イワヘゴ Dryopteris atrata  (Wall. ex Kunze) Ching.
  里山・山地・林床のシダ オシダ科 オシダ属
Fig.1 (兵庫県小野市・池畔の林床 2011.7/31)

Fig.2 (兵庫県篠山市・里山の林縁 2011.3/29)

低山〜山地の林縁や林床に生育する常緑性シダ。
根茎は太く短く、直立して、葉を叢生し、鱗片をつける。
葉柄は長さ25〜40cm、葉身の半分より短く、鱗片を密につける。
鱗片は黒褐色から光沢のある黒色、披針形から狭披針形、先端は糸状に伸び、長さ2cmに達し、やや硬い膜質、
辺縁にまばらに毛状突起があり、葉柄では上部のものほど幅が狭くなる。中軸の鱗片は線形、縁にまばらに毛状突起がある。
葉身は単羽状複生、倒披針形〜長楕円状披針形、鋭尖頭、長さ40〜80cm、幅15〜25cm、最下2〜3対の羽片は下向きとなる。
羽片は20〜30対つき、線形、長さ8〜15cm、幅1〜2cm、基部は切形かやや心形、無柄、先端に向けてしだいに狭くなり、鋭尖頭、
縁は浅裂するか粗い鋸歯縁で、その先端は切形となる。葉質は紙質。小脈は単生する。
胞子嚢群は羽片全面に散在し、苞膜は腎円形、全縁。

イヌイワヘゴD. cycadina)は葉柄基部の鱗片が明るい褐色となり、葉表は平滑で側脈は凹まない。胞子の大きさには大小がある。
オオクジャクシダD. dickinsii)は鱗片が赤褐色〜褐色で、ほぼ全縁。ソーラスは羽片の辺縁寄りに散在する。
ツクシイワヘゴD. commixta)は羽片の数17〜18対、鱗片には光沢なく黒褐色〜淡黒色、苞膜の発達は悪い。本州、四国では稀。
キヨズミオオクジャクD. namegatae)はイワヘゴとオオクジャクシダの中間的な特徴を持つ稀な種で、鱗片はは黒色硬質でほぼ全縁、
ソーラスは辺縁と中間から羽軸よりにつき、葉脈上面が著しくくぼむ。
ツクシオオクジャクD. handeliana)は全体小型で、鱗片は淡い茶色、上部羽片は急に狭くなって頂羽片状の部分をつくる。
ソーラスは小さく、縁に沿って2列に並ぶ。分布は山口県、高知県、九州。

イワヘゴを片親とする推定自然雑種に以下のものがある。
シビイワヘゴD. × shibisanensis)はツクシイワヘゴとの雑種。九州。
ハガネイワヘゴD. × haganecola)はオクマワラビとの雑種。
以上のうちハガネイワヘゴが兵庫県から記録されている。
近縁種 : イヌイワヘゴオオクジャクシダツクシイワヘゴ、 ワカナシダ、 キヨズミオオクジャク、 タニヘゴ

■分布:本州(山形県、新潟県、関東地方以西)、四国、九州 ・ 済州島、インド、スリランカ、ヒマラヤ、中国、台湾
■生育環境:低山〜山地の林縁や林床など。

Fig.3 地上部標本。(兵庫県小野市・池畔の林床 2011.7/31)
  葉身は単羽状複生、倒披針形〜長楕円状披針形、鋭尖頭、最下2〜3対の羽片は下向きとなる。
  葉柄には黒褐色〜黒色の鱗片がつく。

Fig.4 葉柄の鱗片。(兵庫県小野市・池畔の林床 2011.7/31)
  鱗片は黒褐色から光沢のある黒色、披針形から狭披針形。

Fig.5 中軸の鱗片。(兵庫県篠山市・里山の林縁 2011.3/29)
  中軸の鱗片は線形、縁に突起がある。

Fig.6 羽片。(兵庫県篠山市・里山の林縁 2011.3/29)
  羽片は線形、基部は切形かやや心形、無柄、先端に向けてしだいに狭くなり、鋭尖頭。

Fig.7 羽片の縁と基部。(兵庫県篠山市・里山の林縁 2011.3/29)
  縁は浅裂するか粗い鋸歯縁で、その先端は切形となる。

Fig.8 羽片裏面のソーラス。(兵庫県小野市・池畔の林床 2011.7/31)
  胞子嚢群は羽片全面に散在する。

Fig.9 苞膜は腎円形、全縁。(兵庫県小野市・池畔の林床 2011.7/31)

Fig.10 新葉を展開したイワヘゴ。(兵庫県丹波市・植林地の林床 2013.5/31)
  伸びたばかりの葉先は、まだ色が薄かった。

生育環境と生態
Fig.11 林縁の湿った石積みの間に生育するイワヘゴ。(兵庫県篠山市・里山の林縁 2011.3/29)
里山の水田奥の社寺の湿った石積みの間にイノデ、ヤブソテツ、オオバノイノモトソウなどとともに生育している。

Fig.12 溜池畔の雑木林の細流の周辺に生育するイワヘゴ。(兵庫県小野市・池畔の林床 2011.7/31)
腐植土の多い溜池畔の林床に細流が流れ、その周辺にイノデ、ヤブソテツ、ベニシダ、クマワラビなどとともに生育していた。


最終更新日:4th.July.2013

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