)は春先に出現し、夏には枯れる春植物。栄養葉の基部は胞子葉の柄を抱く。胞子表面にはこぶ状の突起がある。
近似種 : ハマハナヤスリコヒロハハナヤスリトネハナヤスリヒロハハナヤスリ
関連ブログ・ページ 『Satoyama, Plants & Nature』 春から初夏のハナヤスリ類 -ヒロハハナヤスリと雑種をめぐって- 

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ シベリア、東アジア、ミクロネシア
■生育環境:溜池畔、溜池土堤、芝地、墓地など。
■花期:4〜11月
■西宮市内での分布:市内では過去の記録があるが、現状は不明である。

Fig.3 全草標本。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2013.10/21)
  根茎は細く、1〜数枚の葉を叢生するが、1、2枚であることが多い。
  葉は高さ10〜25cm、栄養葉は長さ(1〜)2.5〜5(〜12)cm、幅0.8〜2cm、長楕円形〜卵形、鈍頭または鋭頭。

Fig.4 胞子葉の先につく胞子嚢穂。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2013.10/21)
  胞子嚢穂は縦に2列に連なった胞子嚢が癒合したもので、熟すとそれぞれ横に裂けて隙間ができ、そこから胞子を飛散させる。

Fig.5 胞子。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2013.10/21)
  胞子の外皮には細かい網目模様があるが、一見平滑に見える。

Fig.6 栄養葉と葉柄。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2013.10/21)
  栄養葉の最も幅広い部分は中央よりも下にあり、基部は鋭形またはくさび形、無柄またはごく短い柄がある。

Fig.7 栄養葉の脈。(兵庫県神戸市・棚田の土手 2014.5/28)
  葉質はコヒロハハナヤスリよりやや厚く、脈は細かい網目状で二次脈はあまり発達しない。

Fig.8 沈水状態で生育するコハナヤスリ。(兵庫県篠山市・山間の溜池 2010.7/18)
  湿地や溜池畔に生育するためか、沈水状態となっても耐性がかなりあるようで、水深60cm程度の深さまで点在していた。

Fig.9 沈水状態で生育生育していた集団の葉(標本)。(兵庫県篠山市・山間の溜池 2010.7/18)
  葉は広卵形でかなり厚味があり非常に柔らかく、基部には葉柄が見られず、胞子葉を抱いていた。

西宮市内での生育環境と生態
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他地域での生育環境と生態
Fig.10 溜池土堤上で生育するコハナヤスリ。(兵庫県姫路市・溜池土堤 2013.10/21)
硬く突き固められた赤土のハイゴケに覆われた溜池土堤上に点在している。
被植は少なく、まばらに草丈の低いススキが生育し、リョウブやヤマツツジの幼木、ヒメミカンソウ、コナスビ、コスミレなどが生育していた。

Fig.11 山間の谷池で沈水状態で生育するコハナヤスリ。(兵庫県篠山市・山間の溜池 2010.7/18)
Fig.7の遠景である。溜池の水深10〜60cmのところに点在している。なかには胞子葉のみを立ち上げているものも見られる。
この場所に生育するものは同じく沈水状態のイヌノヒゲsp.やハリイよりも深い場所にも多数見られる。

Fig.12 墓地の参道で生育するコハナヤスリ。(兵庫県小野市・墓地 2011.11/14)
コハナヤスリは古い墓地のやや湿った参道に現れることが多い。
ここではニガナやヒメヨツバムグラ、ヒメジョオンに混じって、多くの個体が生育していた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
岩槻邦男. 1992. ハナヤスリ科ハナヤスリ属. 『日本の野生植物 シダ』 p.62〜64. pls.17〜18 平凡社
佐々木あや子. 2001. ハナヤスリ科ハナヤスリ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 22〜24. 神奈川県立生命の星・地球博物館
光田重幸. 1986. ハナヤスリ科. 『しだの図鑑』 p.41. pl.39. 保育社
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. コハナヤスリ. 『六甲山地の植物誌』 85. (財)神戸市公園緑化協会
白岩卓巳・鈴木武 1999. コハナヤスリ. 兵庫県産維管束植物1 ハナヤスリ科. 人と自然10:79. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:13th.July.2014

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