オオナキリスゲ | Carex autumnalis Ohwi | ||
山地・岩場の植物 兵庫県RDB Cランク種 |
カヤツリグサ科 スゲ属 ナキリスゲ節 |
Fig.1 (西宮市・崩壊地の崖 2010.11/15) 低山〜山地の日当たり良い岩場や崖地、急斜面の林縁に生育する多年草。 根茎は短く横走し、ゆるく叢生する。基部の鞘は長く伸び、下部の鞘には葉身がなく、濃褐色、糸網を生じる。 葉は硬く濃緑色、幅2〜4mm。有花茎は高さ40〜100cm。 頂小穂は雄性、長さ1〜2cm、幅1mm弱。側小穂は1節に1〜3個つき、長さ1〜3cm、幅約2mm、雌性または先端に短く雄花部がある。 雌鱗片は果胞の1/2長。果胞は長さ2.5〜3mm、先は細く短い嘴となり、口部は凹形、細脈があり、縁がざらつくほか無毛。柱頭は2岐。 【メモ】 本種はスゲ属の中でも特徴的な秋遅くに果期となるナキリスゲ属の仲間である。 ナキリスゲ属はどれもよく似たものが多く、慣れるまで見分けが難しい。 本種の特徴は頂小穂が雄花のみからなることと、基部に長い無葉身の鞘があって、糸網を生じる点だが、ナキリスゲでもときに頂小穂が 雄花のみのものが見られるので、注意が必要である。 兵庫県下には以下に記した近縁種を加えてナキリスゲ属6種が分布するが、そのうちナキリスゲ、コゴメスゲ、オオナキリスゲ、 フサナキリスゲは西宮市内でも見られるが、ナキリスゲ以外は全て稀である。 近縁種 : ナキリスゲ、 コゴメスゲ、 フサナキリスゲ、 センダイスゲ、 キシュウナキリスゲ ■分布:本州(近畿以西)、四国 ・ 中国(?) ■生育環境:低山〜山地の日当たり良い岩場、崖地、急斜面の林縁など。 ■果実期:9〜11月 |
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↑Fig.2 全草標本。(西宮市・崩壊地の崖 2010.11/15) 根茎は短く横走し、ゆるく叢生する。葉は硬く、濃緑色。 全体の印象はナキリスゲよりもスマートに感じる。 |
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↑Fig.3 基部。(西宮市・崩壊地の崖 2010.11/15) 基部の鞘は長く、濃褐色、下方の鞘は葉身がなく、上部の鞘は葉身があり、やや光沢がある。 古い鞘はほとんど繊維状に分解しない。 |
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↑Fig.4 基部に生じた糸網。(西宮市・崩壊地の崖 2009.11/24) 他のナキリスゲ属には明瞭な糸網を生じるものはなく、多くは古い鞘は繊維状に分解するので、よい区別点となる。 |
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↑Fig.5 花序の上部。(西宮市・崩壊地の崖 2010.11/15) 頂小穂は常に雄性。側小穂は雌性または上部は短い雄花部となる。 |
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↑Fig.6 雄小穂。(西宮市・崩壊地の崖 2010.11/15) 雄性の頂小穂(雄小穂)は細く、幅1mm弱。雄鱗片は濃褐色。 近縁のナキリスゲもときに頂小穂が雄花のみとなることがあるが、多くは頂小穂の下半部の鱗片が緑色となり、幅1mmを超える。 ナキリスゲの頂小穂のこの緑色鱗片部分は真の雄花ではなく、雌花が退化したものと思われる。 |
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↑Fig.7 花序の下方についた側小穂。(西宮市・崩壊地の崖 2010.11/15) 側小穂は雌性か、上部に短い雄花部を持つが、花序下方につく小穂では雄花部がかなり長いものがある。 側小穂は1節に1〜3個つく。画像のものは2個の小穂が見られる。 |
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↑Fig.8 雌鱗片(左)と果胞。(西宮市・崩壊地の崖 2010.11/15) 雌鱗片は卵形で、先は次第に狭くなり、鈍頭。 果胞には数脈があり、縁がざらつくほか、ほとんど無毛、長さ2.5〜3mm、先は細く短い嘴となり凹頭。 |
生育環境と生態 |
Fig.9 崩壊地の脆い岩壁に生育するオオナキリスゲ。(西宮市・崩壊地の崖 2010.11/15) 活断層によって破砕帯となった花崗岩が、侵食と風化によって崩壊地となった谷間の上部にある崩壊崖地に点在している。 日当たりの良い崖地の、やや基岩のしっかりした場所で、水が少ししみ出す付近に見られた。 同所的にはトダシバ、ヒカゲスゲ、アキノキリンソウ、センボンヤリなどが見られた。 |
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Fig.10 オオナキリスゲの生育環境。(西宮市・崩壊地の崖 2010.11/15) オオナキリスゲは崩壊地のガレた急な谷間の最奥部にある崩壊しつつある崖地に生育している。 画像の低木が見られる下部周辺におよそ20株程度が点在していた。近づくのは容易ではなく、自生箇所は足場が悪く、撮影にはかなり苦労した。 |