オオタマツリスゲ | Carex arakiana (Ohwi) Ohwi | ||
低山・林縁・林床の植物 兵庫県RDB Cランク種 |
カヤツリグサ科 スゲ属 タマツリスゲ節 |
Fig.1 (神戸市・低山の林床 2017.5/31) 丘陵〜山地の暖温帯林の林床に生育する多年草。 根茎は短く、やや叢生する。基部の鞘は淡褐色、後に繊維状になる。葉は粉緑色で幅3〜8mm、平滑。 有花茎は高さ30〜70cm、平滑、やわらかく、果胞が熟す頃には下垂、あるいは倒伏する。 雄小穂は頂生し、柄が長く抽出し、線状披針形〜線形、長さ1.5〜3cm、赤褐色〜赤紫色を帯びる。雄鱗片は鈍頭〜鋭頭。 側小穂は2〜3個、雌性で短柱形、長さ1〜3cm、下方のものは細くて長い柄があり、花はまばらに3〜5個つく。雌鱗片は緑白色で、時に一部が淡赤褐色、鋭頭。 果胞は雌鱗片よりも長く、卵形、長さ6〜7mm、有脈で無毛、嘴は長く、口部は斜め切形。 痩果は密に果胞に包まれ、楕円形、長さ2〜2.7mm。柱頭は3岐する。染色体数2n=38。 タマツリスゲ(C. filipes)は葉幅2〜5mmで鮮緑色。基部の鞘は赤紫色。有花茎は硬く、果胞が熟しても下垂、倒伏しない。 ヒロハノオオタマツリスゲ(C. arakiana)は葉幅6〜12mmで深緑色。基部の鞘は赤紫色。温帯林下に多い。 近縁種 : タマツリスゲ、 ヒロハノオオタマツリスゲ、 グレーンスゲ、 コジュズスゲ ■分布:本州(東北南部〜近畿地方) ■生育環境:丘陵〜山地の林縁や林床など。 ■果実期:5〜6月 |
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↑Fig.2 全草標本。(神戸市・低山の林床 2017.5/31) 根茎は短く、やや叢生する。有花茎は高さ30〜70cm。草体はやわらかく、前年葉が残る。 有花茎は大変やわらかいため、採集時と持ち帰る際に、花茎が折れ曲がってしまう。 |
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↑Fig.3 基部。(神戸市・低山の林床 2017.5/31) 根茎は短く、やや叢生する。基部の鞘は淡褐色、稀に一部が赤紫色を帯びることがあり、後に繊維状になる。 |
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↑Fig.4 葉。1目盛=1mm。(神戸市・低山の林床 2017.5/31) 葉は粉緑色で幅3〜8mm、ほとんど平滑、3脈があり、横断面はM字形。 |
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↑Fig.5 結実期に倒伏した有花茎。(神戸市・低山の林床 2017.5/31) 有花茎は3稜が明瞭があるが、やわらかく、花茎が伸張して果胞が熟す頃には、下垂または倒伏する。 画像は適湿な林道脇の法面に生育しているもので、多くの有花茎が倒伏し、林道脇の溝に垂れ下がっていた。 |
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↑Fig.6 有花茎。(神戸市・低山の林床 2017.5/31) 有有花茎は高さ30〜70cm、平滑、やわらかく、果胞が熟す頃には下垂、あるいは倒伏する。 |
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↑Fig.7 雄小穂。(神戸市・低山の林床 2017.5/31) 雄小穂は頂生し、柄が長く抽出し、線状披針形〜線形、長さ1.5〜3cm、赤褐色〜赤紫色を帯びる。雄鱗片は鈍頭〜鋭頭。 |
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↑Fig.8 苞。(神戸市・低山の林床 2017.5/31) 側小穂の基部の苞は葉状で、鞘は長く、花茎をゆるく包む。 |
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↑Fig.9 雌鱗片と果胞。(神戸市・低山の林床 2017.5/31) 雌鱗片は緑白色で、時に一部が淡赤褐色、鋭頭。果胞は雌鱗片よりも長く、卵形、長さ6〜7mm、有脈で無毛、嘴は長く、口部は斜め切形。 |
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↑Fig.10 痩果。(神戸市・低山の林床 2017.5/31) 痩果は密に果胞に包まれ、楕円形、長さ2〜2.7mm。 |
生育環境と生態 |
Fig.11 低山地の植林地の林床で群生するオオタマツリスゲ。(神戸市・低山の林床 2017.5/31) 兵庫県南部では自生地が極限され、石灰性に傾斜した堆積岩地や流紋岩質の土壌に稀に見られ、ここもそのような場所である。 ここではまばらな植林地の林床から、林道脇の適湿な場所にかけて所によっては群生が見られ、社寺領であるため生育状態は比較的安定している。 同所的にはサイゴクイノデ、ジュウモンジシダ、ミゾシダ、ゲジゲジシダ、フモトシダ、コハシゴシダ、ミヤマイタチシダ、ジュズスゲ、ヒゴクサ、カワラスゲ、 ヒメシラスゲ、ウラシマソウ、チゴユリ、ホウチャクソウ、ヤマジノホトトギス、ナガバジャノヒゲ、ヤブラン、ツユクサ、ミツバ、カノツメソウ、オヤブジラミ、 ドクダミ、キツネノボタン、イチリンソウ、ダイコンソウ、ナガバノタチツボスミレ、シハイスミレ、フタリシズカ、オニタビラコ、ムラサキニガナなどが見られる。 |