タマツリスゲ Carex filipes  Franch. et Savat.
  里山・林縁・草地の植物 カヤツリグサ科 スゲ属 タマツリスゲ属
Fig.1 (兵庫県南あわじ市・雑木林の林縁草地 2010.4/29)

Fig.2 (兵庫県篠山市・植林地林床 2013.5/13)

丘陵〜低山の里山の林縁や湿った草地、疎林の林床などに生育する多年草。
根茎は短く、叢生する。植物体は軟弱で、やや粉白色を帯びる。
基部の鞘に葉身はなく、赤紫色を帯びる。葉は幅2〜6mm。有花茎は高さ30〜50cm。
小穂はたがいに離れてつき、苞は葉身があり、有鞘。頂小穂は雄性、長さ0.5〜1.8cm、ふつう柄は短いが長いものもある。
側小穂は1〜3個、雌性で、長さ1〜2.5cm、きわめてまばらに数個の果胞をつけ、下方のものは長い柄があって下垂する。
果胞は鱗片の約2倍長で、長さ5〜7mm、有脈で無毛、嘴は長く、口部は斜めに切れる。柱頭は3岐する。
近縁種 : オオタマツリスゲヒロハノオオタマツリスゲコジュズスゲグレーンスゲ

■分布:本州、四国、九州、対馬
■生育環境:丘陵〜山地、里山の林縁、落葉広葉樹の疎林内、湿った草地など。
■花期:5〜6月

Fig.3 全草標本。(兵庫県南あわじ市・雑木林の林縁草地 2010.4/29)
  根茎は短く叢生する。植物体は柔らかい。この産地のものは長小穂(雄小穂)に長い柄を持つ花茎が混じる。

Fig.4 基部。(兵庫県南あわじ市・雑木林の林縁草地 2010.4/29)
  基部の鞘に葉身はなく、赤紫色を帯びる。
  画像のものは宿存した古い根茎によって、3個の分けつした株が繋がっている。
  また、一見すると匐枝に見えるシュートがあるが、軟弱で有花茎が土中で抽出したものであろう。

Fig.5 有花茎。(兵庫県南あわじ市・雑木林の林縁草地 2010.4/29)
  有花茎は高さ30〜50cm。頂小穂は雄性、ふつう柄は短いが長いものもある。側小穂は1〜3個、雌性。

Fig.6 頂小穂。(兵庫県南あわじ市・雑木林の林縁草地 2010.4/29)
  頂小穂は雄性、長さ0.5〜1.8cm、雄鱗片は赤紫色。

Fig.7 側小穂。(兵庫県南あわじ市・雑木林の林縁草地 2010.4/29)
  側小穂は雌性。画像は上方にある雌小穂で柄はごく短い。

Fig.8 下方の雌小穂。(兵庫県南あわじ市・雑木林の林縁草地 2010.4/29)
  下方のものは柄が長く、自生環境下では下垂する。雌小穂基部の苞は葉身があり、有鞘。

Fig.9 下方の雌小穂の拡大。(兵庫県南あわじ市・雑木林の林縁草地 2010.4/29)
  きわめてまばらに数個の果胞をつける。果胞の口部からは3岐する柱頭が出ている。

Fig.10 果胞と鱗片。(兵庫県南あわじ市・雑木林の林縁草地 2010.4/29)
  果胞は鱗片の約2倍長で、長さ5〜7mm、有脈で無毛、嘴は長く、口部は斜めに切れる。
  さらに拡大すると、果胞の脈間には腺点らしきものが散在していた。

Fig.11 痩果。(兵庫県南あわじ市・雑木林の林縁草地 2010.4/29)
  痩果は倒卵形、長さ2.6〜3mm、横断面は3稜形。

生育環境と生態
Fig.12 植林地の林床に生育するタマツリスゲ。(兵庫県篠山市・植林地林床 2013.5/13)
植林されたスギの大木が散在する比較的明るい林床の一画に点在していた。
タマツリスゲが生育する周辺ではミヤマフユイチゴ、ツルアリドオシ、テイカカズラ、スイカズラ、ジャノヒゲ、ヤブラン、シャガ、ミヤマカタバミ、
オオマムシグサ、ベニシダ、シケシダ、ホソバイヌワラビ、ホソバナライシダなどが生育していた。


最終更新日:26th.Apr.2011

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