イナカギク Aster semiamplexicaulis
    (Makino) Makino ex Koidz.
  里山・草地・林縁の植物 キク科 シオン属
Fig.1 (西宮市・棚田の土手 2010.11/14)

Fig.2 (兵庫県三木市・農道脇 2013.10/10)

丘陵〜低山の里山の草地や林縁に生育する多年草。
地下茎は長くはい、茎は高さ45〜85cmで白い短毛を密生する。
茎中部〜下部につく葉は長楕円状披針形、長さ6〜12cm、幅1.5〜3cm、鋭尖頭、下から1/3のところで急にくびれ、
以下はしだいに狭くなり基部はなかば茎を抱き、まばらに鋸歯があり、表面に白い短毛を密生し、裏面には長い毛と短い毛が混じって生える。
頭花は白色で径2cm、枝の先に散房状につく。花柄は長さ7〜16mm、短毛を密生する。
総苞は鐘形、長さ5mm、片は3列、緑褐色。痩果は倒卵状長楕円形、扁平で、長さ1.8〜2.5mm、幅1mm、有毛、先は急に少し狭まる。
冠毛は長さ3.5〜4mm、淡褐色、毛は多数。

近縁種 : ケシロヨメナ、 タマバシロヨメナ、 ノコンギクシラヤマギクゴマナ

■分布:本州(東海地方以西)、四国、九州
■生育環境:里山の林縁、草地など。
■花期:9〜11月

Fig.3 倒れこんで開花したイナカギク。(西宮市・棚田の土手 2010.11/14)
  茎は白い短毛が密生するため、白味を帯びて見え、茎上部の葉がつく節の部分は多少とも屈曲している。

Fig.4 茎に生えた毛。(西宮市・溜池土堤 2010.11/14)
  短毛は開出して生え、それよりもさらに短い寝た毛が見られた。

Fig.5 イナカギクの葉。(西宮市・溜池土堤 2010.11/14)
  長楕円状披針形で、鋭頭、最下の鋸歯上方で少しくびれた後に、両縁は平行に近くなり、基部は丸みを帯びて茎を抱く。

Fig.6 葉表の拡大。(西宮市・溜池土堤 2010.11/14)
  短毛が密生する。

Fig.7 葉裏の拡大。(西宮市・溜池土堤 2010.11/14)
  葉裏には長い毛と短い毛が混じって生える。

Fig.8 花序。(西宮市・溜池土堤 2010.11/14)
  花序は散房状で、茎頂につき、花柄は短毛を密生して白味を帯びる。
  画像の花は咲き始めの雄性期で、まだ舌状花の花弁は短く、舌状花の雌蕊の柱頭は開いているが、筒状花のものは開ききっていない。

Fig.9 イナカギクの花。(西宮市・溜池土堤 2010.11/14)
  筒状花の柱頭が開いて雌性期に入っており、この頃のものは花弁が長くなる。花弁は白色で、先は鈍頭か丸みを帯びる。
  花弁の幅はふつう酷似するケシロヨメナよりも広いが、同定の決定打とはならない。

Fig.10 筒状花雌性期の花の核心部。(西宮市・溜池土堤 2010.11/14)
  外縁部は舌状花が並び、全て雌花で結実し、最初に開花する。舌状花の2岐する柱頭は線形(矢印)。
  続いて筒状花が外周部から順次開花し、最初は集葯雄蕊が成熟して花粉を放出し(雄性期)、次に柱頭が開く(雌性期)。
  筒状花の柱頭は舌状花のものよりも幅が広く、先は披針状で鋭頭。

Fig.11 結実した花序。(西宮市・溜池土堤 2010.11/14)
  冠毛は褐色を帯び、晩秋の野原ではあまり目立たない。

Fig.12 冠毛と痩果。(西宮市・溜池土堤 2010.11/14)
  冠毛は羽毛状とならず、痩果の約2倍長で、顕微鏡下では上向きの刺状毛が生えているのが確認できる。

Fig.13 冠毛を取り除いた痩果の拡大。(西宮市・溜池土堤 2010.11/14)
  痩果は倒卵状長楕円形、長さ1.8〜2.5mmで茶褐色、表面には上向きの伏毛が生える。

生育環境と生態
Fig.14 溜池土堤に生育するイナカギク。(西宮市・溜池土堤 2010.11/14)
年1回、初夏〜夏に草刈りされる、放棄溜池の土堤に生育している。溜池にはすでに水が張られておらず、アブラガヤが目立ち、ススキも侵入している。
このような溜池跡ではふつうはセイタカアワダチソウの侵入が目立つが、ここではほとんど見られず、ススキとともにオミナエシ、リンドウの個体数が多い。
イナカギクは土堤上部のススキとワラビの群落中にコナラ幼木、シラヤマギク、キクバヤマボクチ、アキノキリンソウ、リンドウ、カナビキソウなどとともに生育している。


最終更新日:27th.July.2014

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