ヤマヌカボ Agrostis clavata  Trin. イネ科 ヌカボ属
湿生植物
Fig.1 (西宮市・農道脇 2007.6/5)

Fig.2 (西宮市・社寺草地 2010.5/9)

棚田の畦や農耕地周辺、林縁などに生育する繊細な多年草。
根茎はほとんど発達せず、茎は平滑で、高さ30〜70cmになり、基部に翌年の新苗をつける。
葉は扁平で柔らかく、長さ10cm、幅2〜5mmで開出する。葉身も葉鞘もともにほぼ平滑。
円錐花序は長さ12〜20cmで、植物体の1/3以下。
花序枝は花時には開出し、花後は直立して、細かくざらつき、基部よりには小穂がつかない。
小穂は長さ約2mm、淡緑色で光沢がある。苞頴2個はほぼ同長、鋭尖頭、長さ1.5〜2mm。護穎は苞穎より少し短く、脈は不明瞭。葯は長さ約0.3mm。

ヌカボ属は外来種も含めて似たものが多い。詳しくはヌカボの項をご覧下さい。
近似種 : ヌカボヒメコヌカグサコヌカグサハイコヌカグサ

■分布:北海道、本州、四国、九州 ・ ヨーロッパ北東部からシベリア、カムチャッカ
■生育環境:棚田の畦や農耕地周辺、林縁など。
■花期:6〜7月
■西宮市内での分布:北部の棚田周辺にヌカボとともに見られる。

Fig.3 全草標本。(西宮市・溜池土堤 2010.6/6)

Fig.4 ヤマヌカボの花序。(西宮市・棚田の畦 2007.6/3)
  ヌカボとの相違点は、花序が開出気味で、花序枝の基部よりに小穂がつかないところだが、中間的な個体も多い。
  また、ヌカボとヤマヌカボは稔性のある種間雑種をつくることもあり、同定には厄介さが付きまとう。

Fig.5 花序枝。(西宮市・棚田の畦 2007.6/3)
  ヌカボよりも花序につく小穂の数はまばらな印象を受ける。

Fig.6 小穂。(西宮市・棚田の畦 2007.6/3)
  第1苞穎は1脈あってとがり、第2苞穎はわずかに短く、やや不明瞭な3脈がある。小花は苞穎よりも短く、画像では見えない。

Fig.7 小花。(西宮市・溜池土堤 2010.6/6)
  護穎は苞穎より少し短く、脈は不明瞭。

西宮市内での生育環境と生態
Fig.8 渓流畔に生育するヤマヌカボ。(西宮市・渓流畔 2008.6/12)
近似種のヌカボに較べて多少山地寄りに生育する傾向がある。
砂防ダム内の湿地に流れ込む渓流畔で、ホッスガヤ、ニコゲヌカキビ、ハイコヌカグサ、アケボノソウ、アオコウガイゼキショウなどとともに見られた。

【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。)
大井次三郎, 1982. イネ科ヌカボ属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編)
       『日本の野生植物 草本1 単子葉類』 p.124〜125. pl.109. 平凡社
小山鐡夫, 2004 イネ科コヌカグサ属. 北村四郎・村田源・小山鐡夫 『原色日本植物図鑑 草本編(3) 単子葉類』 p.350〜353. pls.91〜92. 保育社
牧野富太郎, 1961 ヤマヌカボ. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 730. 北隆館
藤本義昭. 1995. イネ科コヌカグサ属. 『兵庫県イネ科植物誌』 26〜35. 藤本植物研究所
木場英久. 2001. イネ科ヌカボ属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 292〜296. 神奈川県立生命の星・地球博物館
桑原義晴, 2008 コヌカグサ属. 『日本イネ科植物図譜』 p.44〜56. pls.10〜11. 全国農村教育協会
小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ヤマヌカボ. 『六甲山地の植物誌』 224. (財)神戸市公園緑化協会
村田源. 2004. ヤマヌカボ. 『近畿地方植物誌』 168. 大阪自然史センター
藤本義昭・布施静香・黒崎史平・高橋晃・高野温子 2008. ヤマヌカボ. 兵庫県産維管束植物7 イネ科. 人と自然19:161. 兵庫県立・人と自然の博物館

最終更新日:22nd.Sept.2014

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