ツクシイワヘゴ Dryopteris commixta  commixta
  里山・山地・林床のシダ

  兵庫県RDB 要調査種
オシダ科 オシダ属
Fig.1 (兵庫県阪神地方・植林地の林床 2015.10/18)

低山〜山地のやや湿った林床に生育する常緑性シダ。
イワヘゴに似るが、羽片の数は17〜18対、多くとも20対、葉質は草質、生時はやや厚ぼったい。
葉柄の鱗片には光沢がなく、黒褐色〜淡黒色。羽片は幅1〜2.5cm、短柄があり、幅の広いものは羽状に浅裂〜中裂する。
苞膜の大きさは変異し、発達が悪く、胞子嚢群の中に埋もれるものが混じる。

イワヘゴD. cycadina)は羽片の数20〜30対あり無柄。紙質。苞膜の径1mm以上で胞子嚢群を覆う。
イヌイワヘゴD. cycadina)は葉柄基部の鱗片が明るい褐色。ソーラスは羽片全面に散布する。
オオクジャクシダD. dickinsii)は鱗片が赤褐色〜褐色で、ほぼ全縁。ソーラスは羽片の辺縁寄りに散在する。
キヨズミオオクジャクD. namegatae)はイワヘゴとオオクジャクシダの中間的な特徴を持つ稀な種で、鱗片は黒色硬質でほぼ全縁、
ソーラスは辺縁と中間から羽軸よりにつき、葉脈上面が著しくくぼむ。
ツクシオオクジャクD. handeliana)は全体小型で、鱗片は淡い茶色、上部羽片は急に狭くなって頂羽片状の部分をつくる。
ソーラスは小さく、縁に沿って2列に並ぶ。分布は山口県、高知県、九州。

ツクシイワヘゴを片親とする推定自然雑種に以下のものがある。
ヤマナカシダD. × tetsu-yamanakae)はナガサキシダとの雑種。鹿児島県。
シビイワヘゴD. × shibisanensis)はイワヘゴとの雑種。九州。
ナンゴクオオクジャクD. × satsumana)はオオクジャクシダとの雑種。九州。
オオスミイワヘゴD. × pseudo-commixta)はワカナシダとの雑種。九州。
ヤタケイワヘゴD. × otomasui)はミヤマクマワラビ(?)との雑種。九州。
イワヘゴモドキD. × mayebarae)はオクマワラビとの雑種。本州、四国、九州。
メズラシクマワラビD. × rarissim)はナガバノイタチシダとの雑種。鹿児島県。
近縁種 : イワヘゴイヌイワヘゴオオクジャクシダ、 ワカナシダ、 キヨズミオオクジャク、 タニヘゴ

■分布:本州(北陸・房総半島以西)、四国、九州
■生育環境:低山〜山地のやや湿った林床など。

Fig.2 地上部標本。(兵庫県阪神地方・植林地の林床 2015.10/18)
  葉身は単羽状複生、倒披針形〜長楕円状披針形、鋭尖頭、羽片の数は17〜18対、多くとも20対、葉質は草質。

Fig.3 葉柄の鱗片。(兵庫県阪神地方・植林地の林床 2015.10/18)
  鱗片は光沢がなく、黒褐色〜淡黒色、披針形から狭披針形。この場所のものは全縁だった。

Fig.4 中軸の鱗片。(兵庫県阪神地方・植林地の林床 2015.10/18)
  中軸の鱗片は線状披針形〜線形。辺縁に糸状突起は見られなかった。

Fig.5 羽片基部。(兵庫県阪神地方・植林地の林床 2015.10/18)
  羽片の基部は浅い心形で、ごく短い柄がある。

Fig.6 羽片。(兵庫県阪神地方・植林地の林床 2015.10/18)
  羽片は幅1〜2.5cm、幅の広いものは羽状に浅裂〜中裂する。

Fig.7 羽片の脈。(兵庫県阪神地方・植林地の林床 2015.10/18)
  羽軸と裂片中肋は凹むが、小脈はあまり凹まない。

Fig.8 羽片裏面。(兵庫県阪神地方・植林地の林床 2015.10/18)
  ソーラスは羽片全面に散布する。

Fig.9 ソーラス。(兵庫県阪神地方・植林地の林床 2015.10/18)
  苞膜の大きさは変異し、発達が悪く、胞子嚢群の中に埋もれるものが混じる。

生育環境と生態
Fig.10 植林地の沢沿いに生育するツクシイワヘゴ。(兵庫県阪神地方・植林地の林床 2015.10/18)
植林地の沢沿いの湿った林床にツクシイワヘゴが点在していた。
周辺にはリョウメンシダ、ジュウモンジシダ、ベニシダ、トウゴクシダ、ヤマヤブソテツ類、アイノコクマワラビ、イノデ、アイアスカイノデ、
ハカタシダ、オオバノイノモトソウ、キジノオシダ、イワガネゼンマイ、フモトシダ、ミゾシダ、ミヤマカンスゲ、コカンスゲ、ナガバジャノヒゲ、
フユイチゴ、アマチャヅルなどが生育していた。


最終更新日:16th.Mar.2017

<<<戻る TOPページ