トネハナヤスリ | Ophioglossum namegatae Nishida et Kurita. | ハナヤスリ科 ハナヤスリ属 |
湿生植物 環境省絶滅危惧U類(VU) |
Fig.1 (大阪府・河川敷 2013.4/16) |
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Fig.2 (大阪府・河川敷 2013.5/1) 利根川と淀川の氾濫原のアシ原に群生する小型のシダ植物。葉は4〜6月に出す。 根茎は匍匐し、8〜25cmの葉をまばらに出し、担葉体は長さ4〜10cm。 栄養葉は広披針形〜卵状三角形、鋭頭〜円頭、長さ2.5〜11cm、幅1〜4cm、基部はくさび形で長さ1〜2.8cmの葉柄に流れる。 葉脈は細かい網目をつくり、二次脈もはっきりしている。 胞子葉は長さ6〜15cm、胞子嚢穂は長さ1.5〜3.5cm。胞子の径は25〜27μ、胞子外膜の網目模様は細かいが平滑に見える。染色体数n=240で4倍体。 コヒロハハナヤスリ(O. petiolatum)は栄養葉の柄は短く1cm前後、胞子径は30〜33μで、秋まで葉を出す。 ハマハナヤスリ(O. thermale)は栄養葉は小さく、基部はしだいに細くなって柄はなく、そのまま胞子葉の柄と合する。 ヒロハハナヤスリ(O. thermale)は春先に出現し、夏には枯れる。栄養葉の基部は胞子葉の柄を抱く。胞子表面はこぶ状の突起があるように見える。 近似種 : コヒロハハナヤスリ、 コハナヤスリ、 ハマハナヤスリ、 ヒロハハナヤスリ 関連ブログ・ページ 『Satoyama, Plants & Nature』 春から初夏のハナヤスリ類 -ヒロハハナヤスリと雑種をめぐって- ■分布:本州(茨城、栃木、千葉、大阪、京都) ■生育環境:河川敷のアシ原。 ■花期:4〜6月 ■西宮市内での分布:市内には産しない。国内では淀川水系と利根川の河川敷のみで知られる。 |
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↑Fig.3 トネハナヤスリの栄養葉。(大阪府・河川敷 2013.4/16) この仲間の栄養葉の形には変異が多いが、おおむね卵状三角形〜広披針形、基部はくさび形で葉柄に流れる。 この仲間では明瞭で長い葉柄があるのが特徴。葉柄の長さは1〜2.8cm。 画像の個体の胞子葉は伸びつつあるところである。 |
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↑Fig.4 栄養葉の変異。(大阪府・河川敷 2013.4/16) 栄養葉が広披針形で長く、葉柄が短いもの。 |
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↑Fig.5 胞子葉の先につく胞子嚢穂。(大阪府・河川敷 2013.4/16) 胞子葉は長い柄と胞子嚢穂からなる。胞子嚢穂は長さ1.5〜3.5cm。 |
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↑Fig.6 成熟途上の胞子嚢穂。(大阪府・河川敷 2013.5/1) 胞子嚢穂は縦に2列に連なった胞子嚢が癒合したもの。 |
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↑Fig.7 成熟した胞子嚢穂。(大阪府・河川敷 2013.5/15) 熟した胞子嚢穂は、胞子嚢がそれぞれ横に裂けて隙間ができ、そこから胞子を飛散させる。 手を触れると、隙間から胞子が煙のように飛んだ。 |
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↑Fig.8 トネハナヤスリとコヒロハハナヤスリの胞子比較。(大阪府・河川敷 2014.6/19) 胞子の径は25〜27μ、胞子外膜の網目模様は細かいが平滑に見える。 コヒロハハナヤスリの胞子は径30〜33μで大きい。 |
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↑Fig.9 野焼き後のアシ原から出芽したトネハナヤスリ。(大阪府・河川敷 2013.4/16) 野焼きにより遷移が食い止められることによって、トネハナヤスリの生育環境が維持されている。 |
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↑Fig.10 成長するアシに埋もれゆくトネハナヤスリ。(大阪府・河川敷 2013.5/15) アシが成長するにつれ、トネハナヤスリの最盛期は終わりに近づく。胞子を放出した個体は葉の黄化が始まっていた。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 河川敷の野焼きされるアシ原に群生するトネハナヤスリ。(大阪府・河川敷 2013.4/16) 河川敷高水敷の比較的土壌の安定した氾濫原の砂地に成立したアシ原内に群生し、ところによっては足の踏み場もないほど密生している。 トネハナヤスリはアシが生長して茂る前にいち早く繁茂し、夏には枯れて地上部は消滅し、春植物同様の生活史をもつ。 |
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Fig.12 セイタカアワダチソウの群生する場所に生育するトネハナヤスリ。(大阪府・河川敷 2013.4/16) 野焼きが行われるため、セイタカアワダチソウが繁茂する場所でも、その生長前に展葉して繁殖することができる。 同じ河川敷内でも春早くから出芽し、生長の早いハナウドやノウルシが群生する場所ではトネハナヤスリは見られない。 |
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Fig.13 ニョイスミレとともに生育するトネハナヤスリ。(大阪府・河川敷 2013.4/16) 河川敷内にはシダ類ではトネハナヤスリのほか、コヒロハハナヤスリ、コウヤワラビが見られた。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 岩槻邦男. 1992. ハナヤスリ科ハナヤスリ属. 『日本の野生植物 シダ』 p.62〜64. pls.17〜18 平凡社 芹沢俊介. 2003 トネハナヤスリ. 矢原徹一:監修 『レッドデータプランツ』 576. 山と渓谷社 最終更新日:13th.July.2014 |