チドメグサ | Hydrocotyle sibthorpioides Lam. | セリ科 チドメグサ属 |
湿生植物 |
Fig.1 (兵庫県三田市・溜池畔 2007.6/6) 水田の畦や耕作地周辺の湿った場所、休耕田、溜池畔、湿った道端から側溝まで、到るところに普通な多年草。 茎は盛んに分枝して地表を這い、節から発根して定着して広がる。 葉は径1〜1.5cmで浅く切れ込む。枝は斜上せず、花序は葉腋に1個づつ単生してつき、葉柄よりも短い。 果実は扁球形で径約1mm、通常10数個集まってつく。冬期は常緑越冬する。 水田の畦、休耕田などにはよく似たノチドメ(H. maritima)がある。 葉は深く切れ込み、径2〜3cm、両面脈上にまばらに長毛が生える。 オオチドメ(H. ramiflora)は、葉の径1.5〜3cmで切れ込みは浅く、葉の頂にわずかに毛が生え、冬期には地上部が枯れる。 近似種 : ノチドメ、 オオチドメ、 ミヤマチドメ、 オオバチドメ、 ツボクサ ■分布:本州、四国、九州、小笠原 ・ 朝鮮半島、中国 ■生育環境:水田の畦や耕作地周辺の湿った場所、休耕田、溜池畔、湿った道端、側溝など。 ■花期:6〜9月 ■西宮市内での分布:市内全域に普通。 |
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↑Fig.2 開花したチドメグサ。(西宮市・用水路脇 2007.6/3) 花序は10数個の花が集まった散形花序。花弁はふつう5個(まれに6個)、淡黄色ときに淡紅色を帯びる。 雄蕊5個、葯はほぼ球形で黄色。雌蕊は2個。 |
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↑Fig.3 チドメグサの典型的な葉身。(兵庫県三田市・溜池畔 2007.6/6) 葉身はほとんど円形で、切れ込みは浅く、基部の切れ込みは開かずに合わさることが多い。 両面ともに無毛だが、葉裏の脈上に毛がるものもある。鋸歯の先は円い。 |
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↑Fig.4 春先の出芽。(西宮市・水田 2010.4/5) チドメグサは常緑越冬するが、春先にごく小さな円い新芽から出芽する。 |
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↑Fig.5 若い葉。(西宮市・用水路脇 2007.6/3) 茎先端の若い葉は鋸歯の先がややとがる。 |
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↑Fig.6 ノチドメと酷似した葉身を持った個体。(西宮市・用水路脇 2007.6/3) 葉には変異が多く、ノチドメに似た切れ込みの深い葉身を持つものもあり、この個体は裏面の脈上に毛も生えていた。 ノチドメは葉身両面の脈上には毛がまばらに生えるので、ルーペで確認すると区別できる。 |
西宮市内での生育環境と生態 |
Fig.7 畦を覆うチドメグサ。(西宮市・水田 2008.8/2) 水田の畦には必ずといっていいほど見かける。 |
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Fig.8 水田中に生育するチドメグサ。(西宮市・水田 2007.8/2) 水の張られた水田にまるで浮葉にように葉を浮かべていた。 画像には沈水状態で生育するミズオオバコやコナギ、ミゾカクシなどが見える。 |
他地域での生育環境と生態 |
Fig.9 沈水状態で生育するチドメグサ。(兵庫県篠山市・溜池 2015.9/22) 時折、溜池で沈水状態で生育しているチドメグサをみることがある。 恐らく溜池が干上がるか減水し底面が露出した際に定着したものが、増水によって沈水状態となったものだろう。 この溜池では沈水状態で生育するキクモ、サワトウガラシ、ヤナギタデ、ニッポンイヌノヒゲ、ヒメホタルイが見られるほか、ミズニラ、 ホソバミズヒキモ、ハリフラスコモらしき淡水藻類が生育している。 |
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【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 北川政夫, 1982. セリ科チドメグサ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本2 離弁花類』 p.277〜278. pl.250. 平凡社 村田源, 2004 セリ科チドメグサ属. 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 草本編(2) 離弁花編』 p.4〜6. pl.1. 牧野富太郎, 1961 チドメグサ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 433. 北隆館 河済英子. 2001. チドメグサ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1063〜1066. 神奈川県立生命の星・地球博物館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. チドメグサ. 『六甲山地の植物誌』 167. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. チドメグサ. 『近畿地方植物誌』 61. 大阪自然史センター 黒崎史平 2003. チドメグサ. 兵庫県産維管束植物5 セリ科. 人と自然14:158. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:5th.Aug.2016 |