アケボノスミレ | Viola rossii Hemsl. | ||
山地・林縁・草原の植物 兵庫県RDB Bランク種 | スミレ科 スミレ属 |
Fig.1 (兵庫県但馬地方・ススキ草原 2016.5/12) 山地のやや乾いた落葉樹林の林縁や陽光の当たる草原などに生育する多年草。西日本では高所に比較的稀。 地下茎は太い。葉の両面、特に葉身裏面脈上や葉縁に毛がある。 葉は花に遅れて開き、やや厚く、円心形で、先は急に短くとがり、長さ4〜7cm、基部は深い心形、縁には低い鋸歯がある。 葉柄は長さ7〜10mm。花柄は高さ10〜15cm。花は大きく、淡紅紫色、径2〜2.5cm。 萼片は長楕円状披針形。花弁は長さ1.5〜2cmで円く、側弁は無毛または毛がある。 距は短くて太くぽってりとしており、長さ3〜4mm。刮ハは長さ1〜1.5cmでとがり、紫斑がある。 花が暗紅紫色のものをクロバナアケボノスミレ(f. atropurpurea)という。西日本では稀。 白花品はシロバナアケボノスミレ(f. lactiflora)とされる。 近縁種 : サンインスミレサイシン、 サクラスミレ、 シコクスミレ、 アカネスミレ、 コスミレ ■分布:本州、四国、九州 ・ 中国、朝鮮半島 ■生育環境:山地のやや乾いた落葉樹林の林縁や日当たり良い草原など。 ■花期:3〜5月 |
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↑Fig.2 開花期の葉。(兵庫県但馬地方・ススキ草原 2016.5/12) 葉は花に遅れて開き、やや厚く、葉身裏面脈上や葉縁に毛がある。裏面はうっすらと紫色を帯びている。 |
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↑Fig.3 開花後の展開した葉。(兵庫県但馬地方・ススキ草原 2015.8/2) 展開した葉は円心形で、先は急に短くとがり、長さ4〜7cm、基部は深い心形、縁には低い鋸歯がある。 |
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↑Fig.4 展葉前に開花した個体。(兵庫県但馬地方・ススキ草原 2016.5/12) |
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↑Fig.5 開花とともに葉を上げつつある個体。(兵庫県但馬地方・ススキ草原 2016.5/12) 個体によって展葉のタイミングは様々。 |
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↑Fig.6 花。(兵庫県但馬地方・ススキ草原 2016.5/12) 花は花弁が開出気味に開き、特に上弁は顕著、径2〜2.5cm、側弁基部は無毛または多少毛がある。 花の色はスミレサイシンの仲間のうちでは珍しく紅色が強く、兵庫県に自生するものではサクラスミレに次ぐ美麗種。 花弁は長さ1.5〜2cmで円く、おおむね円頭だが、稀に凹頭のものを見る。花柱は短く詰まったようなカマキリの頭形。 |
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↑Fig.7 花茎、萼片、距。(兵庫県但馬地方・ススキ草原 2016.5/12) 花茎は無毛。萼片は長楕円状披針形。距は短くて太くぽってりとしており、長さ3〜4mm。 |
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↑Fig.8 訪花したクロハナケシキスイ。(兵庫県但馬地方・ススキ草原 2016.5/12) 早朝から昼にかけての観察で群を抜いて花上に見られた昆虫。およそ40%の花に訪花しているのが見られ、花粉にまみれている。 他のスミレ類での訪花頻度は少ないものの、この時期のスミレ類の送粉者として重要な役割を担っていると考えられる。 |
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↑Fig.9 花の色の変異。(兵庫県但馬地方・ススキ草原 2016.5/12) 多くの個体を観察すると、花の色には様々な変異があることが解る。並んで咲いている花は各々別個体から上がっている。 |
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↑Fig.10 花にやや青みを帯びた個体。(兵庫県但馬地方・ススキ草原 2016.5/12) 変異の範疇か、交雑種であるのか、花粉を調べる必要のある個体。今年は時間が無かったので来年の課題。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 低木林の林縁に生育するアケボノスミレ。(兵庫県但馬地方・低木林林縁 2016.5/12) ススキ草原と低木林が隣接する境界付近で多くの個体がまとまって生育していた。 ススキ草原ではサクラスミレが多い傾向があるが、低木の木陰ではアケボノスミレが多い傾向が見られ、微妙に棲み分けているのかもしれない。 アケボノスミレはサクレスミレよりも1週間ほど開花期も早く、開花期による棲み分けも見られる。 同所的にはヤマジノホトトギス、チゴユリといった半日陰を好む草本が見られる。 |
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Fig.12 サクラスミレと混生するアケボノスミレ。(兵庫県但馬地方・ススキ草原 2016.5/12) 左はサクラスミレで、右はアケボノスミレ。両種ともに兵庫県ではRDBのBランクに指定され、自生地は限られる。 開花期はアケボノスミレのほうが早く、アケボノスミレ開花全盛期はサクラスミレはツボミの状態であることが多い。 兵庫県但馬地方の自生地は草刈によってこの2種の生育環境が維持されており、草刈りを必要とする地域経済により残存している。 稀少種の残存要因が経済という人間本位の立場によることに、人類と地球の先行きを危惧せざるおえない。 |