ベニイトスゲ | Carex alterniflora Ohwi var. rubrovaginata J.Oda et Nagam. |
||
林縁・林床の植物 | カヤツリグサ科 スゲ属 ヌカスゲ節 |
Fig.1 (兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) 低地〜低山地の林床や林縁、路傍などに生育する多年草。 まばらに叢生し、短い匐枝を持つ。基部の鞘は赤紫色〜紫色。 葉は有花茎と同長か長く、幅1.5〜2.5(〜3.5)mm。有花茎は高さ20〜50cm、上部はざらつき、下部は平滑。 頂小穂は雄性、線形で長さ1.5〜2.5cm、幅1〜2mm、柄は長さ1〜2cm、赤紫色。 側小穂は雌性で線柱形、長さ1〜3.5cm、幅2〜3mm、下のものは離れてつくことが多く、柄は5mmに満たず短い。 苞には1〜2cmの短鞘があり、葉身は葉状で長さ1〜5cm。 雌鱗片は赤紫色〜紫色、鋭頭または短芒。雌鱗片は鋭頭または短芒。 果胞は雌鱗片よりも長く、倒卵形、長さ2.8〜3mm、幅1〜1.1mm、稜間に5〜6脈あり、平滑、口部は2小歯、嘴の縁には細鋸歯がある。 痩果は密に果胞に包まれ、倒卵形、長さ1.9〜2.1mm、幅0.8〜1mm、頂部には盤状付属体がある。柱頭は3岐。染色体数2n=68-71。 【メモ】 カンサイオオイトスゲという別称があり、関西圏で見られる匐枝を持つイトスゲの仲間では草体は大柄で、しっかりしている。 兵庫県内では播磨地方や淡路島など、県南部に自生地が偏在している。 近縁種 : アリマイトスゲ、 チャイトスゲ、 キイトスゲ、 クジュウスゲ、 イトスゲ ■分布:本州(近畿地方以西)、四国、九州 ■生育環境:低地〜低山地の林床や林縁、路傍など。 ■果実期:5月 |
||
↑Fig.2 全草標本。(兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) まばらに叢生し、短い匐枝を持つ。有花茎は高さ20〜50cmで、この仲間ではやや大型。 |
||
↑Fig.3 基部。(兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) 基部の鞘は赤紫色〜紫色。基部から短い匐枝がでる。 |
||
↑Fig.4 葉。(兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) 葉は幅1.5〜2.5(〜3.5)mm、上向きにざらつく。画像は左が上、右が下方向。1目盛=0.1mm。 |
||
↑Fig.5 有花茎。(兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) 有花茎は高さ20〜50cm、頂小穂は雄性、側小穂は雌性で(1〜)2〜3個つき、下のものは離れてつくことが多い。 |
||
↑Fig.6 花茎上部。(兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) 有花茎の上部は上向きの小刺が並び、上向きにざらつく。 |
||
↑Fig.7 頂小穂は雄性。(兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) 頂小穂は雄性、線形で長さ1.5〜2.5cm、幅1〜2mm、柄は長さ1〜2cm、赤紫色。 |
||
↑Fig.8 側小穂と苞。(兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) 側小穂は雌性で線柱形、長さ1〜3.5cm、幅2〜3mm、柄は5mmに満たず短い。 苞には1〜2cmの短鞘があり、葉身は葉状で長さ1〜5cm。 |
||
↑Fig.9 果胞と雌鱗片。(兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) 雌鱗片は鋭頭または短芒で、果胞よりも短い。果胞は嘴が少し外曲する。 |
||
↑Fig.10 果胞。(兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) 果胞は倒卵形、長さ2.8〜3mm、幅1〜1.1mm、稜間に5〜6脈あり、平滑、口部は2小歯、嘴の縁には細鋸歯がある。 |
||
↑Fig.11 痩果。(兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) 痩果は密に果胞に包まれ、倒卵形、長さ1.9〜2.1mm、幅0.8〜1mm、頂部には盤状付属体がある。下部の面は少しくぼむ。 |
生育環境と生態 |
Fig.12 社寺林の林床に群生するベニイトスゲ。(兵庫県宍粟市・社寺林 2017.5/6) 規模の大きな古い社寺林の林床に規模の大きなベニイトスゲの群落が見られた。 社寺林はシラカシ、アラカシ、イチイガシ、モミ、ムクノキなどの大木からなり、林床には古い土壌が残されており、シカの食害の激しいこの地域の 本来的な植生を残していると考えられ、スゲ類では他に社寺林に多く見られるタマツリスゲが生育していた。 同所的にはホウチャクソウ、チゴユリ、ウバユリ、ササユリ、コウライテンナンショウ、トボシガラ、アズマガヤ、ナキリスゲ、サイハイラン、 コモチイラクサ、セリバオウレン、ウマノアシガタ、ボタンヅル、ウマノミツバ、ヤブジラミ、ヤブニンジン、セントウソウ、ミヤマカタバミ、 ウド、キヅタ、テイカカズラ、ベニシダ、シケシダ、ゲジゲジシダ、ミゾシダなどが生育していた。 |