ノコンギク | Aster ovatus (Franch. et Savat.) Mot. Ito et Soejima | キク科 シオン属 |
湿生植物 |
Fig.1 (西宮市・棚田の畦 2010.11/14) |
||
Fig.2 (兵庫県宝塚市・草地土手 2012.10/8) 水田の畦、用水路脇、湿った草地や道端などに普通に見られる多年草。 根茎を地下に横走し、茎は高さ50〜100cm程度、よく分枝し、密に短毛がある。 根生葉は有柄、卵状長楕円形で、ヨメナの根生葉に似るが、両面に短毛が多い。 花茎の根生葉は花時に枯れる。茎葉は長楕円形〜卵形、長さ6〜12cm、幅3〜5cm、鋭頭または鈍頭、質はやや薄く、両面に短毛があり、 縁はまばらに大きな鋸歯があり、ほとんど無柄。 花は茎の先にゆるい散房状につく。頭花は径2.5cm、淡青紫色。 総苞は半球形で長さ4.5〜5mm、片は3列、覆瓦状で緑色、先は少し広くなって円形、しばしば紫色を帯び、縁と背に短毛がある。 舌状花は1列。痩果は倒卵状長楕円形、扁平で長さ1.5〜3mm、有毛。冠毛は長さ4〜6mm。 コンギク(A. ageratoides subsp. ovatus cv. hortensis)は栽培品種で、茎が丈夫で、舌状花は濃青紫色で、ときに逸出している。 ホソバコンギク(var. angustifolius )は川岸に生え、茎葉は披針形で、長さ8〜10cm、幅1〜1.5cmで、鋭尖頭。 ヨメナなどの近似種はヨメナのページを参照。 近似種 : ヨメナ、 オオユウガギク、 ユウガギク、 ミヤマヨメナ、 ホソバコンギク、 シラヤマギク、 サワシロギク、 ノコンギク、 ケシロヨメナ、 タマバシロヨメナ、 ゴマナ ■分布:本州、四国、九州 ■生育環境:水田の畦、用水路脇、湿った草地や道端など。 ■花期:8〜11月 ■西宮市内での分布:市内全域に広く見られる。 |
||
↑Fig.3 茎。(西宮市・河川の土手 2010.11/14) 茎には密に短毛があり、葉を互生する。 |
||
↑Fig.4 葉。(西宮市・河川の土手 2010.11/14) 茎葉は長楕円形〜卵形、鋭頭または鈍頭、質はやや薄く、縁はまばらに大きな鋸歯があり、ほとんど無柄。 |
||
↑Fig.5 葉表の拡大。(西宮市・河川の土手 2010.11/14) 短毛が多く、特に脈上には密に生える。 |
||
↑Fig.6 葉裏の拡大。(西宮市・河川の土手 2010.11/14) 裏面にも短毛が多い。 |
||
↑Fig.7 開花期。(西宮市・棚田の畦 2010.11/14) 花は茎の先にゆるい散房状につく。頭花は径2.5cm、淡青紫色。 |
||
↑Fig.8 総苞。(西宮市・棚田の畦 2010.11/14) 総苞は半球形、片は3列、覆瓦状で緑色、先は少し広くなって円形、しばしば紫色を帯び、縁と背に短毛がある。 |
||
↑Fig.9 頭花。(西宮市・棚田の畦 2010.11/14) 舌状花は1列、全て雌性花。中には黄色の筒状花が密集し、全て両性花。 |
||
↑Fig.10 筒状花の部分。(西宮市・棚田の畦 2010.11/14) 筒状花は雄性期が終わり、雌蕊が集葯雄蕊の間から現れ、一部では柱頭が開き始めて雌性期を向かえつつある。 アリが蜜や花粉を漁りにきているが、受粉には役立たない。 |
||
↑Fig.11 花後の頭花。(西宮市・棚田の畦 2010.11/14) 花後、比較的早く舌状花や筒状花の花弁は落ちて、冠毛が目立つようになる。 |
||
↑Fig.12 熟した頭花。(西宮市・湿った草地 2011.12/20) 頭花の痩果が熟すと、総苞が開き、冠毛の全開して風を待つ。 |
||
↑Fig.13 冠毛のついた痩果。(西宮市・湿った草地 2011.12/20) 果期が遅いためか、痩せた不稔の痩果も混じっている。 冠毛は長さ4〜6mmで、白色〜汚白色、羽毛状とはならず、顕微鏡的な上向きの小刺がまばらに生える。 |
||
↑Fig.14 冠毛を除いた痩果。(西宮市・湿った草地 2011.12/20) 痩果は倒卵状長楕円形、扁平で長さ1.5〜3mm、上向きの伏毛が生える。 |
||
↑Fig.15 冬期の草体。(西宮市・湿った草地 2011.12/20) 常緑越冬する。冬期の根生葉はやや小さく長卵状楕円形となり、長い柄があり、質はやや厚くなる。 古くは、ヨメナとともに常緑越冬する葉が早春の摘み草としてセリ、スミレ、ハハコグサ、ハコベなどとともに利用された。 |
生育環境と生態 |
Fig.16 棚田の畦に生育するノコンギク。(棚田の畦 2010.11/14) ノコンギクは道端などにも見られるが、とりわけ里山の棚田の土手や畦に多く見られ、常在種のうちの1種となる。 ここでは石垣によって段差をつけられた土手直下の狭い畦に生育し、開花していた。 同所的にヤノネグサ、チョウジタデ、トウバナ、キツネノマゴ、コナスビ、アキメヒシバ、チカラシバなどが生育している。 |
||
Fig.17 刈り取り後に開花したノコンギク。(棚田の畦 2010.11/14) 生育場所は農道状の幅広い畦道で、農作業上よく利用されるような幅広い畦道である。 このような場所に生育するものは稲の刈り取り時に刈り払いされるため、刈り取り後に花茎を上げて開花する。 そのため草丈が低い状態で、葉腋から多数分枝して茎頂に頭花をつけ、水平に群落が広がっているように見える。 |
||
【引用、および参考文献】(『』内の文献は図鑑を表す。『』のないものは会報誌や研究誌。) 山崎敬, 1981. キク科シオン属. 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・旦理俊次・冨成忠夫 (編) 『日本の野生植物 草本3 合弁花類』 p.193〜198. pls.166〜171. 平凡社 北村四郎・村田源, 2004 キク科シオン属. 『原色日本植物図鑑 草本編(1) 合弁花類』 p.79〜83. pls.26〜28. 保育社 田中徳久. 2001. キク科シオン属. 神奈川県植物誌調査会(編)『神奈川県植物誌 2001』 1352〜1365. 神奈川県立生命の星・地球博物館 牧野富太郎, 1961 ノコンギク. 前川文夫・原寛・津山尚(補遺・編) 『牧野 新日本植物図鑑』 624. 北隆館 小林禧樹・黒崎史平・三宅慎也. 1998. ノコンギク. 『六甲山地の植物誌』 201. (財)神戸市公園緑化協会 村田源. 2004. ノコンギク. 『近畿地方植物誌』 18. 大阪自然史センター 小山博滋・黒崎史平・高橋晃 2007. ノコンギク. 兵庫県産維管束植物8 キク科シオン属. 人と自然17:150. 兵庫県立・人と自然の博物館 最終更新日:3rd.Mar.2014 |